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死神少女は生きています  作者: 気晴
第一章 独立機動隊の新人
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14 神意教への聞き込み

「タルディ神官、聞きたいことがあるのですが」

「私の知っていることなら」


 アルカの言葉に、タルディ神官は姿勢を正す。


「今、私達はある事件を追っています。それを調査するためにここに来ました」

「えっ、事件?調査?……まさか機動隊の方ですか?」


 タルディ神官は驚きのあまり何度か目を瞬いた後、恐る恐る聞いてきた。その言葉にアルカは頷く。


「機動隊の死神が金の刻印を持っているなんて……。そのようなこともあるのですね。それで、聞きたいこととは何でしょう?」


 ほんの少しの間、思考停止したように止まっていたが、すぐに切り替えて話を聞いてきた。


「先日、魔力自動車の窃盗集団を逮捕しました。取り調べの結果、盗まれた魔力自動車の一部が神意教に流れていることが判明しました。何かご存じですか?」


 タルディ神官は考える素振りをした後、首を振った。


「申し訳ない。私は何も知りません。神意教が犯罪に加担しているなんて考えてもみませんでした」

「では、誰かこの件に関与していそうな人物に心当たりがありませんか?」

「……少なくとも私と交流のある神官にはいません。ただ、少し後ろ暗い噂のある神官ならいます」

「その神官について教えてください」

「はい。その方の名前はエドモンド、金の刻印を持つ神官です。あまり上品な方ではなく、ガラの悪い者たちを引き連れているのです。自身にとって都合の悪い人物を何人も殺してきたとの噂があります」


 その噂が本当なら、何人もの機動隊員と連絡が付かなくなったこととも合点がいく。しかし納得できない部分もある。


「そのエドモント神官は死神ですか?もしくは近くに死神がいるのですか?」


 機動隊員は死神なのだ。一般人に負けるほど弱くはない。キョウにしたように、隙を見つけて一撃を叩き込み、複数人で囲めば何とかなるが、任務中の機動隊員は最低二人組であり、隙を見せるようなことはほとんどないのだ。まして、相手が班員ならば不可能に近い。それこそ、同じ死神でなければならない。


「いえ、彼はただの人間です。周りにも死神はいないと思われます。彼の周りにいる者は、あなた方に絡んだ方々と同じような者ですから」


 死神なら誰にでも危害を加えそうな人たちがいるところに、死神はいないだろう。近くに死神の存在がないならば、そもそも魔力自動車を動かすこともできないので、事件の犯人ではないと考えられる。


「あまりいい噂がないのに、金の刻印を持っているのですか?」

「噂は噂です。噂だけで人を判断してはなりません。直接、顔を合わせ、目を見て話し、自身で判断すべきです。私も数回お会いしたことはありますが、悪人とは思えませんでした。むしろ金の刻印を持っていても納得の方でした」

「タルディ神官の言う通りですね。直接会って自身で判断しなければならない。なので、エドモント神官に会いたいのですが」

「申し訳ありませんが、それはできないのです。基本的に神官は自由に活動しています。交流がないのならば、今どこにいるかですら、わからないのです」


 自由が基本なので、人によっては本当に何しているか不明だそうだ。タルディ神官は、教会での活動を主としており、交流があるのも同じような方向性の神官だそうだ。

他の神官の活動例を挙げると、各都市を行き来し、商売をする神官もいれば、家を一軒一軒訪ね歩き布教に努めたり、私財をなげうって貧しい人々に施しを行ったり、都市外移住者とともに都市を離れ彼らを導く神官もいるそうだ。

 そこまで聞いた時、アルカとキョウは思わず目を見開く。


「タルディ神官、都市外移住者とともに都市を離れた神官の名前は、クアドではありませんか?」


 今度はタルディ神官が目を見開いた。


「なぜその名前を?まさか、その金の刻印を渡したのは……」

「そうです。クアド神官が私たちにこれを渡してくれました」

「そうでしたか。彼にはお世話になりました。今はどちらに?」


 タルディ神官は嬉しそうな反応をする。そして純粋に気になった質問をした。

 その質問に、アルカは返答に詰まる。その様子をみて、タルディ神官は何か察したようだ。


「もしかして、お亡くなりになられましたか」


 それは質問というよりは、確認の言葉であった。その声は先ほどとは打って変わって、少しばかりの寂寥感を含んでいた。

アルカは頷く。クアド神官の現在を理解したタルディ神官は静かに目を閉じた。


「そうですか。残念です。……他に聞きたいことはありますか?」


 暗くなった空気を変えるように、お茶を一口含んで言った。


「はい。神意教に入信している死神について知っていることはありますか?人数や、どういった方がいるのか聞きたいです」


 神意教に多数の死神がいることは、証言や現状証拠からも確定している。神官関係からの事件の解決は一端中止し、別の角度から攻めることにした。


「私は詳しくわからないです。昔よりも増えたと言われればそうかもしれませんが、接触がほとんどないので」

「教会にいるのにですか?」

「教会にいるからですよ」


 教会はもともと一般人が来るところで、死神を嫌う人が多い傾向がある。その為、わざわざ教会に来る死神はほとんどいないらしい。


「ただ、正面ではなく別の入り口からなら、死神でも入れるかと思います」

「別の入り口ですか?」

「はい。警備の関係で教えることはできませんが、この教会はとても広大ですので、いくつも出入り口があるのです。私もすべてを把握していませんし、立ち入りが許されていない場所もあります」

「刻印を持っている神官ですら入れないのですか?」

「神意教の上層部、つまり金の刻印を持つ神官もしくは、教祖様から直接、許しを得なければならないのです。」

「金の刻印を持つ神官かその教祖様に連絡を取ることは……」

「教祖様にはお会いしたことすらないので、どうにもできません。しかし、金の刻印を持つ神官、ルドルフ神官という方なら、立ち入り禁止区域にも入れたはずです」


 ようやく事件解決に一歩近づきそうな気配に、つい前のめりになる。


「ですが、各都市を巡って布教をする方で、先日、別の都市に出発しました。今はここにいません」

「そうですか。残念です」


 アルカは内心、期待した分ガックリする。気を紛らわそうと出されていたお茶を飲み、お菓子がなくなっていることに気づく。ちらりとキョウを見ると、満足そうな顔をしていた。

 その時、部屋の外からタルディ神官を呼ぶ声がした。タルディ神官は情報端末で時間を確認すると、立ち上がる。


「すいませんが、教会にきた教徒に教えを説く時間が迫っています。今回はこのあたりでお暇させていただきます」

「わざわざお時間をいただき、ありがとうございました」


 別れの挨拶を交わし、何かあったら連絡をくれることになった。教会の入り口まで見送られ、何事もなく機動隊本部に戻ったのだった。

 本部に戻るとヴィクターに呼ばれ、班長室に向かう。班長室にはいつものヴィクターと、にこやかな大護がいた。


「見たところケガなどはなさそうだな。では、報告を頼む」


 ヴィクターに促され、聞き込みの結果を報告する。報告を聞いている間、ヴィクターは腕を組み、片方の手で口元を覆うようにしていた。


「事件に繋がる有力な情報は得られませんでした。タルディ神官からの連絡を待つか、これからも教会を訪ねる必要があります」


 アルカはそう締めくくり報告を終える。

ヴィクターはゆっくりと組んでいた腕を解いた。


「……なるほどな。神意教に関連することは、もうしばらく君達に任せることになる。引き続きよろしく頼む」


 アルカ達にそういった後、再び口元を片手で覆い、目を瞑った。なにやらブツブツ言っているので何か考えているのだろう。

 すると、横にいた大護が口を開いた。


「それにしても素晴らしい成果ですね」

「素晴らしい、ですか?」

「はい。今まで全く知られていなかった神意教の情報が、この短期間でこれだけ集まったのですから」

「全然詳しくわかっていないと思うのですが」


 精々、刻印についてと、神官の名前くらいしかわかっていないのだ。アルカ達は不思議そうに首を傾げる。大護はその様子を見て、いつもの笑顔から苦笑いになった。


「機動隊はそれすら知りませんでした。大きく危険な宗教くらいの考えでしたから。今回の聞き込みでは、それすら怪しくなりましたが」


 神意教の上層部はまともな考えを持っている方もおり、機動隊の死神こそ早急に考えを変えなければならないですね、そう言って、いつのも笑顔に戻る。


「何も知らない状態から、知らないことがあると分かる状態になったのです。それに神意教内部でも考え方が完全に統一されているわけではなく、派閥がありそうなこともわかりました。これならば対策の立てようがあるというものです」

「わかりました。では私達はどうすればいいですか」


聞く限り、思いつきで行動するべきではないことは分かる。彰浩の取り調べのようなことをすると、面倒なことになりそうな予感がしたため、どう動くべきかをアルカは聞く。


「とりあえずは待ち、ですね。そのタルディ神官からの連絡を待ちつつ、この事件を調査している機動隊員からの報告も待つ。いつでも動けるように準備だけはいておいてください」

「はい」


 それから数日、いつも通り訓練と見回りをして過ぎていった。

 そして、タルディ神官から連絡が来た。



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