避難する
説明を後回しにして、塔に連れて行ったのよ。
そうしたら、扉の横に新たな手形が浮かんだの。
「ここに手を当てて下さい」
何もない迷路の隅っこで、いったい何を言っているのか? と言う顔をしていたわ。
それはそうか。
エリュミラード様の時も、勝手にムーが合わせたんだった。
もう、面倒くさくなって、自分で選んでもらう事にしたのよ。
「私を信じるか、自分の運命を信じるのか選ぶといいわ」
私は、着いてきたクリンとコロンを塔の中に入れたわ。
突然消えた犬に驚いているわね。
どっちにしろ、ここを突き止められて、何の関係もないムーが迷惑を被るんだわ。
しばらくこの塔に隠れて、助けを呼ぶ事にしよう。
伝書梟や番犬は物扱いだから、ムーが持って入れば塔に入れる事が出来るけど、人はそうはいかないのよね。
家の中の物は、ゼラニーがお金に替えたのか、ほとんど何も残ってなかったわ。
ただ、レプトからの手紙が床に落ちていた。
それを拾ってから塔に戻ると、前には、考え込むテナーが立ち続けていた。
「どうするか決めました?」
「自分は、何も話さないのに、ここまで親切にしてくれたムー、君を信じるよ」
「そう。なら、手を貸して下さる?」
テナーは、それでも恐る恐る手を差し出したわ。
それを、形に当てれば、ようやく塔の姿が見えたみたい。
「さあ、早く入って!」
一度目を瞑ってから、顔を上げたテナーは、吹っ切れたように入ってくれたのよ。
ミニゲームは無視して、小屋に案内したわ。
ああ、やっと安心して寛げるわ。




