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騎兵狂転生録 (未完)  作者: オーメイヘン
2/12

第2話 砂埃に、むせる

第2話にして、いきなり主人公の出番なし。

猫耳青年の視点で最終試験をご覧ください。

地平線の向こうに砂埃が見える。おそらく貴族の騎兵隊が立てているのだろう。


「運が悪いでござる。貴族様方はやる気に満ち満ちているようでござる。」


観測用に張り出した陣地の中でタマは身震いした。

ナモ族が出世する最良の道である士官学校にようやく入学出来そうだというのに、このままでは怪我をして家に送り返されるかもしれない。


ドドドドドドドドドドドドドドドドォーーーー


頭上の猫耳に一足早く轟音が聴こえる。続いて身体が振動を感知する。タマは空中と地中の音速の差から接敵時間を予測した。


「ありがとう、第1塹壕線射撃用意‼︎」


通信魔法で連絡すると美しい声が返ってきた。指揮官であるシェルナ様だ。バニア系だかタマのようなナモ族にも分け隔てなく接してくれる。


「ギリギリまで粘るでござる。頑張るでござる。」


地響きがどんどん大きくなる中、タマは報告を続けた。貴族騎兵は予想通り重い鎧に携帯魔法砲サイコガンを装備していること。しかし、意外にも陣形を整え一定の速度を保っていること。


視界の端に閃光がはしる。どうやら恐怖に耐えられなくなった味方が射撃魔法を使ったらしい。つられて何発もの閃光がきらめく。


「バニア系もポーラ系も数が多い癖に度胸がないでござるな。まだ射程外でござる。」


タマが観測陣地を志願したのはナモ族が彼ひとりだったからだ。多数派の馴れ合いは少数民族には辛い。


「およっ?」


再び敵に目を向けたタマは妙なものを見つけた。カラフルな鎧で着飾った騎士達の後ろに平民の軍服を着た竜騎兵(空を飛ばないもの)が見えたのだ。


「砂埃が酷くて気づかなかったでござる。すぐに報告するでござる。」


しかし、第1塹壕線はパニックに陥り、余りに多くの射撃魔法が放たれために通信魔法が繋がらなくなっていた。間もなく敵の射程内に入ることもあり、タマは陣地を棄てて報告に行くことにした。






「こんなところで何してやがる猫耳野郎!」


訓練用とはいえ当たれば痛い魔法弾のなかを潜り抜け報告したタマに対し、第1塹壕線右翼を任されたポーラ系の髭男は怒鳴るばかりだった。


(拙者を怒鳴ったところで状況は変わらないでござるのに、これだからポーラ系は……)


しかし、タマは平民隊の勝利を疑っていなかった。

三重の塹壕線。大量のカセット式魔法弾。そして何よりシェルナ様の存在が貴族の騎兵隊を打ち砕くはずなのだ。


(しかし、あの竜騎兵はなんでござろうか?)


そんな疑問を抱いた時、第2塹壕線のほうから声が聞こえた。


「大変だ!左翼の防衛線が、バニア系の奴らが、総崩れになったぞ‼︎」


途端に周辺のポーラ系受験者達は持ち場を離れ、第2塹壕線へ駆け出した。


「おい、逃げるな!まだ撤退命令は出ていないぞ‼︎」


タマを怒鳴っていた髭男は慌てて止めようと叫ぶがもはや手遅れだった。弾幕が薄まったことで騎兵が突破を成功させ次々に第1塹壕線を飛び越えていく。


(やれやれ、これだから多数派は……)


髭男が流れ弾に当たって倒れたのを見たタマは馬に蹴られないように端の方によるとハンカチで白旗を作りそっと掲げた。




恐怖と諦めは伝染し、平民隊は無能な仲間を罵りながら崩壊していった。もはや塹壕も予備弾も騎兵隊の進撃を阻むことはできない。第1塹壕線の崩壊から僅か数分後、平民隊司令部にも白旗が掲げられた。それは絹で作られた立派なものだったが、タマが掲げたハンカチとなんら変わるところはなかった。






某戦車オンラインゲームの体験を基に書きました。まだ彼ら彼女らは士官学校の受験者に過ぎませんからこんなものです。


さて、次回は主人公が平民の星シェルナ様と対面します。何が勝者と敗者を分けたのか?


第3話 軍刀と誇りはそのままに


明日までには投稿します。お楽しみに!

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