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【完結】ブラック職場のヘタレがひとり美女に囲まれなぜか戦場に  作者: のらしろ
いざ建国へ

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白旗

 

 地形が攻撃によって完全に変わったこの辺りを過ぎると、途端に歩き易くなる。

 まあ、戦車が通れるルートなのだから当たり前といえば当たり前だ。


 本来なら車両を使って移動もできただろうが、完全に地形を変えてしまったために車両が通ることができたルートは寸断されたのだ。


 俺たちは僅かばかりの装備をもって歩いて移動している。


 体力の無い俺にとってありがたい話だったが、その歩き易いルートも30分でお別れになった。


 このままこのルートを通っていけば目的である敵基地まではいけることになるが、流石に攻撃したばかりの基地に、ほとんど丸腰で向かう気にはなれない。


 俺たちは、前に基地を観察した場所まで向かうために川伝いのルートを離れて険しい山の中に入った。


 とにかくジャングルの中だ。

 一度仲間が通った道だが、獣道にすらなっていないルートをブッシュをかき分け進んでいく。

 これも今まで経験したような平坦な道ならば俺でもどうにかなるが、あの歩き易いルートを外れてからは、険しい山道になっている。


 まあ、遠くから基地が見渡せるような高台まで行くのだから山道を登るのは当たり前だ。


 だが俺にとってその当たり前がとにかくキツイ。


 根を上げそうなのが俺一人なのが気に食わないが、男の意地で何とか付いて行っている。

 気が付くとメーリカ少尉が傍まできて俺に軽口をたたく。

「隊長、きつそうだな。

 大丈夫か。

 何なら俺がおぶろうか」

 勘弁してくれ。

 ジャングルの中だと言っても、女性に背負われての絵面なんか誰得なんだ。

 絵面は別に俺が得するがそんなことはどうでもいい。

 流石に部下に背負われての移動ってまずいでしょ。

 それを横で聞いていたアプリコットが俺を睨んでくる。

 俺が頼んだ訳でないことは分かるよね。

 何で俺のことを睨むのだよ。


「少尉。

 冗談に付き合うだけの余裕が今の俺には無いよ。

 それよりあとどれくらいあるのだ」


「そうだね。

 やっと半分といったところかな」


「なら、ここらあたりで一旦休憩を入れてくれ。

 俺が持たないのは認めるが、ぼちぼち他の兵士たちにも余裕がなくなってきているようだが」


「そうですね。

 隊長がそう言われるのならこの先に休めそうな場所があったからそこで休みを入れましょう」


 絶対にそれを言いたくて俺のところに来たんだろうな。

 こんな時にも俺をいじることを忘れない山猫さんたちって本当にぶれないな。


 程なくして、ちょっとばかり開けた場所に出たので、ここで一旦休憩を入れた。

 休憩後もきつい山道の中を1時間ばかり進んでいく。


 どうにか脱落することなく目的の場所に着くことができた。


 確かにここからなら敵基地を見渡せる。

 なにせ今まで登ってきた山が急に途切れて崖になり、その先にはジャングルが広がっているが、平地になっている。

 その平地のほぼど真ん中に敵共和国が作った基地がある。

 しかも、共和国はかなり手を入れて基地を作っているので、基地の周りの木々は全て切り倒されており、基地周辺だけが草原のようになっている。

 基地の周りおよそ2kmは何もない。


 これは理にかなった造りだ。

 ジャングルに紛れて基地に近づくことができないように作りこんでいるのだ。


 で、俺たちがその基地に対してした攻撃の成果はというと………


「隊長。

 基地の傍にあるクレーターのようなものは何でしょうか」


 こいつは知っていて俺に聞いている。


「見事に外したな」


「しかし3つしかないのは何故でしょうか。

 まさか3発しかここまで届いてないことは無いでしょう」


「いや、一発であんな大穴は開かないでしょ。

 全部同じ場所に着弾したんだろう」


 ここからでもはっきりとわかるように基地手前に3か所の大穴が空いている。

 全くの着弾修正をせずに撃ち続けたので、見事に同じ場所に全弾着弾している様だったのだ。

 しかもかなりの弾数が同じ場所に着弾していたために、一発では考えられないくらいの大穴を基地手前にあけていた。


「しかし、これでは威力偵察にならないよな」

「ええ、見事に全弾外しておりますしね」


 俺とアプリコットの会話を聞いていたキャスター幕僚長が独り言のように話しかけて来た。


「これって、威力攻撃と云うよりも恫喝だな。

 降伏勧告なんて生易しいものでは無く、それこそアウトローが一般人に向かってするような恫喝と変わらないぞ」


 え?

 どういうことだ。

 俺は今まで他人に対して恫喝なんかしたことないぞ。

 モンスター顧客からされたことはそれこそ何度もあるが。


「キャスター幕僚長。

 恫喝とはどういうことですか」

 お、流石のアプリコットも分からなかったらしいが、山猫さんたちにはキャスター幕僚長の意図が伝わっているようで、ニヤニヤしながら俺たちを見守っている。


「アプリコットさん。

 攻撃されている共和国側からどう思ったか考えてもごらんなさい。

 一発二発なら攻撃が外れたとほっとしたことでしょう。

 次の攻撃に備えるくらいはしたでしょうが。

 でも、あなた方は、攻撃の修正をせずに全く同じ場所に対して、しかも相当な数の弾を打ち込んだのでしょう。

 それもかなりに間隔を詰めて」


「ハイ、私はその攻撃を直ぐ傍で監督しておりましたからよく知っております。

 正に、今キャスター幕僚長が言われるように各砲24発の砲弾を最小間隔で撃ち続けさせました」


「なら分かるでしょう。

 あなたならどう考えます。

 こんな攻撃をされたら」


「………」

 アプリコットは考えていたが、少しの間を開けただけで話を続けて来た。

 これには正直助かった。

 俺に聞かれても、そもそも攻撃の意味など分かりようがない。


「私なら、こう考えますよ。

 何時でも基地の真上に砲弾を降らせることができるのだぞと。

 それも豊富な物量をもって。

 こんな基地など更地にできる力がこちらにあるのは分かっただろうと」


「降伏勧告として受け取ったというのですか」


「だから、降伏勧告のような生易しいものじゃないでしょ。

 降伏勧告なら数発撃ち込んでから、何らかの手段で勧告してくるのが普通だと思うの」


「少尉。

 幕僚長が言うのは、俺らに向かってこれるものなら相手してやると言いたいんです。

 それができないのなら素直に降伏しろといったような脅しに取れるといっているのですよ。

 そうですよね、幕僚長」


「メーリカ少尉の云う通りです。

 ギャングが抗争相手に報復ができないなら俺らに従えといった感じの行為で、それこそ正規軍同士の戦闘のような行儀のよい行為では無いと受け取られるでしょうね。

 ……

 あ、軍の戦闘のどこが行儀が良いかは置いておいてくださいね。

 そうでなくとも、既にこの辺りに展開している共和国軍には大尉の行為が伝わっておりますから」


「俺の行為???」


「軍の常識にとらわれないと言えばいいでしょうか。

 正直に申しますと、大尉は常識では考えられないようなことをしかけて来るから恐れられているのですよ。

 実際に戦ったことのない人にはそれこそギャングのボスのようなものと捉えている者もおりますしね」


「え、俺そんな酷いことは一度もしてないよ。

 それを言うのなら、あの黒い連中のほうがよっぽどギャングだよ。

 いやそれ以上の行為をしているよ……あ、この場合、以下といった方が良いのかな。

 まあ良いか。

 俺は行儀は良い方だと思うのだが」


「大尉、今は大尉の行儀の話は良いです。

 それよりも、どうしますか。

 威力偵察を続けるために軍を進めますか」


「いや、キャスター幕僚長が言ったようなら、それこそ俺たちに報復を仕掛けてこないとも限らないよ。

 間違ったメッセージを相手に与えている以上、もうこれ以上の危険は冒せない。

 基地に向けて攻撃を掛けたが全弾外れたが、相手からの反撃は無かったと報告して終わりにしよう。

 出発前に誰かが言ってなかったっけ。

 上に抗議すればこんな命令は撤回できると。

 そもそもまともなルートで来た命令でない以上、攻撃した事実があれば大丈夫でしょ。

 実際に攻撃したのだから」


「はあ~。

 着弾修正しないでの砲撃が攻撃に当たるかは疑問ですが、確かに基地に向け砲撃はしましたから、大尉の言い分は分かります」


「隊長。

 基地に動きがあります。

 何かが基地から出てきました」


 基地の方を双眼鏡で監視していた兵士が声をあげた。


 俺は双眼鏡を借りて先の兵士が見た何かを探した。

 すると基地の入り口付近からこちらに歩いてくる二人の人を見つけた。

 そのうち一人は白い旗を掲げながら進んでいる。


 白旗って降伏だったような、いやただの休戦を意味するものかな。

 どういうことだ。


「降伏??

 ですかね、あれって」

 同様にアプリコットも二人を発見しており、その意味を俺に聞いてくる。


「降伏かどうかは分からないが、とにかく今は私たちと戦いたくは無いという意思はあるようね」

 キャスター幕僚長が一つの答えを言ってきた。 


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― 新着の感想 ―
[一言] 無血開城でごわす。 基地周辺のシムシティが始まるのかなぁ。楽しみだなぁ。
[一言] あれ、威力偵察が、戦闘行為になって、多分黒服以外が降伏してきたんだ。 やりすぎですよ、大尉。
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