エリュミラード様の家
ムーは、エリュミラード様の事を良く知らない。
勿論、人となりは知っているわよ。
対決したユリアナ様が、一人娘と言っていたから気にはなっていたの。
大公公爵様の広大なお屋敷は、日本銀行の建物みたいにコの字型の後ろにまた一棟か二棟建っているのよ。
ムーが居るのは、西側の使用人棟と本棟の丁度繋ぎ部分よ。
エリュミラード様が住んでいるのが、本棟の裏側だから近いのね。
ピエナ姫は、大公公爵様の唯一の娘だから、それはもう大切にされていて、ある時、お誕生会に招待された劇団の役者の一人、(今の旦那様)と恋に落ちて結婚されたから爵位はないみたいだわ。
他に、三人のお兄さんがいるのと、その子供が男女合わせて十人以上いて、大公を継ぐのが長男だとしたら、公爵は次男でしょう?
エリュミラード様のところまでとても無理よね。
成る程。
だから、私に爵位が必要なのね。
うーん、やっぱり私が爵位を譲られないと困るのか。
でも、アミールとの子供が出来て、それが男の子であったら、私に継承権はなくなると。
だから、大公公爵様は、今すぐ破滅させたいに違いない。
バルロ伯爵を。
どうしよう。自分の運命なのに、酷く面倒くさい。
でも、無理に戻そうとせずに、守るなんて言ってくれたエリュミラード様に報いてあげたい気もする。
これが、恋する乙女の気持ちなのね。
こんなに重くて、自分一人でどうにか出来そうもない現実……ムーは、ムーは、ただ、怠惰な生活がしたいだけなのに……うっうっ。
それで、レモングラス先生に質問してみたのよ。
爵位ってどうやって貰うのか。
女性には無理ですって。
だけど、そもそも爵位は必要なのかな?
ムーちゃんを飼うだけなら領民で十分だけど、ピエナ姫は無理よね。
そうか! バルロ伯爵から買えばいいんだ。爵位を。
いや、駄目だ。未成年のお金は、親のものじゃないかな?
ムーがぐるぐる考えているうちに、運命は意外な方向に向かうのだった。




