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万華郷  作者: 面映唯
第二章
6/42

 数分走ると、右側に業務スーパーが見えてきた。方向指示器を出し、車は右折した。


 駐車場に車を止めて、降りた。数年前に地元のワークマンで買った着古しの防寒ブルゾンの性能は、まだ劣っていないようだった。外気に(さら)された顔面は寒気を感じたが、変わって上半身はすこぶる温かい。


 一度、身震いをした。


 木田は、スーパー内のキャッシュコーナーへと向かった。




 一か月前に木田は仕事を辞めていた。理由はなんてことはない。本当に些細なことだ。長年勤続している人たちから見れば、「これだからゆとりは」と思われても仕方がないのかもしれない。確かにそれは重々承知だったが、ちょうど仕事を辞めた日の帰り、満員電車の中で見た広告は、どれも転職会社や求人のものばかりだった。同僚にも、去り際、「今は転職の時代だからね。お先真っ暗ってこともないと思うから頑張って」と励ましをかけられた。


 転職の時代……。


 仕事を辞めた人間を食い物にする時代――なんてひねくれた木田の頭では還元された。だってそうだろう。仕事を辞めれば「中途半端」「初志貫徹できない」「生半可」なんて罵倒されるのに、一方では快く転職を受け入れてくれるサービスが充実している。これは飴と鞭と言っていいのだろうか。時代の流れを感じ取ったどこかの頭がいいビジネスマンがきっと考えたのだろう。ブラック企業という言葉も生まれた。働き方改革、サービス残業。離職率の高い時代に需要があると思ったのだろう。


 なんだか癪に障ったのだ。たったそれだけ。きっと良かれと思ってできた転職サービスだろう。実際にいい職に就けた人も多いだろうし、讃えられるサービスだと心から思う。


 でも――。


 でも、が消えなかった。


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