蒼草小隊の増員
蒼草の率いる小隊がようやく、小隊としての人員を確保できそうになります。
規定の規模にはまだ及びませんが、分隊を2つ確保できそうです。
蒼草が入隊の原因となったジーナも小隊に配属になります。
俺たちは、レイラ中佐と別れ、ジーナ率いるチームを率いて、乗ってきた車の前まで来た。
「アプリコットさん、悪いけどみんなをここに呼んできてもらえるかな。
新しい仲間を紹介したいから」
と言って、合流するジーナのチームの構成員の人事資料をアプリコットから受け取った。
彼女は、資料を蒼草に渡し、直ぐにメーリカが哨戒しているところまで走っていった。
「あ…」
走り出すアプリコットを見て、ジーナが思わず声を上げていた。
彼女は、アプリコットと話したそうにしていたが、なかなか機会がなく、また離れていくのを見て思わず声を上げたようだった。
資料を見ながら
「アプリコット准尉は直ぐに戻りますよ。
移動中にいくらでも話す機会はあります。
俺の隊は私語が多いので、普通の会話程度なら大丈夫ですよ。
え~っと?」
「ジーナです。少尉。
ジーナ・トラピスト准尉です。
よろしくお願いします。」
「え!!
もしかして、ジーナさんは、あのトラピスト伯爵のお嬢さんでしたか?
ひょっとして、俺を殴りつけた、あの、お嬢さん?」
「え~!
少尉は、あの時の点検員さんですか?
まだ、生きていたのですね。
良かった。」
どこかで、見た記憶があったが、あの時のお嬢さんでしたか。
あの時は、殴られ、直ぐに記憶が飛び、お嬢さんを見たのは、そのあとの謝罪の時だけだったので、あまり顔を見ていなかったので覚えていない。分からなかったとしてもしょうがない。
多分、彼女も同じだろう。
そのため、今まで何度も顔を見ても分からなかった。
ま~、うじうじ考えてもどうしようもないことだが、よりによって俺の部下になることはないだろ~
やりにくいこと甚だしい。
ん~~??
それにしても、最後の彼女のセリフに、ありがたくない物騒な物が入っていたが?
「生きていた??
どういうこと?」
「この基地に配属される直前に、見送りに来ていた母が教えてくれました。
父が、激怒して、あなたを『殺してやる』と叫んでいたそうです。
それで、無理矢理あなたを軍に入隊させ最前線に送ったと、教えてくれました。
その際に軍関係者があなたの適正を見て
『最前線なら、ま~三日と持たないだろうな。
後方勤務でも、良くて半年持てばいいのでは。
どちらにしても、彼は軍では長く生きられないよ』
と母に教えてくれたそうです。
それを聞いた父は、とても喜んでいたとか」
あまり聞きたくない情報を彼女は教えてくれた。
また、続けて
「それを聞いて、少し心配していました。
もう2度と会えないだろうけど、生きて会えたら、もう一度お詫びしないと、と思っていましたから。父のせいで、あなたにご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
ここであったのも、何かのご縁でしょう。
私にできる限りお守りしますので、生き抜いてください。」
彼女、かなりひどいことを言っているけれど、その自覚がないのだろう。
でも、彼女なりの誠意を感じたので『良し』としよう。
「軍に入った経緯が経緯だけに、とんでもないことは予想できた。
それに、既に今までひどい目に遭ってきた。
ま~頑張って、生きていくよ。」
ジーナと話し込んでいるところに、レイラ中佐がサカキ中佐と幾人かの兵士を連れてやってきた。
「うちの若いので、最新式の無線を扱えるのを連れてきた。
役に立つから、しばらく面倒を見てくれ。
それと、ここまで同乗していた整備担当もそのままよろしく。」
と、突然サカキ中佐が言ってきたので
「???」
としていると、レイラ中佐が、
「この先何があるかわからないので、あなたの隊の強化の為の増員を考えたのよ。
無線兵、整備兵の二人もあなたの隊に配属させるわ。
今回の人事は、調査のための緊急配転のため、帰投まであなたの小隊勤務とします。
正式な小隊編成は、サクラ旅団長が戻り次第きちんと整備します。
増員を含め、小隊内編成は自由に任せますので、無事の帰投を祈ります。」
「分かりました。
心遣い、ありがとうございます。
頑張ってきます。」
俺、今まで立派に社会人をやってきたので、激励にきちんと答えたつもりだったのに、レイラ中佐、サカキ中佐が苦笑いしている。
やっぱり、軍のお偉いさんの対応はアプリコットさんに任せよう。
そうこうしていると、アプリコットがメーリカたちを連れて戻ってきた。
バイク組もすぐそこまで来ていた。
全員が揃ったところで、彼女たちに命令を伝え、出発するとしよう。
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