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死神少女は生きています  作者: 気晴
第四章 動き出す者達
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96 黒幕の目的

 その一件以降、大きな問題は起きずに炊き出しは終わった。


「ありがとうございました。事件を早急に解決してくださったとお聞きしました。彼には治療を施しましたので心配ありません。噛み跡はしばらく残りますが、日々の活動に支障はありません」

「そうでしたか。良かったです」


 怪我をした男性は治療を受けたようだ。そして、機動隊に関して良い方の噂が広がっているともタルディ神官は言う。


「懐疑的な意見も多かったですが、最初はそんなものでしょう。夕方の炊き出し、そして、これからの治安維持もよろしくお願いします」

「もちろんです。あと、今回のような事件の詳細を集めてくださいませんか?」

「ええ、よろしいですよ。我々では捜査の技術がありません。早期解決に僅からながら助力いたしましょう」


 アルカはあの事件がずっと心に引っ掛かっていた。あり得ない現象が立て続けに起きているのなら、死神の関与が疑われるからだ。

 アルカの申し出をタルディ神官は快諾した。数日で集まるそうだ。

 炊き出しの警備を終え、ロープで縛られた加害者の女性を連れて、アルカ達は仮設第二に戻った。


「おかえりーって、誰? その人?」

「アルカが捕まえた暴徒よ」

「え!? 大丈夫ですか!?」

「大丈夫だよ、チェリンカ。これくらいなら怪我なんてしないから」


 アルカが戦ったと聞いてチェリンカが駆け寄ってくる。そんなチェリンカにほっこりしつつ、奥の空き部屋に女性を連れていき、アルカとキョウは尋問を開始した。神意教関連の事が出てくる可能性もあるので、一応アケミは隊員達が近づかないように見ててもらう。


「あなたの名前は?」

「……」

「経歴は?」

「……」

「何故、あんなことをしたんですか?」

「……」

「おい、聞いてんのか?」


 アルカの質問を尽く無視する女性にキョウは詰め寄る。だが、それにも無反応な女性に、今日は肩を掴んで揺さぶった。


「キョウ、止めて」

「でもよ……」

「目を見て」

「あ?」


 アルカの言葉通り、キョウは女性の目を覗き込む。そして、納得したように肩から手を離した。


「目が虚ろだよ」

「オオサカで春門神官が言ってたが、それがこんな状態なのか?」

「たぶんね。証言も挨拶すらなかったってあったから、最初からこうだったと思う」


 もし、この状態に出来る犯人がトウキョウにいるとしたら大問題だ。早急に対処すべきだろう。少しでも情報を集めるため、現状証拠から推測していく。

 まず犯人の目的だが、前回の犯行から考えると、神意教の人間をトウキョウに集めているのは確実だ。神意教の過激派を集めていたのだから、神意教の派閥強化が目的だろうか。当時からの経過時間を考えると当事者は死んでいるか、生きていても高齢になっている。派閥強化と考えるのが妥当だ。


「神意教の派閥だとエドモント神官に聞くか? あの人、過激派を取りまとめてたろ」

「よく覚えていたね、キョウ。勿論聞くけど、エドモント神官はたぶん関わっていないよ」

「それはアタシも同意だ」


 確かにエドモント神官は過激派をまとめている。それは本人も言っていたし、事実、付き人は死神に敵対的だった。

 しかし、アルカとキョウはエドモント神官が犯人ではないと思っている。年齢が若い事、本人は死神ではないと明言している事、信頼できる目をしている事が挙げられる。逆に、犯人はエドモント神官に嫌疑をかけようとしているのかもしれない。


「となると、犯人はエドモント神官に恨みのある人物か? でも、特異技能が使える死神なら直接殺した方が早くねぇか? 嫌がらせにしても、もっとましな方法があるだろ」


 正にキョウの言う通りだ。班員と同格ならばどれほど戦闘が苦手でも只人一人殺すなんて余裕だ。嫌がらせにしても、機動隊から嫌疑をかけられるくらいは何とも思わないくらい覚悟のある人物なので、この程度は歯牙にもかけないだろう。


「犯人が知らなかった可能性は捨てきれないけど、回りくどい手段を採る人物が復讐相手の事を調べないわけがないよ」

「だがよ、そうなったら犯人の目的って何だ。愉快犯か?」


 キョウは頭が痛くなってきたのか、手を頭に当てて唸り始めた。そして、キョウの目も虚ろになってくる。


「たぶん、単なる偶然だと思う」

「偶然?」

「うん。私達が勝手に繋げているだけで、実際には無関係。犯人の目的はもっと別のところにあると思う」


 これまでの推測は“神意教の過激派”という共通点から犯人とエドモント神官を繋げているが、単なる偶然に過ぎないとアルカは考えている。共通点だけを見るのではなく、相違点も見ると、明らかに相違点が多いのだ。


「じゃあ犯人の目的って何なのさ?」

「分からないけど、推測は出来るよ」


 アルカは女性を拘束した時の事を思い出す。何人も大人が引きはがそうとしたが無理だった事。そんな状態でアルカが近づくと、アルカ目掛けて襲ってきた事。これらの特徴を持った存在をアルカは良く知っている。否、アルカだけではない。この世界で生きている人間なら誰だって知っているはずだ。


「……もしかして、不死者か?」

「そう。只人を越える腕力と、優先して死神を襲う習性。途中まで大人しかったり、今も大人しいのは不気味だけど、操られているって考えると不思議じゃないよ」


 不死者を操るなら一番に統率個体の存在を疑うべきだ。アルカ達は統率個体を見たことは無いので、すぐにヴィクターに連絡を入れる。すぐに女性を引き取りに来るそうだ。

 キョウはアルカが連絡を取っている間、女性を突いて遊んでいた。


「キョウ」

「遊んでたわけじゃないぞ。不死者っていうくらいだから死んでると思ったけど、脈はあるし体温もある。コイツ、本当に不死者か?」

「そうなの?」


 アルカは驚きで目を丸くした。そして、実際に女性を調べてみると、キョウの言った通り脈と体温があった。不死者の習性は知っていても生物的には知らないので、アルカはひどく困惑する。


「不死者って生きてるの?」

「知らねぇよ。アルカが知らない事をアタシが知るわけないじゃん。志織に聞こうぜ」


 そういえば志織は不死者に詳しかったはずだ、と思い出したアルカは志織に連絡を入れる。


「こんにちは、志織さん。急に連絡したけど大丈夫ですか?」

『全然大丈夫。それよりも何? 昼食のお誘いなら今すぐ行くけど?』

「今日はお昼のお誘いじゃないんです」

『えー、残念。で? このわたしに連絡を入れたんだ。何か聞きたいことでもあるんだろう?』


 流石、頭の回転が速い。志織はアルカが説明するまでもなく連絡の意味を悟る。

 アルカはそのまま不死者の特徴を質問した。


『不死者に脈は存在しない。何故なら死んでいるから。同じ理由で体温も気温と同じだよ』

「そうでしたか……」


 つまり、この女性は生きているのだ。そして不死者と同じ習性を見せた。偶然なのか、必然なのかは分からないが、嫌な予感がひしひしと伝ってくる。


『そんな質問をするなんて、もしかして不死者の新種でもいたのかい? ちょっと調べさせておくれよ』

「それは禁止されていませんでしたか?」

『バレなきゃ大丈夫だって。少しだけでいいからぁ』


 懇願するような声になった志織からの要望を、ヴィクターから許可を取ってください、という意味合いの言葉でブロックし、お礼を告げて連絡を終えた。


「志織さんの情報と照らし合わせると、この人は不死者と同じような行動をするように操られているのかな?」

「行動は指示出来ても、腕力はどうにもならないだろ」

「……ドーピング薬を使っていたら?」

「それは……只人には無理って言ってなかったか?」


 キョウの言う通りだ。だが、それはシャルズの服用した量ならば、というものだ。ごく少量ならばどうだろうか。それなら耐えられるというのは、あり得ない話ではないだろう。

 キョウと犯人の目的や原因を考えていると、ヴィクターが仮設第二に到着する。随分、急いで来てくれたようだ。

 突然現れた三班班長に隊員達は背筋を伸ばして敬礼をする。ヴィクターは隊員達を横目でチラリと見て姿勢を崩すように伝えた。その後、拘束した女性のいる部屋に向かう。


「それで、この女性が不死者と同じ行動をしたのか?」

「はい、そうです」


 アルカは自身の見た現場の状況を伝え、志織から聞き出した不死者の特徴との相違点と、自身の推測も伝えた。。

 ヴィクターは眉間に皺を寄せて静かに聞いていた。そして、アルカの言葉をすべて聞いた後、ゆっくりと口を開く。


「おおよそ分かった。犯人は恐らく“操る”特異技能を持っているのだろう。不死者に似せて行動させたのかは不明だが、調査すべきだ。アルカ、神意教からの情報は?」

「既に情報を集めるように依頼しています。加害者がいるのなら、その人達も機動隊で預かりますか?」

「ああ、そうしてくれ。引き続き静香の捜査と共に実行を頼む。私はこの女性を宗一に調べさせる。シャルズの検査結果もそろそろ出るはずだ」


 特異技能の影響だけならどうしようもないが、代わりに問題も少ない。だが、もしドーピング薬などが使われているとしたら、かなり面倒なことになる。ヴィクターはその心配をしているのだ。

 ヴィクター共に部屋の外に出ると、当然の如く大護がいた。大護はアケミ達と話していたが、扉が開くと同時にヴィクターの方にやって来た。


「その女性は私が運びましょう」

「任せる」


 大護はアケミたちと話しながら聞き耳を立てていたのだろう。それを見込んでヴィクターは何も説明しなかった。そのまま二人は女性を連れて本部へ戻っていった。第二防壁に魔力自動車を置いてあるらしいので、第二区画でロープで縛られた女性を担いで疾走する大護の姿が噂になる事はないだろう。


「あー、びっくりしたぁ。ヴィクター班長って怖いね」

「そうですね。何というか、小難しい顔してました」

「あら、それはいつもの事よ?」

「そうなんですか? わたしは何か粗相をしたのかと思ってました」


 チェリンカはヴィクターを相当怖がっていたようだ。

 アルカとキョウも最初はそうだったので、チェリンカをフォローしながら午後の予定について伝える。


「午後は三班が見回りに出ます。四班が代わりに待機組としてここに残るので、何かあった場合はまず四班に相談をしてください」

「四班って戦闘面が不安と聞くけど、大丈夫なの?」

「大体は身体能力の差で対応できますから、大丈夫ですよ。それに四班が一番戦闘面に関して知っているので、問題がありそうなら連絡をするでしょう」


 アルカがそう告げてから少しして、四班が見回りから戻ってきた。特に事件などはなく、視線以外は平和なものだったようだ。


「何か発見や手掛かりがあればいいんですけど」

「そうね。早く静香を見つけないと」


 その後、アルカ達が見回りに出発した。静香の手掛かりと、不気味な事件を引き起こした犯人へ繋がるものがあれば良い、と思いながらミスフィットの本拠地がある地区に歩を進めるのだった。


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