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これがもう3か月前のことだ。季節はとっくに冬になってしまった。
どれだけ実感がなくても日々は過ぎていった。季実香のことは事故として処理された。葬式は親類だけで行われ、友達も近所の人もお別れを言うことすらできなかった。
初めは、自殺だとか、じいちゃんを殺そうとしたんじゃないかとか、両親が鬼籍であることを持ち出す奴までいた。
だけど季実香に一度でも関わったことのある人たちは、あいつがどれだけ根が善良で、どれだけ真っ直ぐで、どれだけ他人思いの人間かを知っていた。だから馬鹿げた噂は3日と持たなかった。
ただそれきり、季実香のことを話題にする人はほとんどいなくなった。
今はもうみんな、季実香がいないことが日常になってしまった。
佐々木さんも毎日普通に学校に来て、毎日普通に友達と笑っている。母さんも前はきみちゃん、きみちゃん、とあいつの話ばかりだったのに、もう口にしなくなっていた。
俺も結局同じだ。だけどどこかで、あいつはまだ生きていて、突然、たっだいまぁとかなんとか言って帰ってくるんじゃないかとまだ思っている。死んでいるわけがないと思ってしまう。
みんな、そうなのかもしれない。