表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【BL】彼の攻略方法  作者: ありま氷炎
きっかけはクリスマス
3/10

「すげぇ。お菓子作り専門店みたいだ」


 俺のアパートに入り、台所を見た灘さんが溜息をつく。

 俺にとっては普通だが、ホームベーカーリーとか、ケーキの型とかが家にあるのは驚きらしい。


「忠史……。ブッシュドノエルとか作れる?」

「え、まあ。サンタの砂糖菓子とかは無理ですけど」

「じゃ、ブッシュドノエル作って!俺、アレ大好きなんだよなあ」


 灘さんは子供みたいに笑う。

 それがなんだか可愛いと思ってしまい、俺ははっと苦い顔になる。


 男だったら誰でもいいわけじゃないんだ。

 俺は!


「灘さんの家にはオーブンありますよね?」

「うん。天板だっけ?それも付いてるよ」

「だったら、クッキングシートを引けばOKっかあ。あとは」


 俺はがさごそとケーキ作りに必要な道具を探す。

 材料も買わないと……


「ケーキの材料買わないとやばいよな。どこか行きたい店ある?」

「あります」 


 連れて行ってもらえるなら、粉とか生クリームとかいいものが揃っている店に行きたい。

 俺はそう思い、灘さんに連れていったもらうことにした。


「………やばいな。この店」

「そうですよね。俺、一人で行ってきますから」


 女の目線なんてどうでもいい、俺はその店の前で足をすくませた灘さんにそう言った。お菓子作りの店らしく、客層は女性だけ、しかも店内はピンクだった。

 俺は俺を好奇の目でみる女たちを無視して、自分の必要なものを探していく。

 灘さんを待たせるわけにもいかないし、手際良く。


「すげぇ」


 しかし、久々にきたその店で使い勝手がよさそうな道具をみてしまい、俺は時間を忘れてしまった。


「……忠史。探し物見つかった?」


 ぼそってそう声が聞こえ、俺ははっと我に変える。

 側にいたのはちょっと顔を赤くした灘さんで、俺はいつもと違う彼の様子に気を取られた。


「悪いけど、やっぱりきついな。この店。俺、近くの喫茶店で待ってるから。終わったら電話して」

「あ、もう終わります。会計しますからちょっと待っててください」


 俺は買い物籠を抱えるとレジに走る。

 

 いや、灘さんでもあんな顔するんだな。

 やっぱり女ばかりの店だから恥ずかしいんだ。


 ちょっと可愛かったかも。

 イヤイヤ、おかしなことを考えちゃだめだ。

 どう考えても好みじゃないんだから!


「お待たせしました」 


 俺は買い物袋を抱え、店の前で待っていた灘さんに頭を下げる。


「面白いものあったんだ?」


 すっかり元の灘さんに戻った様子で、彼はひょいと袋を一つかっさらう。


「いいですよ。俺が持ちます」

「いいって」


 彼はそう言うとてくてくと、駐車場に歩いて行った。



「………」


 買い物を全て終え、灘さんの家に戻ったのは5時近くだった。


「疲れた?もう5時だよなあ。腹減った?何か食べて行く?」


 彼は冷蔵庫に食料品を入れながら、そう聞く。


「いや、いいですよ。俺適当に食べますから」


 なんだか、これ以上一緒にいない方がいいような気がして俺はそう答えた。


「あ、でも二人分作るのも一人分作るのも一緒だから食べていけば?酒飲むから帰りは送れないけど」


 灘さんにそう言われ、夕飯を共にすることになった。


「うまい」

「そう?よかった」


 灘さんの料理は本人が好きなだけあって美味しかった。

 これはクリスマスは期待できそうだ。

 そうだ、俺も頑張ってケーキ作んなきゃなあ。焼いて冷やしたりだから、昼から休みを取るか。っていうか、それなら自宅で作って運んだ方がよそうだ。


「灘さん。やっぱり俺、家でケーキ作って持ってきますよ。結構作るの時間かかりそうだから、家で作った方がいいかもしんないですし」

「何時から作るの?」

「えっと、多分3時くらい」

「だったらうちに3時くらいにくれば。俺25日は休みを取ること決めたし」

「休み?!」

「うん。なんかさあ、色々作ろうと思ったら休み取った方がいいと思ってさあ。去年はほとんど持ち込みだったけど、今年は作るからさ」


 休みって、やっぱり灘さん。ちょっとおかしいかも。 

 しかも休みとるなら、ケーキとか余裕で買えるんじゃ……

 ま、いいか。作るの好きだし。

 作ることに対して自分が楽しんでるのがわかり、なんだか苦笑してしまう。

 好きな人のために作るわけでもないのにな。


「やっぱりおかしいか。男だけのパーティー。しかも俺達4人だしな」


 灘さんは俺の苦笑にちょっと恥ずかしそうに笑う。


 なんか、これって照れてるのか?

 ……もしかして、灘さん。

 俺のこと好き?


 俺はふいにそんなことを思う。

 だって普通は男同志のパーティーでそんな大がかりなことしないし、ましては料理のために休むなんて。


「何?」


 俺がじっと見ていたのを不思議がり、灘さんが尋ねる。


「灘さん……」


 聞いてどうする。 

 もし彼が俺のこと好きでも彼は俺の対象外だ。

 

 聞けるわけない。


「ごちそうさまでした。俺、もう帰りますね。25日、3時くらいにまた来ますから」


 俺は自分が使っていた食器を持つと台所のシンクに入れる。


「ああ、俺が後で洗うから。置いといて」

「じゃ、遠慮なく」


 俺は鞄を掴むと玄関へ歩き出す。その後を灘さんがてくてくと付いてきた。


「今日は買い物に付き合ってくれてありがとう。楽しかった。またな!」


 玄関で手をひらひらと振られ、俺はなんだか少し悲しくなる。


「こちらこそ楽しかったです。夕飯も美味しかったです。ご馳走様でした」


 しかし俺は自分のおかしな気持ちを振り払うと頭を下げ、玄関のドアを開けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ