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「えー。紀原くん。25日休みとるの?」
「お昼だけですけど」
「信じられない。私もとりたい」
「とればいいじゃないですか?」
俺は自分に絡む三木本先輩にそう返す。
「彼がとらないから、私もとらないの。まあ、クリスマス楽しんでよね」
俺の返しにむっとした先輩はそう言い放つと席に戻った。
どういうわけか、俺は彼女に好かれていない。
前は実田先輩のことかと思ったんだが、それだけじゃないらしい。
ま、どうでもいいけど。
俺は基本的に女の言うことはどうでもいい。
関心がない。
世の中男だけになればいいのに。
「紀原くん、もしかしてパーティーのために休み取るの?」
「はい」
「……そんなに頑張らなくてもいいと思うけど」
「いや、でも灘さんは1日休み取るって言ってましたよ」
「あいつはいいの。そういうの好きだから。まあ。ほどほどに付き合ってやってくれよな」
実田先輩は俺の言葉に苦笑していたが、俺は明日のイブの午後に休みを取りつけた。
何、やってるのか。
俺もふと思う。
だが、俺は約束を果たす男だ。だから、ケーキは作る。それだけ。他意はないんだから。
しかしちらっとブッシュドノエルの話を嬉しそうにした灘さんの笑顔を思い出し、心が揺れる。
気のせいだ、気のせい。
好みじゃないんだから。