お勉強です!
こんばんは。オムレツです。
では、どぞ
「ん~なんかいい匂いがします~」
ユーテシアはそう言って、眠そうな目をこすり目を覚ました。
「お、ユティ起きたか!もうすぐご飯だぞ」
ユーテシアはブレイブに話しかけられて、不思議そうに周りを見た。
「あれ?父様、ボク芝生で休憩してたはずなのに、、、もしかししなくてもボク寝ちゃいました?」
「おう、ぐっすりな。それはそれは可愛い寝顔で寝てたぞ」
「か、可愛いは余計です!」
「なんだよ~眠る前みたいに「父様のなでなで気持ちいです~」って甘えてきてもいいんだぞ?」
ブレイブは悪戯っ子のような言い放った。
その瞬間ユーテシアは耳まで真っ赤になってブレイブの発言を止めようとしたが時すでに遅しだった。
「わー!わー!父様!そんなことは言わなくていいです」
「なになに~ユティちゃんがブレイブに甘えてくれたって話?私にも、もっと甘えてくれてもいいのよ?」
「私にも甘えてくださっても結構ですよユーテシア様?」
クレアとメイブも料理の準備が終わったのか料理を運びつつ、話題にのっかてきた。
「母様とメイブまで!もう、この話はこれでお仕舞です。せっかくの料理が冷めてしまいますから早く食べましょう。」
ユーテシアは拗ねながら、早く話題を切り替えるように促した。
「ふふ、それもそうね。さぁ食事にしましょう」
「そうだな」
「そうですね」
クレアとブレイブも賛同したように席に着いた。
グレイス家では、メイドさんも家族の一員なので一緒に食事をするのが決まりなのだ。
「ユティ、今日1日魔法と剣術の両方をしてみたわけだが、どうだった?」
ブレイブはパンを咥えている問いかけた。
「ふぁい?はい。どれもこれも初めてのことでとても楽しかったです!」
ユーテシアはパンを飲みこみながら笑顔を浮かべながら言った。
「そう、それはよかったわ。ブレイブったら少し脳筋なところあるから心配してたのよ」
「ちょっ、クレア!?」
「はい、今日は倒れる寸前まで走らされただけです」
ユーテシアは少し黒い笑みを浮かべながら言った。
それを聞き、クレアはこめかみをぴくぴくさせながらブレイブを見た。
「ブレイブ~?初日はあまり飛ばさないでねって、私いったわよねー?」
「ユティ!?あの時はこれくらい当然ですって言ってたじゃないか」
「はい。確かに言いました。でも、さっきは父様にからかわれましたので仕返しです」
ユーテシアはしてやったりといった顔で得意げな顔だが、対照的にブレイブは汗をぶるぶるかいて青い顔をしている。
「ブレイブ~後で少し話があるから部屋に行きましょうねー」
「いやっその、あれはユティに限界を知ってもらう為であって、決して約束を破ったというわけではなくてだな、」
クレアは顔は笑っているが目が笑っていないままブレイブにそう告げた。
ブレイブも必死に言い訳をするが、苦労むなしく撃沈しようとしていた時、その様子を見ていたユーテシアはさすがに可哀そうに思ったのか助け舟を出した。
「まぁまぁ、母様。確かに父様は約束を破ったかもしれませんが、それはボクのことを思ってのことですし、ボク自身も望んでることなので、その辺で父様を許してあげてください」
「うーん、ユティちゃんがそう言うなら今回は許してあげるわ。ユティちゃんに感謝するのよ?」
「ああ!すまんかった。ちゃんとこれからは約束を守るよ。ユティもありがとな!」
「いえいえ。どういたしましてです」
ユーテシアは曇りのない笑顔だった。
「自分で窮地に追いやり、自分で助けて好感度を上げる。将来ユーテシア様は魔性の方になられるかもしれないですね」
一連の流れを見ていたメイブはそう呟いた。
「ん?メイブ何か言いました?」
「いえ。何も。それよりユーテシア様、今日は魔法も剣術も初日でしたからお疲れでしょう?お勉強は明日からでもいいのですよ?」
メイブはそうユーテシアに問いかけるが、ユーテシアはそれを即座に否定した。
「いえ、初日だからと言って勉強をおろそかにするわけにはいきませんから。それにそういうのは1日休めば、もう1日もう1日といった具合にだらだら行くだけですし。こういうのはメリハリです」
ユーテシアはきっぱりと言い放った。
そう、ユーテシアにとっては1日の気の緩みが後に及ぼす影響というものを痛いほどわかっているのだ。テスト前に、明日やろう、明日やろうと言って、最終的には一夜漬けで痛い目を見る経験を前世で何度繰り返したことか。
「そうですか。では、食事後ユーテシア様の部屋に参りますので準備をしてお待ちください」
「はい、わかりました」
そんなこんなで食事が終わり、今はユーテシアの部屋で勉強が始まろうとしていた。
「まずは、ユーテシア様には算術をやってもらいます。まずはどのようなものかわかっていただくという意味も込めてこれをやってもらいます」
ブレイブはそういい1枚の紙を差し出した。
その紙には問題のようなものが20問ほど書かれていた。
「わかりました。やってみますね」
(さーて、算術ってことは計算するんですよね。どんな問題なんでしょう。ん?これって普通にただの足し算、引き算ですよね?やり方は普通に地球の奴と同じなんですかね?)
ユーテシアはそんなこと考えながらするする問題を解いていき、1分にも満たない時間で答えを埋め、資料の準備をしていたメイブに手渡した。
「な!?もう終わったんですか?もしかして適当に答えを埋めたんじゃあ、、、全問あってますね」
メイブはあまりに早く終わったことに驚き、さらには全問あっていることに信じられないといった表情になった。
「まだ何も教えてないのに何故わかるんですか?それに計算なんて私より早いじゃないですか」
「いやーメイブにもらった教材を昨日少し見たからですかね〜」
(前世でとうに習ったんで楽勝です!とは言えないですよね)
ユーテシアは目を逸らしながら言った。
「そ、そうですか。それはあげた身として嬉しい限りですが、それにしても早すぎるような、、
まぁいいでしょう。本当は、今日は算術の入りの所だけやって終わりにする予定だったのですが、ユーテシア様はもうお出来になるので、今日は歴史について勉強しましょうか」
メイブは少し納言っていない様子だったがすぐに切り替え、提案してきた。
「はい、お願いします」
「では、まず種族について勉強しましょうか」
メイブはそう言って教材を広げた。
「今、この世界には4種類の種族が存在します。1つ目は言うまでもありませんが私たち人族、2つ目は弓矢などを使い狩りを得意とし、さらには特殊な魔法を使うエルフ族、3つ目は身体の能力が優れており獣のような耳や尻尾のあるガウル族、4つ目は魔物に最も近き存在であるイビル族の4種類です」
「おぉ!エルフにガウル族ですか!ケモミミっ子にエルフとは夢が広がりますね!」
ユーテシアは興奮気味みメイブに目を向けた。
「ん?よくわかりませんが、ガウル族はともかくエルフ族に会うのはかなり難しいと思いますよ。エルフ族は基本的に里出ることはありませんし、里は発見されないないように結界が張られていると聞きます。もし会いたいならエルフ族の知り合いを作るしかありませんね」
それを聞きユーテシアは目に見えて落ち込んだ。
「そうなんですか!?ぐぬぬ、、しかしまだボクにはまだガウル族が残っています」
「まだお伝えしていなかったですが、現在この4種族間の関係は良好とは言い難い状態です。それは歴史の話に戻るのですが、約50年ほど前までは領地や資源を争い私たち人族を含めた4種族が戦争を行っていたからなのです。この戦争は『ヘクトール戦争』と呼ばれており、名前にもありますが英雄ヘクトールによって止められるまで10年間も続きました。その後は英雄ヘクトールにより領地、資源は可能な限り均等に分けられました。今では他種族とともに暮らす国があるくらいですから、それがユーテシア様のお父様とお母様が仕えていられた国『ヴァリアス』なのです」
「メイブさんの話を聞いた限りでは他種族との仲は悪くないように思えるのですが、少なくともその『ヴァリアス』という国では」
ユーテシアは不思議そうにメイブに尋ねた。
「そうですね。確かに事実『ヴァリアス』は最も種族間での差別意識が少ない国といえるかもしれんが、全くないというわけではないのです。やはり10年間戦った相手ですから割り切れないものあるのか、差別や見下したような考えが少なからずあるのです。特に貴族などの上流階級の者たちは差別意識が強い傾向があります」
ユーテシアはメイブの話を聞き顔を俯き寂しそうな顔をした。
「差別ですか、、もったいないですね。せっかく4種族もいるのに」
「もったいないですか?」
「ええ、だってみんな違う特性を持った種族が4種族もいるのですから、きっと、もっと楽しい事が出来るはずです。それを種族の違いでだけで受け入れないなんて」
メイブは少しキョトンとし笑った。
「ユーテシア様は英雄ヘクトールの様なことをおっしゃるのですね」
「どーいう事ですか?」
「英雄ヘクトールが戦争を止められた理由は、正義の為などではないのです。彼は「お前ら何時までつまんねー事してんだよ!こんなに世界は広くて綺麗なんだぜ?そんな事ずっと続けて人生過ごすなんてもったいねぇーよ」といいたった1人で半ば強引に戦争を締結させたのです」
英雄ヘクトール。農家に生まれながら、剣と魔法の才能をわずか7歳の時に開花させた。成人後は冒険者となり世界の各地を転々とし数々の偉業を残し、種族問わずに人々を助ける助ける事から戦争を止める以前より『英雄』と呼ばれていた。現在は行方が分かっておらず、また、各地を転々としていると思われている。
「なんて言うか、、豪気な人なのですね」
ユーテシアは感嘆したように息を漏らした。
「ええ。もしかしたらユーテシア様でしたら彼と同じく、皆から尊敬される人になれるかも知れませんね」
「何です急に?」
「いえ、ユーテシア様のそばに居て思うのです。ユーテシア様は5歳と思えないくらい聡明な方で、それでいて広い見解をお持ちですのです。ユーテシア様でしたら他種族とのわだかまりを解消してくれるのではないかと感じるのです」
メイブは胸に手を当て、ユーテシアの目を見ながら言った。とても真剣な顔であり、それがお世辞ではないとユーテシアにはわかった。
「そんな事、、ボクはそんなに大した人間じゃあ...」
(ボクなんて誰かの助けが無くては何も出来ないのに、そんな英雄と同じなんて無理に決まってよね、、)
「ユーテシア様、今はそんな自信を持てというのは無理かも知れません。ですが、覚えておいて下さい。あなたなら出来ると信じている者がいることを」
メイブはユーテシアの両肩を掴み言った。
ユーテシアは1度、目を逸らしたが、向き直り言った。
「メイブ。ボクは、やはり自信はまだ持てません...でも、それでも魔法も剣も勉強も頑張って、貴方の期待に答えられるよう頑張って見せます」
「ふふ、はい。頑張って下さい。もちろん私もサポートさせて頂きますので」
「はい、頼りにしてますよ」
「お任せ下さい。では続きをやって行きましょうか」
「はい!」
こうして2人の勉強は少し遅くまで続けられた。
読んでいただきありがとうございます。