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小隊詰所

拙い文章にお付き合いくださりありがとうございます。

表現など十分に注意しておりますが、誤字・脱字・言い回しのおかしな箇所があれば、ご指摘お願いします。

また、面白いとお感じになれば感想や評価をいただけましたら励みにもなりますのでよろしくお願いします。


 以前にサカキ中佐が予言した通りに完全に溜まり場となった蒼草小隊詰所は、今日も独特のゆるい雰囲気を醸し出している。

 俺は、工兵中隊の要請を受け、部屋の隅にある製図板に向かって、シノブ大尉と新しく建てる司令部の設計図を作っていた。


 俺の横で、いつもの光景となりつつあるが、以前に保護したサリーがお茶の入ったコップを持って、俺の仕事を不思議そうに眺めている。

 なんと、サリーのもう片方の手には手作りのビスケットを持っているのだから驚きだ。

 ここはジャングルの中にあるのだぞ、補給の問題もあり、購買部なんか夢物語の世界にあって、手作りのビスケットがあるには、ワケがある。

 そして、ここが溜まり場となった最大の理由もまさにこれである。


 ここの溜まり場、もとい、詰所の執務室のすぐ横には、簡単なキッチンまである。

 これは完全に俺のミスであった。

 ここを設計した時に参考にしたのが、帝都郊外にあった俺の借家で、その間取りから浴室だけを排除したのだった。

 そのため、ずぼらな俺は、すぐにお茶等用意できるように仕事場の横にキッチンスペースを考えていたのだが、悪乗りした工兵たちが自分たちに都合が良いように書き換え、溜まり場として健全に機能するようなものに仕上がった。


 だから、溜まり場の今の状態が快適になっている。


 その上、溜まり場に集まる連中の一人、最初のジャングル捜索以来の知り合いであるマキアさん(確か昨年入隊した二等兵だったが)、彼女が本当に器用なので驚いた。


 食堂から、きちんと書類を出して分けてもらった、バター、小麦粉、砂糖、牛乳で本当に美味しい手作りのクッキーを焼いてくれる。


 女性の比率の高いこの基地で甘いものが常備されている場所なんて、どうなるかは簡単に予想される。

 まさしく、俺と面識のある女性が全員、それに、一部俺と仲の良い男性がここに遊びに来る。


 基地の整備関連で、営舎や上下水道など人手の要する問題に一定のめどが立ってきて、彼ら特殊大隊の連中にも余裕が出来てきた。


 休憩時間など、完全にここに集まりお茶していく。

 お茶をしながら、これからの基地の整備についてあれこれ意見をくれるので参考になる……????、これ、俺の仕事じゃないな。でもシノブさん率いる中隊の連中はその意見を参考に色々計画を作り、サカキ中佐と相談をしている。


 もう、ここは基地リニューアル計画プロジェクトチームの仕事場となっている。


 そんな賑やかな部屋で、やや肩身の狭い思いをしながら健気に書類仕事をしてくれるマーリンさんたちには頭の下がる思いだ。


 あ、やめてマーリンさん、時折すごい顔をして睨むのは。俺が悪いわけじゃないのだから、え、悪いのは俺?完全に設計段階での判断ミス?しょうがないじゃないですか。俺、小隊の詰所なんて行ったことなどないのだから。それにほら、あそこで仲良くお茶しているのは花園連隊のお偉いさんだぞ?アート少佐とナターシャ少佐だぞ?工兵だけじゃなく帝国の精鋭もここでお茶しているのだから、ここは必要なのだよ。…ごめん諦めて、俺にはどうにもできない。


 俺は睨まれたので、急いで顔を逸らして、製図板に向き合った。

 そこに、今まで新兵たちの訓練をしていた山猫の下士官達がメーリカさんを先頭に入ってきた。


「隊長、小隊長。

 あの新兵ちゃんたち、だいぶ体力がついてきたけれど、この狭い基地の中をただ体力訓練だけだと、もう完全に飽きが来ているよ」

「また、以前のようにお散歩のお仕事でもないのかな。

 上にお願いできない?

 また、街で迷子のおまけが付くともっといいのだけれど」

 山猫さんたちは、入ってくる早々、自分たちのマイカップにお茶を入れ、手にはビスケットを持って、愚痴を言い始めた。


「最近、上から何も言ってこないからな。

 新たなお仕事はないよ。

 それに俺は上に睨まれているようだから、あまり司令部に近づきたくないしな」


「軍に『お散歩』などというふざけた『お仕事』、間違えた…任務はありません。

 少尉といると、軍の常識が壊れていくし、なんだか怖いのですが。少尉、隊の引き締めをしないと隊は維持できなくなりますよ。

 ただでさえ、新兵ばかりになって、今までのように山猫分隊に任せっきりとはいかないのですから、きちんと考えてください」


 いつものように、というか、最近の詰所の件での不満も含め、アプリコットから、久しぶりに強く怒られた。


「そうですね、隊長。

 そろそろ、きちんと鍛えないと、今の状態ではとても任務には出せませんよ。

 どうせ、上から出る任務は無理ばかりだろうから、それが出る前になんとかしないと」

 と今度は、やけに真面目になったメーリカさんも意見してきた。


「実践なんかできないのだから、訓練で補うしかないじゃないか。

 訓練に工夫してみようか」


「え、どうするのですか」


「あ~、だいたいこんな感じの施設を作って、ここをフル装備で駆け抜けるような訓練施設を作るのはどうだろうか?」


 俺が、以前テレビで見たことのある沖縄在日米軍の訓練の様子を思い出して、高い壁を登るのやら、細い平均台のようなところを走るのやらを、簡単な絵を書いて説明した。


 できた絵を見てたら、なんだか「SAS?KE」のようなものにも見えるが、この際気にしない。


「これ、いいかも。

 すぐに作れるのですか」


「シノブ大尉、兵舎を作るときに木を切った場所がかなり空いてますが、そこにこのようなものを作っても大丈夫ですか。

 以前、施設関係は勝手に作っても大丈夫だとシバ中尉が言っていたのですが」


「訓練施設なら大丈夫よ。

 後で私から書類をサカキ中佐に上げておきますから、いいわよ」


「ありがとうございます。

 それじゃ~、早速作るか。


 ログハウスを作るので、お前らも慣れただろ。

 新兵を連れて外に集合だ」


「少尉、今からですか?も~勝手なことばかりして、困ります」


「外の川に近い、そうだな下水処理施設の傍に作るから、ほかの人には影響は出ないよ。

 お前らも、手隙なら手伝ってくれ」


 いつもお小言を頂いているアプリコットは「知りません!!」と言っていたが、ジーナは「この書類が済みましたら、お手伝いに伺います」と、律儀に言ってくれた。

 ちょっと嬉しい。


 最初に、2mくらいの垂直の壁と平均台、ターザンロープを作ってみた。

 みんな、大工仕事に慣れたのかすぐに完成し、早速遊んでみた、もとい、訓練してみた。

 山猫さんたちが最初に挑戦し、その後新兵たちにやらせてみた。


 新兵たちは、こちらの思惑通りというか、予想した通りに苦労していたが、楽しんでいるようで、メーリカさんは、「これ、いいわ」と連発していた。


 どうにか、新兵たちもこれで飽きずに訓練できそうだった。






ここまでお読みいただきありがとうございます

感想、評価、ブックマークを頂けたら幸いです

また、誤字脱字、不適切表現などありましたらご指摘ください。

作文する上で、参考になりますし、何より励みになります。

よろしくお願いします。


追伸

 最近発表されましたネット小説大賞の1次選考に通っていました。

 ネット小説大賞への応募も感想が欲しくてしたことでしたので、正直大変驚いています。

 ひとえにこの作品をお読みいただいている方々のおかげです。

 正直、最初の頃にこの作品を書いていても、本当に面白く読んでもらえるのか不安でした。

 なにせ、ヘタレが始めて書いていることですし、そんな折に感想を頂いたり、評価をいただき励みになり続けることができています。

 これからも、出来うる限り面白い作品になるよう書いていきますので、よろしかったら応援ください。

 

 ありがとうございました。

 



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― 新着の感想 ―
[一言] 20行目付近の その上、だまり場に集まる連中で最初のジャングル捜索依頼知り合いのマキアさん、確か昨年入隊した二等兵だったが、彼女が本当に器用なので驚いた。 の所ですが、「以来」かと。
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