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死神少女は生きています  作者: 気晴
第二章 栄枯盛衰の廃墟
34/122

33 廃墟探索

 ゴソゴソと誰かがベッドから起きる音で、アルカは目が覚めた。情報端末で時間を確認すると、夜明けの時間であった。

 昨晩、早く寝たこともあり、アルカも伸びをしてからベッドから出た。

 軍服に着替えてテントの外に出ると周囲はまだ薄暗いくらいで、少し冷たい風が吹いていた。寝起きには丁度よく、段々と頭が冴えてくる。

 すでに起きている隊員もいて、朝食のいい匂いが漂っている。


「おはよう、アルカ」

「おはようございます、アケミさん」

「もうそろそろ朝食が出来るから、キョウを起こさないとね」


 アルカに気が付いたアケミと挨拶をして、キョウを起こしにテントに戻る。

 布団を頭から被り、籠城しているキョウを何とか引きはがし、食事をするためのテントに向かう。

 中には隊員が何人か食事や談笑をしており、大護も混じっていた。

 朝食を食べ終える頃には太陽が顔を出し、十分に明るくなっていた。


「それでは捜査に行きましょう。各自荷物は持ちましたか?」

「確認済みです。問題ありませんでした」

「分かりました。隊員の皆さんは伝えた通りに作業をしてください。問題が発生したら、遠慮なく連絡を」


 見送りに来ていたハイディが頷くのを確認して出発する。都市外調査訓練の時のようなバックパックは無く、腰に幾つかポーチを着けて必要最低限の荷物を入れている。

 昨日と同じ道を通り、廃墟群に到着した。

 大護が情報端末で廃墟群の地図を表示させる。


「今いる場所はここ。効率化のためにも二手に分かれます。私とアルカは中央から北、アケミとキョウは中央から南を捜査してください。捜査状況は随時書き込んで下さい。何かあった場合、連絡を確実にするように」

「わかったわ」

「今日は手本を見せるために変則的なチームですが、明日からはいつものチームになります。よく学ぶように」

「はい」

「では、捜査を開始しましょう」


 アケミ達と別れ、捜査が始まった。


「まずは犯人の痕跡を探します。一見すると自然な風景に見えますが、人が生活すると必ず不自然さが出ます」

「火を使ったり、食べ物を食べたり、歩くと道ができたり、ですね」

「その通りです。それらの痕跡を集め、犯人の居場所を推測していきます」


大護からレクチャーを受けながら、アルカは周囲に気を配り、何かないか探していく。


「人は屋根や壁があるだけで安心感が段違いです。そういうところを重点的に探してみてください。気配察知は使ってもいいですが、過信は禁物です。必ず目視確認をしてください」


 言われた通り、廃墟の中でも原型が残っている建物を探してみる。骨組みを少し揺らし、崩壊の危険が無いか確認して中に入る。

 所々天井に穴が開き、光が差し込んでいるため、ライトで照らさずとも中の様子はよく見えた。

 家具やインテリアだった物は長い時の中でその役目を終え、朽ち果てていた。床はひび割れ植物や虫の寝床となり、瓦礫が転がっていた。


「誰もいないね」


 耳を忙しなく動かし、目視確認も行ったが、人のいた形跡はなかった。

外に出ると、隣の建物から大護が出てくる。アルカと同じように、中を捜査していたようだ。


「その様子では何もなかったようですね」

「はい、痕跡らしきものはありませんでした」

「わかりました。では、地図に記入をしてください」


 情報端末で地図を表示し、調べた建物を探索済みにする。すると、何も操作していないのに、隣の建物まで探索済みに変わった。


「この地図は共有されているので、誰かが書き込むと他の班員の地図にも記入されるのですよ」


 いい笑顔をした大護が、得意気に説明してくる。どうやらタイミングを見計らって書き込んだらしい。確信犯である。

 内心呆れながらアルカは地図を縮小していき廃墟群全体を映し出すと、既に幾つもの場所で探索済みになっている。

 眺めている間にもまた一つ捜査済みになり、各地で探索が進んでいることが分かった。


「さて、他の班員も頑張っているようですし、私達もどんどん進めましょう」


 そこからは建物や道路など人の痕跡をひたすら探していく。

 しかし、そう簡単に発見できるものではなく、気が付けば太陽は真上に来ようとしていた。


「午前の探索はここまでにしましょう。一度、アケミ達と合流します」


 既に連絡はしているため集合場所に向かう。そこにはアケミとキョウの姿があった。

 腰のポーチから道具を取り出し、都市外調査訓練の時と同じように火を着ける。食事は缶詰と乾パンだ。米を炊く時間が勿体ないと判断されたためである。


「どうでしたか、そちらは」

「問題も発見もないわ。キョウが心配だったけど、アルカが居なくてもしっかりやり方を覚えていたわ」

「エッヘン」

「威張るところじゃないでしょ」


 ドヤ顔で胸を張るキョウの脇腹をつつく。変な鳴き声を上げてアルカに抗議の視線を送るが、出来なくてはならない事で、すごいことではないのだから当然だ、とアルカは視線で返答をする。

 そんなことをしていると、缶詰が温まり食べ頃になった。


「どの班員からも連絡が無いですから、犯人の痕跡は見つかってないようですね」

「半日でこれだけなら、かなり時間がかかりそうですね」

「このメシがずっと続くのか……嫌だなぁ」

「朝夕は美味しいから我慢しなよ」

「この昼食があるから、他が美味しく感じられるのよ。でも実際、廃墟群自体がかなり大きいから大変ね」


 まだまだ廃墟群の外縁部で、倒壊している建物の方が多いが、中心部に向かうにつれコンクリート製の倒壊していない建物が多くなる。

 そうなると必然的に内部を探索しなければならず、時間がかかることになる。


「焦らず確実にこなしていくしかありませんね。性急に物事を進めても、往々にして上手くいかないものです」


 そう言って、大護は片付けを始めた。火の処理をして探索を再開する。

 最初よりだいぶ慣れてきたこともあり、探索のスピードが上がって来た。

それでも、やはり犯人の痕跡は見つからず、建物から出ると、大護が情報端末で誰かと話していた。


「……そうですか。ならば、その付近を重点的に捜査して下さい……はい、今日のブリーフィングで詳細を共有します。では」

「何か見つかったのですか?」


 話の雰囲気から、犯人に繋がる何かが見つかったのだろうと見当をつける。


「北部を捜査していた班員から、魔力自動車が発見されたと報告が入りました」

「魔力自動車が……」

「はい、車両が隠されていた建物の中は、もぬけの殻でしたが、人がいた形跡があったようです」


 捜査が一歩前進し、嬉しい反面、疑問も湧いてきた。


「どうして車両を置いていったのでしょう。移動するなら必須では?」

「可能性はいくつかありますね。アルカはどう考えますか?」

「そうですね……大きいので隠密には向きません。走行すれば大きな音が出ます。秘密裏に逃走するには目立ちすぎます」

「良い考えです。他に考えられることは、我々を足止めするための餌でしょうか」


 魔力自動車のような証拠が見つかれば、機動隊はその周辺を重点的に探索せざる負えず、廃墟群に縛り付けておくことが出来る。それで逃走の時間を稼ぐのだ。


「どちらにせよ、ここに犯人がいた痕跡が以上、探索は必要です。犯人がいないという保証はありませんし、気を抜いてはいけませんよ」


 その後、アルカは探索を進めるも、これと言ったものはなく、ただ時間だけが過ぎてゆく。

探索の最中、何度か大護は連絡を取っていたが、ブリーフィングで詳しく説明してくれるとのこと。

日が落ちてきたので、アケミたちと合流し拠点にもどり、ブリーフィングを始める。

画面に各拠点の代表が揃い、大護が第一声を発する。


「揃ったようですので、ブリーフィングを始めます」

『魔力自動車が見つかったってのはマジか?』

『本当です。今こちらの拠点に持ち帰って調査しているところです』

『北部で見つかったか。でも犯人は捕まってないんだよな?』

『はい、人がいた形跡があっただけです』

『俺達の取り分が残ってんならいいさ』


 フンッと鼻を鳴らすミハイルが質問を終えたところで、話は次に進む。


「岳、犯人の痕跡から何かわかりましたか?」

『水や食料が大量に残されていました。また生活していたと思われる部屋は散らかっていたため、慌てて出ていったものと考えられます。』

「いつ頃出ていったと予測しますか?」

『部屋の埃や、竈に残された炭の状態、生ごみなどから考えると、ほんの数日前、それこそ我々が廃墟群に到着したくらいかと予想しています』

『マジかよ!ならまだここに可能性が高いわけだな』


 一班を映し出す画面がにわかに騒がしくなった。犯人が死神と確定しているため、少しは戦えることに盛り上がっている様子だ。


「いい情報でした。痕跡を発見した地点から犯人の行動を予測しつつ、引き続き捜査を。残りは犯人がいると仮定して、警戒を怠らないように。何か質問などは……無いですね。では、解散です。以上」


 大護の言葉で、すぐに一班の通信が切れるが、三班の画面はついたままだ。


「どうかしましたか?」

『副班長、一つ報告が……』

「聞きましょう」


報告があるならブリーフィングで伝えた方が、手間が無いのにもかかわらず、今話そうとする辺り、何かあると大護は察する。


『発見された食料なのですが、一部は機動隊の横流し品だと思われます』


 その言葉に、大護だけでなく聞いていた班員達からも驚きの声が上がる。

 機動隊に備蓄されているものと全く同じ缶詰があったというのだ。

 缶詰自体はそれほど需要が多いわけではないことから、作るメーカーも限られてくる。そして見つかった缶詰は長期間の保存や栄養バランスを考慮した特注品であり、市販されていないものだ。


『消費期限を見ても、廃棄するには早すぎました。機動隊内部に犯人と繋がり、支援している共犯者がいるのではないでしょうか』

「……面倒なことになりましたね。岳、その情報は他に誰が知っていますか?」

『ここにいる班員だけです。噂が広がると共犯者に逃げられると判断したため、勘づかれないよう証拠写真を撮ってから箱を入れ替えました。隊員達には証拠品だから下手に触れるな、と伝えています』

「いい判断です。このことは他言無用で、一班にも伝えないでください。班長にも連絡するので岳は残ってください。他は解散です」


 大護が忙しく通信をしている中、アケミに促されテントの外に出る。


「あとは副班長に任せて、明日に備えましょう」


 その言葉通り、アルカ達は明日の準備をして就寝するのだった。


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