はじまりは
人ならざる者、魔女が見守る大国がある。その国の侯爵家には、時折呪いを持つ者が現れるという。
遠い昔の先祖が犯した罪により、今なお続く呪いの鎖は切れることなく脈々と続き、その度に呪われた者を不幸へ誘うという。
その呪いは純粋な故に強力であり、発動の条件が限定的過ぎて呪いを避けるのは難しい。
最初に呪われた者達が聞いたという解放の条件はとても単純で、それ故に困難である。
呪いの具体的な内容を知るのは、呪いを持つ当事者とそれに連なる一族の者。
そして王のみ。呪いの内容を他に知ってはいけない。他に知るものが現れれば、この国は滅びる。
語り継がれるお伽噺だと笑い飛ばすような内容に、歴代の王や一族の者は笑うが、忘れた頃に現れる呪いを持つ者を見るたび恐れを抱く。
この呪いは本当に純粋な想い。
シンプルだからこそ恐ろしく、シンプルだからこそ難解。
これは想いを軽く見たツケ、心から悔いても全ては遅い。
この呪いを生み出した女はもう朽ち果て、この怨嗟の念を消化することは不可能。
ある日ふらりと城へ姿を見せた魔女はこう告げたとされる。
この呪いはとても悲しく美しく恐ろしいが、人が作り呪いなだけにとても脆い。
しかし、それではあまりにもあの女が哀れだ。だから、私が叶えてやることにした。
永遠を生きる魔女達の良い暇つぶしになろう。そのためにはルールを作らねば。
呪いを解く方法を教えてやる。変わりにこのことを口外することを禁じよう。
もし、破ればこの国は魔女達によって滅ぼされるであろう。なに、この呪いを解くために
足掻くが良い人間よ。その間は大事な余興の舞台だ。私達がこの国を見守ってやろう。
脆弱な人間共は互いを蹴落とし、互いを食い物とする。
弱き者と弱きの者のなんと滑稽なものか。のう?そうは思わぬか?
魔女はニタリと嗤うと、青ざめるばかり人間を見つめ、
くれぐれも邪魔をしてくれるなよ、と釘を刺したという…。