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神代空乃は良くも悪くも奇怪であった。
彼は物心つく前から自我があり、小学生に上がる頃にはすでに人々の遥か上に立っていた。
彼は他の人が一度しか体験できないことを何度も繰り返してきたのだ。
故に彼は彼を表面的にしか知らぬその他大勢から恐れられた。
人は未知という存在をひどく怖がる。
故に彼らは自らの全てを持ってその未知を覗こうとする。
それが過ちだと知らずに。
彼は人々がいう神という存在であり、世界を真理を知っていた。
愚かな人々はそれを欲し、哀れな人々は世界を失った。
彼は平穏を欲した。
彼の行く先々で彼という未知を奪い合う争いが絶えなかったからだ。
彼は彼らが求める自らのキヲクを消した。....が、それも意味をなさなかった。
争いは終わらなかったのだ。
求めるものが消えても彼らは彼らの敵を殺しつくすまで止まることはなかった。
彼は嘆き呪った。己が運命を、己自身を、全てを。
それから幾星霜を重ねたある日、回り回って人類になっていた。
頭では忘却の彼方に消え去っていたキヲクは身体が魂がしっかり覚えていたのだ。
そして彼らを理解するには彼らになって見るのが良いという結論を出していた。
そんな彼は生を謳歌していた。
過去に何があったかは忘れてしまってはいたが、無意識的に理解していたのだ。
彼には親こそいなかったが自身の生涯を捧げても良いと思えるような部下や仲間がいた。
また社員らと過ごす日々が宝物のように尊く思えた。
彼は永遠とも思える時間の中で、ようやく平穏を手に入れたのだった。
しかし、そんな日々は唐突に終わりを迎えることになった。
突如ある日を境に異界化したのだ。