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死神少女は生きています  作者: 気晴
第一章 独立機動隊の新人
3/122

02 試験2

 土煙から二つの影が飛び出す。アルカとキョウだ。


「くそっ、何だってんだ!」

「人影が見えた。多分ここからが試験の本番」

「正解です」


 土煙の向こう、こちらを攻撃したと思しき人物の声が響く。


「よく奇襲を回避しましたね。一撃で終わらせるつもりでしたが、ショックです」


 口ではそう言っているものの、とても愉快そうに聞こえる。

 実際かなりギリギリでの回避だったのだ。疑問はあったものの簡単な試験で気が緩んでいたのもあるが、それでも気配も直前まで気づかず、ましてや音が一切しなかったのだ。相当な手練れであることは間違いない。

 土煙が薄れ、軍服を纏った男が出てくる。

 明るい緑色の髪、目尻が少し垂れ、口の端が上がっており、全体的に穏やかそうな雰囲気の人物である。しかしその眼は一切の油断がなく、手にはトンファー型の魔動武装が握られている。


「さて、では改めて試験を始めます」


 こちらを値踏みするように見つつ、トンファーを構える


「キョウ、全力でいくよ」

「ああ」


 キョウが短く返事をする。

 三者の間に静寂が訪れる。

しかしそれも一瞬。示し合わせたかのように、一斉に動き出した。

最初はアルカの刀とトンファーがぶつかり火花を散らす。一回目で相手の力が自身より強いと悟り、正面から攻撃を受け止めず、受け流すようにして避ける。短刀で二回目、返す刀で三回目の斬撃を加えるが、どれもトンファーではじかれる。


「速く、鋭い。素晴らしいですね」

「それはどうもっ!」


 とても愉快そうに感想を述べる相手に対し、袈裟切りに切りつける、と見せかけて突然体制を低くする。


「なっ!?」


 驚くのも当然だろう。切りかかろうとしていたアルカからの攻撃がなくなり、姿勢を低くしたアルカを飛び越えるようにして、キョウの大剣が突き出されてきたのだから。

 ガンッ、と咄嗟に反対のトンファーで受け止めるも、勢いを止めることはできず、後ろに弾き飛ばされる。

 同時にクラウチングスタートのような姿勢からアルカが高速で追撃をする。キョウと被らないように、斜めに飛び出し、障害物を足場に軌道を変える。キョウはそのまままっすぐ追撃をかける。

 二方向からの同時攻撃が、体勢を崩した相手に襲い掛かる。


(決まった!)


 アルカとキョウは確信した。

 しかし、次の瞬間、その考えは覆される。

 相手が体をひねり、大剣の側面を蹴ることで軌道を変える。大剣が盾となり、刀は届かず、逆に予想外のことに一瞬のスキが生まれてしまった。

 すさまじい衝撃が走る。地面を二、三度バウンドして止まる。追撃を避けるため素早く起き上がり、刀を構える。キョウも同じように大剣を構えていた。

咄嗟に後ろに跳び、魔力を体に張り巡らせ防御してもかなりのダメージが入った。次同じものを受けたら立てないと思うような一撃だった。


「今のは肝を冷やしました。訓練生とは思えないほど洗練された連携です。防御時の判断も、攻撃を受けた後のリカバリーの速さも、今すぐ配属されても通用するほどでした。実に素晴らしい」


 顔にくっきりと笑みを浮かべ、アルカとキョウを褒めている相手を見る。


「アルカ」


 キョウが名前を呼ぶ。その眼は当初より闘志が強く燃えており、笑っていた。

 アルカは、それだけでキョウの言わんとすることを理解した。今の自分達ではかなわないほど強いこの人と存分に戦いたいと。二人で挑戦したいと。


「しょうがないなぁ、付き合うよ」

「そういうアルカも笑っているじゃん」


 どうやらアルカも笑みを浮かべていたらしい。


「おや?試験は合格ですよ?これ以上は加点も何もありませんが、まだつづけるのですか?」


 一番楽しそうに笑っている人が何をいっているんだ?というこちらの心の声が聞こえたのか、声を出して笑い言った。


「いいでしょう。かかってきなさい」

「本気で戦うから」


 アルカとキョウはできる限り魔力を体に張り巡らせる。後先は考えない。全力で戦うことに集中する。互いにアイコンタクトを送り、挟撃になるように左右に分かれて駆け出す。

 あえて二人のタイミングをずらし、最初にキョウが重い一撃を加える。相手は流石に正面から受けるような真似はせず、器用に片方のトンファーで受け流す。

大剣を遠くに弾き飛ばされるのと、受け流しに使った片腕をキョウが掴むのは同時だった。

 相手が目を見開く。受け流した大剣が想定以上に軽かったこと、キョウが大剣をすんなりと放したこと、何より腕をつかまれたことに。

 キョウが腕をつかむとともに、アルカも攻撃を仕掛ける。案の定もう方のトンファーで防がれる。だが想定通りである。刀に対処した片手を封じ、キョウから僅かに注意をそらせたから。


「オラァ!」


キョウの渾身の拳が相手の鳩尾に炸裂する。


「ぐっ」


逃げ場のない衝撃を受け、苦悶の声が漏れる。続けざまに蹴りが放たれる。しかし相手も一方的に攻撃を受けるわけもなく、強引に蹴りを繰り出す。

 互いの蹴りが入り、腕を掴んでいた力が緩み双方吹き飛ぶ。

体勢を整える前にアルカは追撃を加える。最初の攻撃よりも格段に速くなった多数の斬撃が相手に襲い掛かり、確実にダメージを与えていく。

 そして相手が体勢を立て直すまで時間を稼ぎ、反撃の力強く放たれたトンファーの一撃にあえて逆らわず、距離をとる。

 その時、相手が再び目を見開く。訓練場に設置してあるはずのコンテナが豪速で迫っていたのだ。

 即座に避けきれないと判断しトンファーを構え振りぬく。

ガアアァァァァン、とすさまじい音を立ててコンテナがくの字に曲がり、訓練場の壁に激突する。

ふぅ、と息を吐き、口を開く。


「あれはシャレにならないですよっ!」

「本気で戦うって言っただろ!」


 キョウが障害物として設置してあるコンテナをぶん投げたのだ。死ぬことはないだろうと思っていたが、まさか無傷で対処するとは流石としか言いようがない。


「アンタ何者だよ。流石にただの機動隊員じゃないだろ」


 キョウが息を整えつつ疑問をぶつける。その通りである。アルカとキョウの連携をたった一人で対処し、二人が本気を出してなお、倒せる気配がないのだ。先ほどの短い攻防で相当な魔力を消費したため、息が上がり、疲労が溜まってきたのだ。

 二人の探るような視線を感じ、実に愉快そうに話し出す。


「そうですね、普通の機動隊員ではないです。私は独立機動隊第三班副班長 岡崎 大護と申します。以後よしなに」


 アルカとキョウは絶句した。独立機動隊は六つの班から構成されており、その副班長ともなれば、相当な実力と実績が必要なのだ。それほどの人物なら強さにも納得がいく。


「あの、何故ここにいるのですか?」


 アルカは思わず聞いてしまった。本来、訓練生の試験に出るような人ではないのだ。


「それはですね、三班に配属される未来の部下達を見に来たのですよ。想像以上に強くて驚きました」

「私たちは三班に配属ですか?」

「ええ、既に決定しています。教育担当は私ですので、一度、実力を測らせていただきました。これからが楽しみです」


 大護の声が弾んでいる。アルカ達は突然のカミングアウトに衝撃を受け、思考が停止してしまった。そこに大護からさらに言葉が発せられる。


「ということで、ここから先は私も少しばかり本気を出します。頑張ってくださいね」

「えっ」


アルカとキョウの声が重なった。まだ続けるのかと。しかしそんなことはお構いなしに大護はトンファーを構える。


「この際だ、やってやろうじゃない」

「明日は筋肉痛かな」


アルカとキョウもそれぞれ魔動武装を構える。


 もちろん結果は完敗だった。


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