決着
「アデリア、今まで稼いだお金を何処に隠したの?」
黙っていたアミールの赤い瞳がムーを射ぬいたわ。
怒りがマックスになっていて、ムーちゃんはドン引きです。
ゼラニーを潜り込ませて、ムーの居ない間に財産を盗るつもりだったのね。
恐っ!
大事な物は、全部塔の中に入れてあるから見つけられなかったんだわ。
それで、ムーを誘拐か……。
キラリと突然光ったアミールの髪飾り。
サファイアの藍が、在りし日の優しいお母様の瞳を思い出させて、唐突に怒りのオーラに包まれたわ。
「伯爵の妻を殺し、娘を追い出した先がこの素敵なお屋敷ですもの、ご満足いただけたかしらバルロ伯爵夫人」
誰かがのり移ったみたいに、攻撃的な物言いをしてしまったの。
ハッとして隙が出来たアミールの瞳から、映像が流れてきたわ。
一つは、母ミラベルのお茶に赤黒い液体を入れる映像。もう一つは、その液体をゼラニーに渡すところだった。
「ああ、私にも飲ませようとしたのね。でも、ゼラニーの料理が不味すぎて、私が吐き出してしまったから失敗してしまった」
「ば、馬鹿な言いがかりつけないでちょうだい。何の証拠があると言うの!」
バルロ伯爵がアミールを訝しげに見ていたから、更に続けた。
「あなた、娘に侮辱されたわ。何とか言ってちょうだい」
「もう、跡継ぎも出来たから、次は、バルロ伯爵の番なのね。だって、髪は白茶けて頬がこけて、顔色も相当悪いものね」
「何を馬鹿な事を! お父様、この娘の口を塞いでしまって!」
取り乱すアミールに、不信感をいだいたバルロ伯爵。
馭者の男がムーに猿ぐつわをしようとしたけど、ミニゲームに格闘が入っていて、かなり苦労して習得したから、ナイフを持っていない男なんて簡単にノックアウトよ。
驚く皆の前で、逆に縛り上げちゃったわ。
形勢逆転して不利になったからか、バルロ伯爵側が大人しくなってしまったのよ。
「アデリア、頼むよ。幾らかお金が必要なんだ」
バルロ伯爵が態度を変えて懇願してきたわ。
ムーは、しばらく考えてからこう言ってあげた。
「二度と関わらないと約束してくれたら、お金を届けさせてもいいわ」
アミールとゼラニーが何かわめいていたけど、関係ないわね。
伯爵もかなり困っているのか、それで良いと言ってくれたので、正式な契約書をかわしてから渡す事に決めたのよ。