国花
「これを何処で手に入れた?」
グイッと引き寄せられて、ムーちゃんドキドキです。
しかも、真剣な顔しているのよ。
「痛いわ」
「ああ、済まない」
まだ、何か言い足りない顔をしている。
「これは、大好きな人からの手紙に入っていた物よ。何の花なのか知っているの?」
今度はムーが、真っ直ぐに見詰めてやったのよ。
すると、見えたのは、喜怒哀楽の数値がぐちゃぐちゃと定まらない思考だったの。
「私的な事を訊くつもりはなかったんだ、許せ」
とっても偉そうだわ。
「その花は、この国の花でロベリアと言う」
「国の花なの? 素敵!」
ムーはこの花の事がわかってちょっと嬉しくなっちゃった。
「その花は、主に婚約者に贈る花だ」
うそ、ウソ、嘘!
じゃあ、ずっとそう想っていてくれたんだわ。
ムーは、過去の事なのに嬉しくて仕方なかったの。
「ムーのような素敵な女性の婚約者なら、素晴らしい男性なんだろうな」
つい、浮かれて余計な事を言ってしまったの。
「ええ、若くして、皇太子様の近衛騎士に選ばれたのよ」
皇太子と言った時に、微かに動揺したテナー。
「近衛騎士……それは、本当なのか?」
「うん。五年前まではそうだったわ」
「五年前?」
で、結局要らない事を話してしまったのよ。
流れから、バルロ伯爵との一件も話したの。
だから、今度は貴方の番よって言ってあげたのよ。




