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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カチカチ山(現代なろう版)

 むかしむかし、ある所におじいさんとおばあさん、ウサギさんとタヌキさんのギルドがありました。

ある日のこと、おじいさんたちの家で緊急ギルド会議が開かれました。


「タヌキさんや、あなたをこのギルドから追放することに決めましたのじゃ」


 とおじいさん。


「なんでだよ!?」


「だって、君、成果を上げるために他人の畑を荒らしたり、不作の歌声を使って、うちのギルドの作物の価値を上げたり、当たり前のように変化の術を使って金をだまし取っているじゃないか」


 とウサギさん。


「そうかいそうかい。俺のおかげでこのギルドは豊かな生活ができてたのにな。今に後悔するだろうに。あばよ」


 そう言い捨ててタヌキさんは出て行ってしまいました。


「やれやれ。困ったものだねぇ」


「ばあさんや。これで正しかったのですじゃ」


「そうだねぇ。周りの人たちに迷惑はかけてしまってはギルドとしての格が劣ってしまうよ」


「そうじゃ。わしらの作物を配ろうかの」


「それが良いと思います。じいさま」


「ウサギさんや。倉庫にある作物をこの村の人たちに配ってきてくれんか? わしらは重いものは持てんからすまんな」


「おじいさん、おばあさん。了解しました」


 そう言って、ウサギさんは背中に作物を背負って出ていきました。




「はい、どうぞ」


 ウサギさんはお米と大根をセットにして渡して回っていました。




 その頃、おじいさんたちの家では、タヌキさんが帰ってきていました。


「おや、タヌキさんや。もうここはあなたのギルドではありませんぞ」


「ああ、そうだな。俺はもうここのギルドじゃない。ということは迷惑をかけてもいいってことだろう?」


 タヌキさんは不敵な笑みをこぼし、左手に刀を持っていました。


「煌めきながら目下の敵を薙ぎ払え! サンドリアフバースト!」


 タヌキさんの刀が七色に光り、その軌跡が残るようにしながらおじいさんを切り裂きました。


「タヌキさんや。今なにをされましたかな?」


 おばあさんが怒りを抑えるようにしながら言いました。


「へっ。作物を独占している人たちを斬って俺が英雄になるのさ」


「精霊様や、わしの身にあふれんばかりの力を。コズマチックフローリア!」


 おばあさんの身体が一回り大きくなり、強いオーラを放っていました。


「無駄だね。光よ。我を透過せよ! トランスカラーリング!」


 タヌキさんの姿が見えなくなってしまいました。


 そして、突然、おばあさんの身体を刀が貫きました。


「ちょうどウサギがどっか行ってくれてて助かったぜ。ざまあみろだ」


 タヌキさんはおじいさんたちの家に、死体を残して出ていきました。




 ウサギさんが家に帰ってきました。


「おじいさん......! おばあさん.......!?」


 ウサギさんはその光景を見て、考えました。


「これはタヌキがやったんだな? そうに違いない」


 ウサギさんはタヌキさんを懲らしめることに決めました。




 ウサギさんは山の方に歩いていきながら、


「タヌキさーん。どこだーい? 君の仲間に入れてほしい」


 と言いました。


 すると、タヌキさんが出てきました。


「俺の仲間になりたい、か。お前も賢い選択をしたな」


「お願いだよ。やっぱり、すごいのはタヌキさんだって気づいたんだ」


「よろしい。仲間に認めてやろう」


 タヌキさんはウサギさんを仲間に入れました。


「タヌキさん、今から山で狩りをしようと思っているんだけど、ちょっと荷物が重いからこれを持ってくれないかな?」


 そう言って、ウサギさんはタヌキさんにワラの束を渡しました。


「仕方ないな。タヌキさんは最強だと言ってくれたらもってやろう」


「タヌキさんは至高の存在です」


「いいだろう」


 タヌキさんはワラの束を背負いました。


「ありがとう」


「お魚を捕りに行くから、この山の奥の池に行かない?」


 タヌキさんと一緒にウサギさんは歩き始めました。


 ウサギさんはタヌキさんの後ろを歩きながら、魔法の杖を取り出しました。


「災いの炎よ。今ここに来りて消しつくさん! クルリアルフレイム!」


 ウサギさんは小さく詠唱しました。


「ウサギよ。何かパチパチっと聞こえてくるんだが」


「ここはカチカチ山なんですよ。カチカチって音がよく聞こえてくるからそうやって付いたらしいです」


「でも、俺のはパチパチだぞ?」


「音の聞こえ方は人それぞれなのでしょう」


「それもそうだな」


 タヌキさんの背中では火がごうごうと燃えていました。


「なんか暑くないか?」


「タヌキさんは毛皮が分厚いからだと思いますよ。もうすぐ池なのでそれまでの辛抱です」


 池が見えてきました。


 タヌキさんの背中に火が燃え移りました。


「熱い。熱い熱い熱い!!」


「もうすぐですよ」


「火がついてるじゃないか!! ウサギ、お前はめただろ!? ぶっ殺してやる!!」


「タヌキさん、池はすぐそこですよ。一度火を消してきた方がよく存じ上げます」


 ウサギさんは少しバカにするように言いました。


 タヌキさんは池まで走っていき、池に飛び込みました。


 火が消えると、タヌキさんは怒鳴りました。


「毛がなくなって背中がつるつるになったじゃないか!!」


 一方、ウサギさんは魔法の杖を池に向けて詠唱を始めました。


「大地よ、時を戻し再び氷河を現しめよ! アイスクロックエイジング!」


 池が凍り、タヌキさんはカチカチに氷に閉じ込められてしまいました。


「来世では更生することを願っているよ。タヌキさん」


 ウサギさんは最後にそうつぶやきました。




 ウサギさんがタヌキさんを懲らしめてからしばらくして、村はすごい豊作になりました。


「みんなに幸せがあらんことを」


 ウサギさんにはそんなタヌキさんの声が聞こえた気がしました。




 めでたしめでたし

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