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気づけばハンドルを握って三十分を過ぎようとしていた。車内では学生時代によく聴いていたSUPER BEABERの『27』のアルバムが流れていて、この曲がかかると大体三十分だというのが自然とわかるようになっていた。
三十分経っても鍋島は口を開かなかった。
右折左折でハンドルを切ることが多くなり、次第に駅の駐車場に近づいていった。窓を開けて、駐車券を取って、遮断機が上がる。比較的広い駐車場の一番奥に車を停めた。エンジンを切ると同時に、流れていた音楽と暖房が消失する。しん、とした車内は数秒続いた。無音のはずなのに、ヴーっというノイズのような耳鳴りが数秒続いた。
「じゃあ行くか」
「あ、うん」
木田と鍋島は車を降りた。
駅の階段を上り、自販機で東京までの切符を買っている途中、鍋島が「車はどうするの」と口を開いた。
「ず、三日間置きっぱなしかな」
「そう」
二人は切符を買って改札を抜けた。
木田は余裕をもって実家を出たつもりだったが、駅のホームに降りるとすぐに新幹線がホームに到着した。スーパーの駐車場で鍋島と話しているうちに、いい時間になってしまったのだろう。
そのまま新幹線に乗り込んだ。
車内はまばらに空いていた。入ってすぐの一番後ろ、二人座席が空いていたのでそこに二人で座る。
窓際に座った鍋島が、小さなリュックを膝の上に置いたのが見えた。
「荷物そんだけ?」
鍋島が振り向く。
「あ、うん。ちょっと実家に帰っただけだったから」
彼女は俯き、一人の世界に入った。
話す気はないのか……そう思った木田は、姿勢を直し、通路側の肘置きに肘を立てて、掌に自分の頬を当てた。




