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死神少女は生きています  作者: 気晴
第二章 栄枯盛衰の廃墟
30/122

29 休日の戦闘訓練1

「精が出るわね、二人とも。寮にいないと思ったら、こんなところにいたのね」

「休日だぞ。何を考えている」


 ニコリと笑うアケミと、呆れたような声音の静香がいた。

 二人は打ち合いを中断し、アケミが手渡してきた飲み物を貰う。

 運動して火照った体に、冷たい飲み物が体に染み込む。


「お二人はどうしてここに?」


 飲み物を飲んだ後、アルカは純粋に疑問に思ったことを聞きた。都市外調査訓練の事もあり、恐らく静香とアケミは休日なのだろう。それなのに何故、訓練場にいるのだろうか。

 その質問にアケミまでもが呆れたような顔になった。


「休日だから、良ければお出かけしようと誘いに来たのよ。都市外調査訓練で疲れもあるだろうし、寮にいると思ったのに、ここにいるのだもの。二人ともちゃんと休んでいるの

?」

「あー、それは……すいません」

「いいのよ。突然だったし、いる場所も見当ついていたから。気にしないで」

「今からでもどこか行きますか?」

「せっかくここに来たのだもの。今日一日はアルカ達の強さの秘訣を学ぼうと思うわ。いいでしょ、静香?」

「ああ。私もアルカ達の強さには興味がある」


 二人とも乗り気になったので、そのまま訓練を続行する。といっても秘訣などはなく、いつも通りの事をするだけだ。

 静香達が準備運動をしている間、再びアルカとキョウは向かい合い、魔動武装を振るう。掛け声すらなく淡々と打ち合いをしていく様を、静香とアケミは食い入るように見つめていた。


「何というか、圧巻ね。声も掛けずにあそこまで思いっきり攻撃できるのは、よほど信頼しあえている証拠ね」


 戦闘訓練と言えど、普通は掛け声を出して怪我などさせないよう手加減をするが、アルカ達にはそれが無い。当たり所が悪いと死ぬような攻撃を二人が行っていることに、静香達は驚きを隠せない様子だ。


「私達や他の班員相手には手加減をしていたのか。こんな危ない訓練を平気な顔してこなしているなら、強いのも納得だ。」


 班員の誰かがいるなら、チームでの戦闘訓練が普通であり、一対一での打ち合いはほとんど見せたことが無い。

 加えて、静香も言っている通り、信頼しあっているわけでも、手の内を知っているわけでもないので、怪我等しないように気を付けている。

 準備運動が終わった二人を交えて、チームでの戦闘訓練を始めることになった。

 静香はオーソドックスな直剣を、アケミは長さの異なる二本の槍をそれぞれ構える。


「では、始めましょう」


 アケミの声を合図に摸擬戦が開始された。

 まず動いたのは静香だ。真っ直ぐにアルカ目掛けて駆ける。呼応するようにアルカも走り出した。

 二人がかち合ったのは丁度中間、速度はアルカに軍配が上がった。両者は速度を武器に乗せて切り結ぶ。初撃は拮抗するも、二回三回と打ち合うにつれ、アルカが押され始めた。

 このまま押し切ろうと、静香はさらに力を込めて剣を振るう。

 しかし、どれほど力を込めてもアルカに届くことはなく、綺麗に受け流されていく。


「くっ!このっ!」


 今までの摸擬戦でもずっと攻撃を受け流されており、未だにアルカに有効打を入れたことが無い静香は、段々とフラストレーションが溜まってくる。その焦りが剣筋を乱れさせる。

 アルカはその隙を見逃さない。ほんの一瞬だけ多量の魔力を体に巡らせ、身体能力を大きく向上させる。そして、静香の剣を弾き飛ばした。

 驚愕に顔を染めている静香に、一歩踏み出したアルカは拳を振るう。威力は落としてあるものの、静香は数メートル後ろに後退させられる。

 さらに追撃を仕掛けようとしたアルカであったが、飛んできた槍に後退を余儀なくされる。


「静香、焦りすぎ。もっと冷静に」

「すまん、アルカ。逃した」


 互いに相方と合流し、仕切り直しとなった。

 次に動いたのはキョウだ。静香に狙いを定めて攻撃を加える。

アルカの時とは反対に静香が押され始めた。

アルカはアケミの鋭い突きを躱し、薙ぎ払いを受け流す。お返しとばかりに、アルカも多数の攻撃を仕掛けるが、どれも弾かれてしまう。

アケミの槍捌きはお手本のようで、主に右手に持った長槍で攻撃を仕掛け、左手の短槍で防御をしている。そして、時に攻守を入れ替えたり、武器を持ち換えたりと、簡単には読み切れない複雑な動きだ。

 アルカとアケミの戦いが拮抗している中、すぐ隣の戦いに変化が起きる。キョウの一撃で静香がバランスを崩したのだ。

 アケミは静香の援護しようと、アルカを強引に引き離す。そして、目を見開いた。

 静香に追撃を加えると思っていたキョウが、アケミに攻撃してきたのだ。

 予想外のことに何とか迎撃するも、キョウに攻撃に足が止まる。そして、後ろからアルカに肩を優しく叩かれた。


「あっさり引き離せたと思ったらワザとだったのね」

「はい、アケミさんなら必ず援護に行くと思ったので、あえて下がりました」

「はぁ、また負けたわね」

「すまない、アケミ」


 静香が近寄ってきて、アケミに謝る。その表情は悔しさがありありと浮かんでいた。


「謝るのはこっちよ。今の摸擬戦はわたしがやられたもの。気にすることはないわ」


 アケミと静香が話している間、アルカとキョウは反省を始める。


「アケミさんに横やりを許しちゃったのは失敗だった」

「もう少し動きをコンパクトにできそう?」

「難しいかも。大剣の持ち味を生かすとどうしても隙ができる」

「うーん、なら大剣以外のもので隙を無くすべきかな」

「でも手足だと届かないぜ?」

「ナイフでも投げれば?」

「あー、やってみる」


 とりあえずキョウは軍服にナイフなりを装備することに決める。続いてアルカの反省点だ。


「力負けするのはともかく、やっぱりアケミさんみたいに攻撃のバリエーションが多くないから、状況を打開する手段が乏しいことかな」


 アルカもアケミも両手に二本、長さの異なる武器を持つスタイルだが、アケミは多彩な攻撃を仕掛けてくるため、攻めきれないのだ。

 武器の種類が違うため、すべてを参考にすることはできないが、見習いたい所存である。

 すると、話を終えた静香とアケミが加わる。


「勝っておいてそれだけの反省が出てくるあたり、わたし達も見習わないとね。それで、わたし達の反省点はあるかしら?」


 アルカは一瞬考えるが、素直に伝えることにした。


「アケミさんはほとんど問題ないかと。あえて言うなら、静香さんに意識を割き過ぎだと思います」

「どういう意味かしら?」


 チームの相方の状態を把握することの何が悪いか分からず、アケミは首を傾げながら問う。


「アケミさんが静香さんのピンチにすぐ反応するので、静香さん自体の成長を妨げているように感じます」

「成長?」

「はい。これまでもそうでしたが、静香さんの問題点は攻撃が真っ直ぐで単調なところです。だから簡単に避けて、受け流せました。そしてそれは今も変わっていません。多分ですが、アケミさんが過保護すぎて、静香さんは無意識に頼りすぎているのだと考えられます」


 静香が劣勢になってもアケミが必ず手助けするため、それを普通だと思い込み、自身での打開策などを考えていないのだ。だから静香は、どんどん考え、改善していくアルカ達には攻撃が届かない。考えないから成長しない。

 アルカの言葉に、ショックを受けたように立ち尽くす静香と、考え込むような仕草をしているアケミが目に映る。


「ちょっと言い過ぎじゃね?」

「でも、ここで嘘つく意味ないよね」

「もう少しオブラートに包むとかしろよ」

「オブラートに包むと理解できない人にしかアドバイスしたことない」

「それは……ごめん」


 こそこそと小声で言い合っていると、何か考え付いた様子のアケミが声を掛けてきた。


「アルカの言う通りね。少し過保護すぎたかも。アルカ、キョウ、もう一戦お願いできるかしら?」

「それは構いませんが、それなら一対一の方がいいと思います」


 チームでの行動が前提とされているのに、一人での訓練に意味があるのか、とアケミは問いかける。


「一人でもある程度強くなければいけません。チームを組めば突然強くなる、なんてことはほとんどないです。他の班員の方でも、個人が強いところはチームでも強かったですが、逆はいませんでした」


 それに、都市外調査訓練の時のように、急遽一人で戦わなくてはならない時もあります、とアルカは付け加える。

 アケミは深く頷いて、立ち尽くしている静香に顔を向ける。


「静香、今日の戦闘訓練は個人の課題を見つけることに使うわ」

「……あぁ、どうしてだ?」


 どうやら、アルカに成長してないと言われたことが衝撃過ぎて、思考停止していたようだ。

 アケミはアルカとの会話をかいつまんで話し、一対一で訓練することを伝える。静香は無言で頷いて、了承の意を示した。

 まずはアルカと静香が摸擬戦をすることになった。互いに向き合い、武器を構える。


「いきます」


 アルカの言葉を合図に摸擬戦が始まった。そして前回と同じく静香の攻撃をアルカが受け流す展開となる。

 アルカはあえて反撃を行わず、受け流しのタイミングや力のかけ方を少しずつ変えながら、静香がどのように動くか観察する。

 最初に比べて剣筋が鈍いのは、この状況を打開する方法を考えているからであろう。思考に意識を割きながら戦うのは慣れが必要だが、はっきり言って隙だらけである。今まで本当に考える事をしてこなかったことが如実に表れている。

 そのまましばらく打ち合っていたが、一向に埒が明かないため、アルカが動くことにする。

 今度は普通の強化状態のままで反撃を試みる。受け流しをしつつ、身を屈めて体のバネを溜める。そして、鈍った剣筋を見極めて一気に開放した。

 静香の持つ直剣の鍔に近い位置に斬撃を当てることで、簡単に弾き飛ばし、静香の体勢を崩す。そのまま首に刀を添えて摸擬戦は終わった。


「どうだった、静香。動きがぎこちなかったけど、何かいい考えでも浮かんだ?」

「いや……浮かばなかった」

「そうねぇ。外から見ていた感想だけど、ああいうときは一度距離をとるのもアリね」

「敵から離れるのか?」

「冷静に物事を考えるなら、離れて俯瞰的に見ることが一番よ」

「そうなのか……難しいな」

「仕方ないですよ。考えながら戦うことは一朝一夕では出来ません。何度も繰り返していくしかありません」


 アルカは静香をフォローしたつもりだが、静香はいまいちパッとしない表情をしている。

 そして何か話そうと静香は口を開いたが、言葉は出てこず、再びきつく閉じられた。

 そんな静香をよそにキョウとアケミの摸擬戦が始まろうとしていた。


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