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5. 辺境伯の休日 -オーキッドサイドー

本日2話目です。

お間違えの無いように。

 久し振りの休日。

 最近はずっと忙しくしていたせいか、起きるのがいつもより遅くなってしまった。折角の休日に、いつまでもベッドにいるのは勿体ないね。


「さて、今日は何をしようか」


 私は勢いよくベッドから立ち上がった。





「オーキッド様。ゆっくりできましたか?」


 呼び鈴を聞いてメイド達が入って来る。ここは王都にあるパルマン家のタウンハウスだ。


「ああ。よく眠れたから気分は良いね。今日は一日ゆっくりできるよ。ルイとカーンはどうしている?」


 ティーテーブルにお茶をセットしている彼女らに尋ねると、軽快なノック音が聞こえた。返事をすると、本人が顔を出した。


「おはよう、オーキッド。漸く起きたね? ゆっくりさせてあげたいけど、領地からの書類やら何やらが溢れそうだよ。執務室に運んであるから片付けてって。聞いてる?オーキッド」


 爽やかに登場したルイだけど、気持ちの萎える事を言っている。


「あぁあああ。見たくないんだけど。山積みなんでしょ? 今日は気分じゃないからヤダ」


 折角のお休みが、いつもと変わらないじゃないか。


「何言ってんの。ご領主様。私も手伝うから遣ってしまおう? 明日にはカーンがパルマン領に行くんでしょ? 遅れたら可哀そうだよ」


 私が王都で学術都市計画の仕事をさせられているから、定期的にパルマン領と連絡を取る必要があった。優秀な従者のお陰で領地の方は何とか廻っているけど、連絡はこまめに取り合う必要があるよね。


「そうか、今度はカーンの番か。あいつを遊ばせる時間は勿体ないな。判ったよ、食事をしたら仕事をしよう」


 ルイにもお茶を薦めて香りをゆっくりと吸い込んだ。良い香りに胸の奥からリフレッシュする。

 うん。今日は良い事が起こりそうな気がするね。






「ナニこれ」


 執務室の机の上には沢山の手紙と、良く判らない届け物に書類の入った伝令箱が山積みになっていた。


「まあ、仕方ないんじゃない? 一応執事殿が分けてくれてあるみたいだから、こっちの山から片付けて行こうよ。私が封を開けて良ければ開けて貴方に渡すけど」


 封を開くのも一苦労だ。ルイは手際よく手紙の封を開けて重要案件ごとに並べてくれている。ちらりとその様子を見てから、私は領地の報告書を読み始めた。


 付き合ってくれるルイに感謝だね。






 数時間して、粗方の書類が片付き手紙達にも目を通して返事も書いた。肩がこりこりに固まったような気がした。


「さて、あとはこの包みだけど---」


 ルイがワゴンに乗った最後の包みを手に取った。


「何それ? どこからだい」


 見覚えの無い包みだ。青緑色の厚手の紙に包まれた小包。少し薄めだが箱の様な四角い長方形だ。


「どこからだろう。送り主の所にはD・Dとしか書かれていないよ。それに、宛名がここの住所しか書かれていない。誰宛てなんだろう」


 ルイも表裏をひっくり返しながら観察していた。D・D? うーん。送り主に覚えは無いけど。


「貴方は覚えが無いの? 結構上等な包み紙だね。中は……本? かな? 開けて良いんだろうか?」


 この屋敷にいる者宛てなんだろうけど、宛名が書いていないんじゃ判らない。でも、もしかしたら中に手紙でも入っているかもしれない。


「仕方ないね。開けてみよう。私でも君でも無いとすれば、後は限られているからね」


 綺麗な青緑色の包み紙を慎重に開けていく。


 丁寧に薄紙に包まれた本? らしき物が現れた。


「ああ、やっぱり本みたいだ。オーキッド、やっぱり覚えがない?」


 薄紙を開いて中身を取り出した。それは普通の本より少し大きくて薄い本だった。


「何てタイトル?」


 ルイの座っているソファの隣に腰を掛けた。どこかに注文していたっけか。そんな事を思いながら。




 ルイの手元を覗き込んで、何かデジャブった。このシチュ最近経験した様な気がする。この角度でこの手の本を覗き込んだ記憶が蘇った。確かあの時は、深緑の布張りの本だった気がするが。


 でも、今回は上品な墨色の布張りの本だ。

 多分、ルイも同じように感じたのだろう。二人同時に表紙のタイトルを読み上げた。



「「辺境伯と宰相は古城の仮面舞踏会で愛を語るぅ---?」」



 聞き覚えのある韻を踏んだタイトルに、ルイの目がちらりと私を見た。


 まさか。まさかね?





 小一時間後、私はソファアに脱力して突っ伏し、ルイはそんな私から少し距離を置いて座っている。


 どういう事!? コレはもしかしなくても、私がモデルなのか!?

 見開きページには、主役の一人、オーランド・ヴィスタ・バルモンド辺境伯。黒髪隻眼の彼が、金髪の宰相サマの仮面を外してやる官能的な場面が描かれてあった。


 確かに隻眼の眼帯を着けているが、このオーランドという登場人物は私じゃないの!? そして、この宰相は、以前見たクラウス殿がモデルじゃないの!?





「オーキッド。これって、貴方ですよね?」


 ルイがほんの少し何かを含んだ口調で言った。



 君、面白がってるだろう!!









ブックマーク、誤字脱字報告ありがとうございます。

感想なども頂けると嬉しいです。

評価ボタンの☆も頂けると、頑張るパワーになります。


なんと、オーキッド様が新シリーズ『辺境伯編』を

読んでしまいました。

まさかの本人バレです。一体誰が注文しているんでしょうか?


次話、オーキッドさんとカレンさんがある場所で再会します。


もう少し続きそうです。


楽しんで頂けたら嬉しいです。



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