鳥がくるくる
家から出された……。
出された。
出された。
私を、世界一可愛いと言ってくれたお母様はいなくて、お父様に汚いケダモノと言われたの。
ペコペコしていた門番にまで、何処かに行っちまえって蹴られた……。
塀を伝って歩いたけど、蹴られた足がジンジンする。それから、お父様に捨てられたことが、悲しくて悲鳴をあげそうなの。
もう、私は、要らないんだ。
要らないんだ。
要らないんだ。
そうだ、世界一可愛いと言ってくれたお母様を追いかけようか。
前に、木から落ちた庭師が頭を打って死んでしまった事があった。葉が揺れてるように見えた番犬が吠えたから、驚いて落ちちゃったの。
それで、私は、すがる様にその硬い塀におもいきり頭をぶつけてみた。
ガツッ。
くー~っ、鳥が飛んでいる。
私の周囲をぐるぐるぐるぐる。
「ハッ!」
「あ、イタタタタ」
右の頭部が酷く痛い。
痛くて起き上がれない。
それでも、そーっと目を開けて辺りをみれば、藁を敷いた小屋のようなところに寝かされて、手当てされていた。
この時、私の名前は、柴尾 さくら 地球人だった事を思い出した。
リアルなプ~ンと漂うあの臭いで、夢ではなく、自分が転生してここに居る事を実感したわ。
「大丈夫かね?」
モジャ髯で、顔のパーツがどこにあるのかわからない御仁が小屋に入ってきた。
もう、色々な事が面倒だったから、動物として可愛いがられて生きる事にしようと、その時思ったの。
だから、返事は「ムームー」と、感謝を込めて鳴いたわ。
「おや? わしは、獣を拾ったのかね? しかし、ムームー鳴く獣なんぞ知らんなあ」
暫く、何か考えていたようだけど、お水とお薬を飲ませて寝かせてくれました。
良かった。これからは、このおじいさんのペットになろう。
「ふわあ~あ」
薬が効いてきて、私はそのまま寝てしまいました。