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 宙に浮いたような気分のまま俺は家に帰った。


 家の周りにはこの辺では見たことのない人がちらほら見られた。警察の人もいたと思う。


 いつもならその時間は仕事をしている母さんも家にいた。ただいまと声をかけると、お帰りと反射で浮かべたような薄い笑顔が返ってきた。母さんは何についてとも言わず、言った。


「聞いた?」


「うん」


「そう」


 ついていたテレビドラマの音だけが部屋に響いていた。俺はすぐには部屋に行かず、母さんの隣に座ってドラマを見た。普段だったら絶対見ない恋愛ものだった。甘ったるくて吐き気のしそうなことばかり言っていた気がするが、その時はあまり気にならなかった。

 最後の方に、季実香の好きな俳優が出てきた。俺には良さがわからなかったけれど、ワイルドでかっこいいとよく言っていた。

 母さんが突然口を開いた。


「きみちゃんこの俳優さん好きだったよね」


「好きだね」


 それで会話は途切れた。しかし少しの沈黙の後、母さんが言った。


「事故か自殺かまだわからないって。あと途中でおじいさんのこと轢いたらしいの、きみちゃん。あそこおじいさんの散歩コースだったでしょ。それが偶然かもまだわからないって。それはそうと晩御飯何がいい」


 最後の部分をわざと明るく言っているのがわかった。それまでの話をかき消すみたいに。


「オムライスかな」


 俺が言うと、好きだったもんねと母さんは独り言のように呟いて立ち上がった。

 気づくとドラマはエンディングだった。季実香の好きな俳優が笑っていた。





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