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「じいちゃんを轢いたのも、その後電車に轢かれたのも、事故だった。そうだろ?」
季実香が人を傷つけるようなことをする奴だとは絶対に思わない。自殺をする理由も俺には思い当たらない。だけど偶然にしては出来過ぎていた。
みんなそれを感じていた。だからきっと口に出さなくなった。わからないことは途轍もなく怖いから。知らなくていいことを知ってしまったら、もう戻れないから。
だからこそ俺は確かめたかった。そして、季実香は何も悪くない、あれはただの事故だった、と大手を振って言いたかった。誰も聞いていなくても、俺は言いたかった。
けれど欲しい答えは返ってこなかった。
「事故じゃないよ。じいちゃんを轢いたのも、私が轢かれたのも」