一合 転生?転移?
ゆっくり更新してくので、片手間で見てくれると幸いです!
「いせかいてんせーに抽選で十人が選ばれました。あなたはその中の一人です。おめでとう!」
「...は?」
どこまでも続く真っ暗な部屋にアンティークか何かの椅子が2つにテーブルが1つ、そして目の前にはちっさい女の子にこちらは冴えない男子。
非日常は不意に起きるもので、布団で横になってたら急にこの部屋に呼び出され、突然そんな事を言われたのだ。
「だから、いせかいてんせーしてもらうんです。嬉しいでしょう?なんせ男子高校生の夢ですもんね!」
「すみません、ちょっと状況が飲み込めなくて...伊勢うどんセット...でしたっけ」
「うーん、やっぱいきなりだと混乱しちゃうよね。よし、全神参加ロシアンルーレット大会女神の部優勝者のあたしが優しーく説明してあげよう!」
なんだか物騒な大会を制した女神様がパチン、と指を弾くと真っ暗な空から紙とペンが降ってくる
「よしきた!そんじゃ説明しよっか!」
「あー、はい、お願いします」
「じゃーまずここと私の説明からかな?ここは神の住む世界の客室。そして私が賭博を司る女神のカータ。」
拙い絵でサラサラと神の世界を描く。うわっ、なんだこの下手な絵は...
「聞いてる?えーと君、名前は?」
「半田幸二です。いや、個性的な絵だな...とつい見とれてしまって...」
そう言うと、女神様はへへへ...と照れ笑いを浮かべながら頭を掻きむしった。素直ないい性格だ。
「そ、幸二君ね!時に幸二君、なぜ神が異世界転生をさせるか知ってるかな?」
「いえ。こういうのってトラックに轢かれたり不幸な死を遂げた人がするもんじゃないんですか?可哀相だけど元の世界に蘇らせられないからって感じの。」
「違う違う!不幸な人なんてゴロゴロいるんだから一々相手にしてたらキリないじゃん!」
「まあ、それはそうなんでしょうけど...」
「正解は、マンネリ化の解消!たまには刺激を入れないとあまりのつまらなさに文明が滅んじゃうからね。そこんとこ神様が調整してるってわけ。」
やれやれ、という風に薄い笑いをする神様。落書きだらけの紙を破り捨て、おもむろに食べ始め、咀嚼音を響かせながら話を再開する。
「そんでね、ムチャムチャ、君に転生してもらう世界はね、飽き性な世界でね、ピチャ、ここ十年で五回、別の世界から転生者を送り込んだんだけどすぐマンネリ化しちゃってね...ゴックン、そんで次は君達の世界からってわけ。文明だけは発達してるらしいからね、期待してるよ?」
「...元の生活はどうするんです?」
「あっ、そーだ!異世界転生するんだし、お祝いに一つ能力を授けよう!」
無視したな!露骨に目をそらしたな!
「ここは賭博の女神らしく抽選で決めよっか。ルーレットスタート!」
目の前にチープな電光板が現れ、くるくると回り始める。あれこれと文句を言っていた僕だが、能力を持って転生となるとやはり胸が高鳴る。チートを使ってハーレム...うん、いい。
なんて事を考えている内にピ、ピ、ピ、とルーレットがゆっくりになり...やがて...
「出ましたっ!手から米を出す能力!おめでとー!」
「は?」
「えーとね、特殊効果は...」
「ちょちょちょ、待ってください!流石に米は酷いですって!もっとカッコイイのとか、ないんですか!」
「やー、ごめんね、もう決まっちゃったから!」
「ほんじゃ、転生スタートだね!要所要所で連絡はしてあげるから!さよならっ!」
「待って下さい!せめて!せめて別の特典もおおおおお!!」
そんな僕の抵抗も虚しく視界がぐにゃりと歪んで、意識が遠のいて...落ちた。
目が覚めると山の頂上だった。両手からとめどなく溢れる米を見て、ただ呆然と空を見上げることしかできなかった。それが僕の始まり、米を投げ続ける異世界生活の始まり。