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先生の出産

 それからすぐに訪問者があって、番犬が騒ぐから行ってみたら、迷宮の垣根にお腹をすかせて倒れていたのよ。


 十三才ぐらいの少女だったわ。


 「ダンデラ商から頼まれてきたゼラニーです。垣根が邪魔してさ迷ってしまいました。えへへ、宜しくね」


 前髪の長い、何だかとてもくだけた女の子です。


 「お腹がすきました。何か食べさせて下さい」


 ちょっと驚いたけど、ムーが作った食事を食べさせてあげたわ。


 それにしても困ったわ。


 やっぱり断りたいのだけれど、どうしたらいいのかしら? だって、ムーの家に誰も入れる気持ちはなかったんだもの。


 何も言えないまま、空いている部屋に居すわられてしまったわ。


 仕方がないので、お掃除をお願いしたの。


 料理は、お世辞にも美味しくなくて、最初は吐き出してしまったくらいよ。


 犬もなつかないから、掃除ぐらいしかお願いする事がなかったわ。






 何日かして、隣りの領に住むレモングラス先生の家にお祝いに行ったの。


 三人目の子供が生まれたのよ。


 沢山のお土産を用意して、ゼラニーに留守番を頼んで出掛けたの。


 半年前からの予定で、手伝いに行く事にしていたの。


 とても楽しみだったけど、今は……。


 近くの乗り合い馬車に乗ってのんびり向かったのよ。


 それで、ジャコフさんのお店は、すぐにわかったわ。


 こじんまりしていたけれど、地域に溶け込んでいて、とっても繁盛していたんですもの。


 迎えてくれた先生は、変わらず美しくて優しい母親になっていたわ。


 ムーを見ると、ベッドの上からギュウギュウ抱き締めてくれたの。


 色々あったから、ムーは胸が一杯になって、ちょっぴり涙出ちゃった。


 うふふ。まだまだ子供よね。


 先生は、涙を指で払ってくれたの。


 「ムーちゃんは、本当に綺麗になったわね。もう立派な淑女ね」


 って、やつれたお顔で微笑まれた。


 子育てしながら、出産とお店で大変だったのでしょう。


 手伝いに来て良かったわ。


 「先生、一週間ほどおりますから、なんでも頼んで下さいね」


 ムーが鼻息荒くいったら、笑われてしまった。


 「会えて本当に嬉しいのよ。でも、少し頼めるかしら? 思ったより疲れがたまっていたみたい」


 本当に顔色が良くないわ。


 「任せて下さい」


 そう言って、先生を寝かせて上掛けを掛けてあげたわ。

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