第8話 結局は、勘(カン)!感(カン)!完(カン)⁉︎
短めですが、
どうぞお楽しみください(^-^)/
「昨日クララ……さんと何を話したのか教えてほしいのであーる。」
「何をと聞かれましても、学生同士の他愛もない相談を受けただけですよ。」
呼び出しに応じた我輩は、ミコワイが昨日レポートを書かされたという小部屋でゾグ教官と向き合っていた。威圧感のあるコンクリートのような材質の壁や床の中で、扉だけがオシャレな木製である。
しかしミコワイが言うには、この部屋の扉は外側からはもちろん内側からも鍵が無ければ開けることの出来ない魔法の扉らしい。鍵を持って入れば誰にも邪魔されない個室になり、外から鍵をかければ倉庫や独房に早変わり。事件に使われそうな部屋である。
「小官はできることなら生徒との会話で命令という形をとりたくないのであーる。もう一度聞くであーる。昨日クララさんと魔法使役物科の寮でどんな会話をしたであーるか?」
「……なかなか他人とうまく話せないとか、相談できる人が少ないとかなんとかそんなことです。」
ゾグ教官がクララの秘密を知らないとは思えなかったが、我輩は適当に答えた。実際に似たようなことをクララは話していたのだからウソではない。
「おかしいであーる。他人とうまく話せない、相談できる人が少ない。そんな娘がその日初めて会った男を食事に誘うであーるか?馬鹿馬鹿しいのであーる。」
(ムッ、我輩が女の子から食事の誘いを受けて何が悪いというのか?)
ゾグ教官は我輩を怒鳴るわけでもなく、脅かすわけでもなく、どこか情けない声で話した。質問とは思えないし、反発の気持ちを込めて我輩は黙る。前世から我輩は動物に好かれる体質なのだ。クララを動物扱いするわけではないが、人間の中にも我輩を理由もなく気に入ってくれる者がいても良いだろう。
「……ノートン、今何を考えたであーるか?まさか貴様、運命の出会いがどうたら一目惚れがどうたら考えたであーるか?」
「教え子達の友情に下世話な勘繰りをするのもお仕事ですか?エージェント殿?」
禁則事項であーる、と教官は怒ったように言った。我輩はゾグ教官が情報科の人間であり、昨日クララと我輩をを尾行していたもうひとりであることを確信する。また、彼がそれを隠すつもりがないことも。
「……彼女は重要人物であーる。感情の浮き沈み次第では素の魔力だけで何百という人命を奪いかねない。ノートン、命令であーる。昨日クララと……」
「思い込みで動くのはいいかげんにしてよ!」
ゾグ教官が驚き、目を見開く。我輩がいつの間にか開け放たれていた扉の方を見るとクララがいた。手に針金のようなものを持ち、冷たい視線を教官に向けている。魔法の鍵穴というのは針金で開けるようなものなんだな。
「……腕を上げたであーるな、クララ。」
「褒めてもらいたくて、一生懸命練習したんだよ? お父さん。」
(教官とクララは父と娘であったか……)
ゾグ教官はバニア系の貴族と思われたので、我輩はてっきり前世でよく聞いた主人と召使いの、あるいは教師と教え子の禁断の恋とか、そういうヤツかと……
「情報収集が大切なんて口先だけ。お父さんはいつもそう。あの時だってすぐ帰るってノコノコ罠にかかりに行って、やっぱり帰って来なかった。」
「あの時はそれが最善の手だったのであーる。お前のお母さんが担ぎ出されていた市民権運動は過激化しすぎていたであーる。情報部員である我輩が悪者になるのが一番だったのであーる。」
「なら、どうしてお母さんが病気になった時さえ手紙の1つもくれなかったの!」
あくまで自分の正しさを主張する父に対して娘は反発する。クララが母親の話をした時に様子がおかしかったのは父親の対応が悪かったせいか。
「えっ、あ、それは……お母さんは事故で、即死だったのではないのであーるか⁉︎ 最近までお前もお母さんも死んだと思っていて……」
「だから、私は怒っているの‼︎ 私にもお母さんにも耳にタコが出来るくらい情報は大切、情報は大切って言ってたくせに、なんで偽情報を信じちゃうの⁉︎ 」
「……お母さんは、まりぬは元気なのか?」
「とっくに病気で死んじゃったよ、馬鹿ッ‼︎ 」
冷静さを失ったゾグ教官の言葉にクララが激怒する。怒気が赤い光となって見えるような、いや、気のせいではなく確かにクララの白装束が赤く発光している⁉︎
「……もう! 知らないッ‼︎ 」
赤い光は一瞬、強く輝いて消えた。そしてクララは立ち去り、バタンッと扉が閉まる。小さな部屋に響いたその音は嫌に長く聞こえた。
「小官は父親失格であーる。クララが生きているとわかった時、すぐに会いに行けば良かったのであーる。小官は、小官の今までの判断を責められるのが怖くて、クララのほうから声をかけてくれるという希望的観測にすがったのであーる……」
たぶん、クララもゾグ教官のほうから話しかけて欲しかったんだろうなぁ……しかし、教官は本当に情けない。今もまた我輩に慰めの言葉を求めて自分語りを始めちゃっているのだから。
(さて、前世でもこんなことがあったな……確かあれは馬オタクの奴が奥さんとケンカした時だ。同じパターンだとすると……)
「……元気を出してください、お義父さん!」
「誰がお義父さんであーるか⁉︎ この若造が!」
我輩が明るく楽しく話しかけると、ゾグ教官はたちまち元気100倍になった。
「ゾグ教官、貴方は今どうして怒っているのですか?父親失格であることを認めるなら、娘さんを我輩がいただいても構わないじゃありませんか?」
「それが義父に対する態度であーるか‼︎ 」
「クララの父親ぶるなら、口だけでなく行動で示してください!」
ゾグ教官が押し黙る。我輩もそれ以上は話さず、じっとする。あのクイズの時、クララは思い込みで行動する者は指揮官失格だと言った。だが、現実は常に全ての情報が得られるわけではない。そんな時どうすれば良いか?無論、突撃である!
「……しかし、今更クララになんと言えば良いであーるか?何処に行ったかも分からないであーるし、明日までに心の準備をして……」
「教官、いい加減にしてください!兵は拙速を尊ぶんですよ!父親なら、娘がいじけた時に行きそうな場所くらいわかるでしょう‼︎ 」
「そ、そうであーる!心あたりがあるであーる!」
ゾグ教官は慌ててドアノブに手をかけ、しばらくガチャガチャやってから魔法の鍵がかかっていることに気がつくと、慌てて鍵を開けて出て行った。再びバタンッと扉が閉まり、我輩は独房と化した小部屋に閉じ込められる。
「さて、もう1つの謎解きに取り掛かるか!」
我輩はあえて芝居がかった調子で言ってみた。前世で暇つぶしに読んだ小説の名探偵たちの様にはいかないが、突撃の精神を持って道を開かねばならぬ。
「えーと、確かこんなもんだったな……遭難信号は前世と同じか。」
トントントンツーツーツートントントン……
我輩は扉をノックし続けた。この部屋は防音に優れているようだから我輩の読みが外れていたら教官やクララが戻って来るまで待たないといけない。しかし、おそらくこのノックが聞こえる場所、扉のすぐ近くにあの男がいるはずだ。
ガチャ、と小さな音がした。我輩が一歩後ろに下がると扉が開く。
「君が尾行していたのはクララではなく我輩だったのだな。」
「……禁則事項だ。」
現れたのは予想通り、針金のようなものを持ったエージェントAだった。
魔法の鍵穴(魔力強度1)は、エージェントAならば67秒、クララならば2秒で解除出来ます。
しかし、情報科であっても入学直後からこんなことをできる生徒は普通いません。
一体何者なんだ⁉︎ エージェントA!
それでは次回予告。
ゾグ教官はクララと仲直りできるのか?
エージェントAの秘密のメッセージとは一体⁉︎
そして、ノートンは戦史編纂科の本拠地『低い城』へと向かう!
第9話 低い城の女
1週間くらいで投稿します。
お楽しみに(^-^)/