表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お題シリーズ

温かい雨

作者: リィズ・ブランディシュカ



 文明の発達につられてなのか、この世界に、異能を持って生まれてきた人たちが多くなってきた。


 最初にそれが分かったのは、いまから百年前だったかな。

 確か、心を読む力だったとか。


 昔はみんな、すごいすごいって言ってたけど。

 今ではそんなにめずらしくなくなっちゃった。


 だってぜったい身の回りには、一人か二人、そんな人がいるもん。


 私の周りにもいるよ。


 クラスの中にいるあの子。

 あの子には特別な力がある。


 半径十メートルにふりそそぐ雨をあたたかくする、という力だ。


 何だそれ?

 って、思う?


 そうだよね。

 微妙だよね。


 もし力がもらえるなら、誰だってもっと便利そうなものを選ぶと思う。


 例えば、遠くに移動するのとか、何でも手に入るのとか。


 でも、彼女がもっているのは雨をあたたかくする力。

 どうしてだろうね。





「あったかいね~。シャワーみたい」





 恩恵を受けるとしたら、ちょっと気持ちよくなるくらいかな。


 傘を忘れた時だけ。


 あっ、後は風邪をひかないとか?


 




「他の人、変な目で見てるよ~」






 でもそれも、ごく短い範囲だけだから。


 他の人から見たら変な人にしか見えない。


 それなのに、あの子は笑うんだ。


 とっても楽しそうに。







「だよねっ!」






 って。


 とってもおかしそうに。


 なんでだろうなって。


 ずっと思ってた。


 糸くずを動かせる人は、トラックとか建物とか動かせる人をうらやんでる。


 こっちの部屋からあっちの部屋にいける人は、遠く離れた国まで行ける人をうらやんでる。


 でも、それなのにあの子は、ぜんぜんそんな事ない。






「どうして?」





 だから、気になって聞いてみたら、こう答えたんだ。






「だって、私の手の届く範囲以外の人を幸せにして、何の意味があるの?」





 なんて。



 そっか。

 そっかっ。


 そっか~。



 ちょっとだけだけど、分かっちゃったかな。



 小さな世界。


 でも火傷しないくらいに、ほんのり、じんわり温かい。


 それがあの子の愛している世界なんだなって。


 その手にあるもので、満足しちゃえるようなそんな人なんだなって。


 だから私は、あの子が降らせた温かい雨の下で、にんまり。


 あの子の優しい世界の中に、私が入っててよかったな。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 『自分の手の届く範囲にだけ幸せをもたらす』って、何だか身の丈に合った幸福という感じですね。温かい雨、確かに気持ちよさそうです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ