あれから……
不透明なまま、更に五年が過ぎてしまい、バルロ伯爵には子供が生まれたようです。
ずっと、ムーのところに手紙が届いていたけど、開封しないまま全て焼いてしまったわ。
それで、生まれたのが男の子だったから、もう手紙は来ないわね。
ムーは外の世界に全く興味がなかったから、塔を往復する毎日を送っていたの。
だけど、私が十才の時にレモングラス先生が商人のジャコフさんと結婚してしまい、お目出度い事だけど、ムーにはとても淋しかったのよ。
先生とジャコフさんは今、隣りの領でお店を開いて暮らしているの。
子供がすぐに生まれて、幸せだって手紙が届いたわ。
ムーは、本音を言えばついていきたかったのよ。
でもね、エリュミラード様が頑張っていたから、ムーも頑張ってここで待つことにしたの。
エリュミラード様は、騎士学校を卒業してから皇太子様の近衛騎士に推薦されて、もう三年になるかしら。
今度のことで、ムーとの婚約話しも立ち消えてしまったみたい。
仕方ないわ。最近では、お忙しいみたいで手紙もあまり届かなくなってしまっていたから、諦めもつくと言うものよ。
転生しても、精神年齢は変わらないみたいで(見た目と)、今、やっと、他人に依存していたらちっとも楽しくない人生になるなと、勇気が出たところだもの。
それだから、ムーもお屋敷で働くの。
変わらず同じ場所に住まわせてくれるようだから、恵まれているわね。
それで、ムーの仕事は、お屋敷で出る縫い物をこなす、お針こさんなのよ。
それで、お給金を貯めたら、レモングラス先生の近所に住もうかと思うの。
そして、先生の子供達に教えるの。なんだか、楽しそうでしょう?
よし、これからは、自分の為に生きるのよ。




