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居留地の建設は進んでいる

 サクラたちが帝都で胃の辺りを手で押さえシクシクと痛む胃の痛みに耐え、それでも笑顔だけは絶やさずに殿下ご臨席の会議を耐えていた頃、その元凶はジャングル内の建設中の居留地にある営舎でスヤスヤとお休み中だった。


 なにせこの人たちは全員、毎日大好きなシム●ティーのような感覚で街を造っているのだ。

 少なくとも責任者である蒼草中尉は、楽しくないわけはない。


 毎日が趣味の延長のような生活なのだから。しかもここにはうるさく言ってくる司令部の連中の目も届かないときては、自重などするわけはない。


 大体ジャングル内の居留地を2km四方の土地を整備して作るのなんて正気の沙汰じゃない。

 隣に位置している連隊基地の少なくとも5倍以上の大きさだ。


 幸い隣りの連隊長もここに居留地を造っていることはわかっているのだが、その大きさまでは知らない。


 知っていたら、怒られはしないだろうが絶対に呆れるだろう。

 演習場でも作る気かと言われることはほぼ間違いないだろう。

 なにせ中隊のアプリコットやジーナあたりは自分たち用の演習場を作っているものだと勘違いしている。


 以前に師団本部内に作っていたフィールドアスレチックスの数倍の規模のものを作るのだろうと思っているようだ。


 今はとにかく2km四方の敷地に壁の建設を重点的に進めている。

 なにせエリアだけは確定しておかないとゲームにならない。

 壁の建設と同時に道路の整備もしている。

 とにかく敷地の外周を周る20m道路と中央で十字の交わる40m縦貫道を造らせている。


 共和国から保護してきた女性たちは、技術者たちだけは3つのグループに分け、ここや連隊基地周辺の地形図を作ってもらっている。

 兵士の女性については、はじめは技術者の警備に当てていたのだが、居留地の整備も少しづつ進んでおり、小さいながら畑もできるようになってきたので、今では畑仕事に精を出してもらっている。


 結構みんな喜んでいたようだ。

 兵士の人たちの出身は共和国内のローカル地方で、実家で農業を営んでいるのがほとんどであったために、かなり手馴れていた。


 彼女たちいわく『銃を扱うより、畑で土をいじっている方が何十倍もマシだ』ということだ。


 ま~保護している女性たちの顔に笑顔が戻り始めているので、結果オーライということでそのまま進めていく。


 現在営舎作りは一応の完成を見たので、今は、コミュニティのシンボルとなるテラスのついた喫茶スペースの建設を始めた。

 なにせ隣りの連隊基地には一度作ったのだが、一度も使うことなく明け渡す羽目になったので、今度はそれ以上の規模で凝った作りのものを作っている。


 師団本部からレンガを持ってきて洒落たレンガ作りのものでもつくろうかとも思ったのだが、師団本部のレンガ作りの本部庁舎が必要以上に立派すぎ、ジャングル内で浮いていたので、ここではレンガを使うのを諦めた経緯がある。


 そろそろ上下水道の整備にも着手しないと不味くなりそうな雰囲気が出てきているので、1個小隊を使ってまず下水処理用の浄化槽を建設中の壁のそばに造らせている。

 あとは浄水の問題だ。

 連隊基地は下からあった集落が使っていた井戸を利用しているのだが、ここで井戸を掘って使うと連隊基地の井戸の水量にも影響が出かねない。


 現在製作中の付近の地勢図を使って関係者を集めて検討し、使えそうな小川を見つけた。


 明日朝からここにも1個小隊を引き連れて、小川から水を引くための敷地の整備を始める。


 基本は小川そばに浄水施設を作り、そこからパイプを使って居留地まで水を持ってくる計画だ。


 とにかく作りたいものはたくさんある。

 できれば温泉も開発もしていきたいのだが、少なくとも大衆浴場だけはできるだけ早めに作っていきたい。


 現在は隣りの連隊基地内に作った浴場まで出向き入れてもらっている。


 ほとんど蒼草中尉の趣味の世界だが、彼の中隊の連中は、特に最初から蒼草と行動を共にしている旧山猫のみなさんまでもが今ではこういったモノ創りにハマっている感じだ。

 ジーナを始め後から合流してきた新卒の士官の皆さんは色々と文句を言ってくるのだが、案外気に入っている感じだと蒼草は思っている。


 アプリコットだけは何やら使命に燃えているようで、なかなか蒼草に理解を示してくれないのが少し寂しく感じている。


 中隊の大多数を占める兵士の皆さんは文句も言わずに作業に励んでいるようなので、嫌いではないようだ。


 そういえば以前抱えていた新兵の皆さんはこういった作業よりも軍事教練の方を嫌っていた。

 あいつら本当に最後まで自分たちは工兵だと信じて疑わなかった。

 なのでシノブ大尉のもとに異動になった際にも違和感無く移動していった。

 軍事教練が少なくなったことを本当に喜んでいたのを聞いて、その時には頭にきたことを覚えている。


 とにかく毎日が目に見える形で変化していく街を作っているので、全員が楽しくてしょうがないといった雰囲気を漂わせているのが最高だ。


 娯楽の少ないというよりほとんど無いジャングル内で最奥のおもちゃを手に入れ、毎日それを使って遊んでいるようなものだと、しみじみ蒼草は感じている。


「このまま軍から解放されるまでこの生活が続けばいいのに」

 ここのところ毎日そう思っている。

 あ、そうだ、サリーのお姉さんを探してからなら本当にここで引き篭りたいな。


 帝都で苦しんでいるサクラやレイラが今の蒼草を見たらどうなるのか正直少し興味はある。


 今日も穏やかな日の光が差しこもるジャングルで楽しげに精を出している蒼草であった。


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[一言] サブタイトル 居留地の建設は進でいる 進でいる→進んでいる
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