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目覚ましの彼方に。

作者: S.S

俺は朝起きることが人一倍苦手だ。

今まで様々な目覚まし時計を試してきたがいずれも上手くはいかなかった。

先月、スマホのアラームが鳴った際には気づくと本体を壁に投げつけ、

買ったばかりだというのに液晶が無残にも粉々になっていた。

まだ24回の本体分割払いが残っているというのに俺はなんてことをしてしまったのだろう。


昔からアラームが鳴ると

「どうして人間様が機械に起こされなくてはいかんのか」

と安眠を妨げる目覚まし時計を反射的に破壊してしまう悪い癖があるのだ。

もういい加減、こんなことではいけない。目覚ましに頼らないようにしたい。


俺は“絶対に起きることのできる目覚まし時計”の案をアメリカに発注し、

それがついに完成したのである。これはあまりにも危険なアイテムだ。

名付けて「送金中」

鳴り出すと「1秒ごとに100円が自分の口座から勤め先の会社へ送金される!

労働時間がムダになってしまうその精神的苦痛を考えれば誰でも起きざるを得ないだろう。

俺はさっそくセッティングを終え、眠りについた。



「ビビビビ!!」サイレンのようなけたたましい音がリビングに鳴り響く。

早く止めねば!目覚まし本体を手に取り、適当にスイッチを押す。しかし音は止まらない。

思い出した・・・。俺は精密ドライバーを出し、裏蓋を外す。

その中にあるスイッチを押し込むとようやく辺りは静寂を取り戻した。


この目覚まし時計は正面のディスプレイが「現在時刻」と「止めるまでに要した時間」を示している。

1分30秒。

9000円。少々痛い出費だが、これだけのスリルがあればどんどん早起きできるようになるだろう。

手ごたえと新たな自分になれる予感を胸に着替えることとしよう。


しかし彼は知らない。製造元が設定を誤り、1秒で1万円送金にしたことを。

月末、預金通帳を見た瞬間、彼はもう目を覚ますことはなくなったそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 内容がまとまっていてなおかつ面白いです。 すごい! [一言] 今後もこのような短編小説を書かれるのであればぜひ見たいです!
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