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死神少女は生きています  作者: 気晴
第一章 独立機動隊の新人
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07 初任務3

 大護の不穏な言葉の後、事件現場への聞き込みと、暗号と思しき落書きの有無の調査を行った。結果は大当たり。多くの企業に魔力自動車が盗まれる数日前に、二人組の機動隊員が訪れていた。落書きも事件現場の周囲に多数発見できた。

 なお、聞き込みの途中で龍造とソウゴから、容疑者と思しき機動隊員の情報が送られてきた。見た目と年齢、配属地、巡回地域から絞り込んだそうだ。あんな二人だが、想像以上に優秀なようだ。報告の言葉のトーンから、なんとなくどや顔をしているのが想像できる。

 「これで掃除は無しじゃな」と言う声に、大護は「では次の任務です」と返し、しばらく二人がうるさかったが、潜入という言葉を聞いて静かになった。大護が話し終える頃になると、楽しみでたまらないのか、弾んだ声で通信を切ったのだった。


 本部に戻ってくると、すっかり日は落ちて、夜になっていた。

 簡単に聞き込み結果をまとめて、寮への帰り際に「明日が楽しみです」と言って去っていった。恐らく、潜入と言っていたことに関してだろう、とあたりをつけ、アルカとキョウも帰路に就いた。

 

翌日、本部に顔を出してすぐに、会議室に呼ばれる。同じように呼ばれた静香とアケミも一緒だ。初めての場所に緊張しつつ入室すると、そこにはいつも通りのヴィクターと大護、何故かテンションが高い龍造とソウゴがいた。

大護に座るよう促され、それぞれが席に着くと、ヴィクターが口を開く。


「集まってもらったのは他でもない、明日の夜中に、魔力自動車の窃盗計画があることが判明した」


 その言葉に、知らされていなかった四名が揃って目を瞬く。


「昨晩から龍造等が、第三区画にある鍵を扱う企業に潜入調査をしていたところ、偶然にも容疑者と特徴が合致する二人組がいたそうだ」


 気配を消しつつ近づき、聞き耳を立てたところ、第二区画にて行う計画とのこと。潜入するよりも前から話していたためか、それからすぐ帰っていったそうだ。


「儂が二人を尾行したんじゃが、何件か居酒屋を巡った後、第二区画にある機動隊員の寮に入っていったのを確認した」

「ワシは鍵屋の主人を見張っておったが、地図を眺めながら暗号を見に行くと言っておった。主人が寝た後、地図を写して戻ってきたぞ」


 ソウゴが写した地図を見る。だいぶ簡略化されてはいるが、標的にされている企業と、時間が書き込まれている。本部に戻る途中で、この企業の近くに例の落書きも確認してきた、と付け加える。

 一様に頷いたり、考えている中、静香が手を上げ発言する。


「すぐに逮捕すべきでは?」

「ふむ、そうだな。……アルカはどう思う」


 突然ヴィクターから名指しで呼ばれ、驚きのあまり尻尾が上にピンッと立つ。


「あ、そ、そうですね。……私はまだ泳がせておくべきだと思います」

「ほう、なぜだ?」

「今犯人として挙がっている人物は三人です。そして、すでに数十台の魔力自動車が盗まれています。ですが犯人の目的が分かりません」


 そのまま売るにしても、分解するにしても、なぜこれほどの数の魔力自動車が必要なのか、不自然なのだ。


「背景に何かしらの組織、それもかなり大きい組織が動いているように思います。なので、あえて泳がせ、背後の組織と接触したところを押さえるべきだと考えました」


 魔力自動車の受け渡しには、必ず接触があると思います、と締めくくる。

 アルカの考えを聞き終えたヴィクターは、一度目を閉じた後、フッと笑みを浮かべる。初めて見た笑顔にアルカとキョウだけでなく、静香とアケミも驚く。


「よく考えている。初任務にしては期待以上だ」


 顔に浮かんでいた笑みはすぐに眉間の皺に変化し、空気が変わる。つられるように、その場の全員が姿勢を正した。


「今回の事件はアルカの予想通り、背後に大きな組織がいるものと考えられる。それらの情報を掴むため、犯人を追跡し、大本を特定する。特定でき次第、強襲を仕掛け、一網打尽にする。証拠を隠蔽する時間を与えず、迅速に行動することになるため、場合によっては、手の空いている三班にも協力を要請することになる。指揮はアルカ、君が執れ。補佐は大護だ」


 突然の指名に、頭が真っ白になり何も考えられなくなる。しかし、そんなことはお構いなしにヴィクターは続ける。


「この作戦は外部に漏洩しないよう、三班内部でのみ共有することになる。くれぐれも口外しないように。作戦の結果を期待している。以上だ」


 さっと立ち上がって、ヴィクターは会議室を出ていく。会議室の扉が閉まると、にわかに騒がしくなる。


「班長が笑った?うそでしょ」

「私が配属されてから初めて見た」

「ずいぶんと機嫌がよかったようじゃ」

「珍しいものが見れたのぅ」


 どうやらヴィクターの笑顔は相当珍しいものであるようだ。

そんな中、キョウはアルカに視線を向ける。アルカは、周囲の騒ぎを気にする様子もなくどこか遠くを見ていた。キョウがアルカの肩に手を乗せると、ビクッと震えたのち、ようやく動き出す。


「キョウ、私大丈夫かな」

「……やるしかないだろ」


 アルカは数舜止まったのち、頬をペチンと叩く。よし、と気合を入れたところで、大護に声を掛けて計画を詰めることにした。





 第二区画、とうに夜のとばりが下りて、辺りは静寂に包まれている。そこに現れたのは三人の男性だった。足取りはしっかりしており、止まることなく進んでいる。


「あった、ここで間違いないな」

「よし、さっさと開けろ」

「……はい」


 返事をした人物が、ゲートの前で何かゴソゴソし始める。五分も経たずにガチャリという音が響く。


「おい、静かにやれよ」

「す、すいません」

「まあいい、用は済んだ。さっさと帰れ」


 鍵を開けた人物はそそくさとその場を立ち去り、闇に溶けていった。

 残った二人は門を開けて、目の前にある魔力自動車に近づく。運転席側のドアの前で素早く手を動かし、ドアを開ける。そのまま乗り込み、魔力自動車が動き出した。

 大通りを避けるように走っていき、人気のない公園の前に停まった。車から降りた二人を確認したのか、公園から数人やってくる。


「よう、首尾はどうだ、って聞くまでもねぇか」


 公園から出てきた人のうち、一番ガタイの良い人物が気安く尋ねる。雰囲気的に彼がリーダーのようだ。


「誰も来てないだろ?それが証拠だ」

「ハハッ、違いねぇ」


 魔力自動車を調べていた人物が頷くと、リーダーの後ろに控えていた人物がカバンを渡す。


「いい仕事だった。報酬だ」

「ありがとよ。じゃあな」


 二人はそう言って暗闇の向こうに消えていった。


「戻るぞ。速く乗りな」


残された三人は魔力自動車に乗り込み、自分たちの雇い主のもとに向かった。

 “未来科学技術工作研究所”と描かれた門を潜る。魔力自動車を倉庫の奥に止め、外からは見えないよう扉を閉めた。


「よくやってくれた」


 そう言って、彼らに褒め言葉を送ったのは、彼らの主人-未来科学技術工作研究所の社長である。


「給料分はしっかりと働きますぜ」

「それは結構」

「しっかし、かなりの数の魔力自動車を盗んだが、こんなにどうするつもりなんだ?」

「ほう、気になるかね」


 社長は口元を歪めて、リーダーの男を見る。


「ハハッ、やめておくぜ。深入りすると面倒くさそうなんでな。だが……」


 リーダーの男は一度そこで言葉を止める。その様子に社長が訝しむような目を向ける。


「どうした?元機動隊員の君が気になる事でもあったか」

「……あまり派手にやると、班員が動くぞ。あいつらはマジで危険だ」

「機動隊のエリート達か。動いたという話は聞いていないが」

「ならいいが、もし動いたという話があったら、手を引くことをお勧めする」

「その忠告は心に留めておこう」


 社長は忠告を頭の中のメモ帳に書き込み、立ち去ろうとしたその時、向かい合っているリーダーの男の後ろに人影らしきものが見えた。

 咄嗟に警告を発しようとしたが、次の瞬間には意識が闇に沈んだ。





「倉庫内、制圧完了」

「建物内、従業員の拘束完了」

「社長室、事件に関すると思われる資料を確保」

「初期目標の三名を拘束完了」


 次々と通信機から入ってくる情報が、事件の終わりを告げる。そのことに、アルカは大きく息を吐く。どうやら相当体が強張っていたらしい。


「了解しました。容疑者は一か所にまとめて監視を。口裏合わせなどさせないようにしてください。手が空いている班員は、建物の調査を。証拠集めや、逃走した人物がいないか確認を。初期目標の三名はこちらの容疑者とともに監視します。合流してください」


 それぞれに指示を出し、事件の後処理のため待機している班長に連絡を入れる。了解した、と短く返答がある。


「上出来ですね」


 隣にいる大護がいつもより三割増しの笑顔で褒めてくる。


「緊張しました」


 アルカはもう一度大きく息を吐く。アルカ自身は指示を出していたため、肉体的には全く疲れていないが、精神的にかなりしんどかったのだ。

初任務のはずが、何故これほどの大事になったのか。思い返しているうちに、アルカの耳に、聞きなれた機動隊のサイレンの音が聞こえ始めたのだった。


 


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