第1話 士官学校入学試験
初投稿です。よろしくお願いします。
このたび、訳あって異世界に転生した我輩ことノートン将軍はここポーバニア王国の士官学校で試験を受けている。
百戦錬磨の我輩が今更士官学校とは馬鹿馬鹿しい限りであるが、転生直後の我輩を拾って下さったお嬢さんに報いる為にもひとつ本気を出そうではないか。
「ノートン、君には貴族達の騎兵隊を率いてほしい。ザモイスキー家の推薦がある君ならば必ず彼らをまとめられるはずだ。」
説明しよう。この士官学校では貴族と平民が対立している。高貴なる者に逆らう子羊を教育してやる、それが最後の試験である。ふふふ、野蛮ではあるが愉快ではないか。いずれ本国に帰還することが叶えば訓練に取り入れたいものだ。
「しかし、教官殿。風の噂に聞いたのですが平民隊を率いるのは貴方の御息女だとか?よろしいので?」
私は紳士である。例え試験であっても淑女と戦うのは望むところではない。
「なに、軍に入りたがる様なおてんばです。現実の厳しさを教えてやってください。」
「顔に傷がつくと、婚礼にに差し支えます。」
すると教官は笑い出し、その時は貴方がもらってやってくださいと言った。この教官、平民とばかり思っていたがユーモアがある。
「了解。全力で戦わせていただきます、閣下。」
私の心には侮りも油断もなかった。お嬢様といい教官殿といいこの世界は尊敬に値する人物ばかりである。
さて、場面は切り替わり練兵場。視界を埋め尽くさんばかりの騎士達が我輩の前にある。第三回十字軍のアルフスの戦いに参加した騎士達もかの如くであったろうか?しかし、問題がないわけではない。
「諸君に問う。敵の指揮官は誰だ?」
騎士達は様子を窺い静まり返る。私は特に立派な鎧を纏った、リーダー格の騎士に尋ねる。
「問おう。敵の指揮官は誰だ?」
「そんなこと知るか!平民共なんぞ誰が率いようと関係ねぇぜ‼︎」
彼が笑うと周りの騎士達も笑った。
だから私は彼をぶん殴った。兜をつけていない彼は衝撃をモロに受けてひっくり返る。
「何すんだよテメー‼︎」
「問おう。今君を殴ったのが私ではなく平民だったなら、君は立ってままでいられたかね?」
ひっくり返った騎士は悔しそうに黙っている。感情に任せて騒ぎ立てないあたり馬鹿ではなさそうだ。私は返事を待たずに全体に向き直る。
「教えてやろう。平民隊の指揮官、諸君らの最初の敵にして将来の上官となりうる女傑。その名はシェルナ・カストリオティ。」
騎士達に動揺がはしる。無理もない。転生者の私ですら知っている平民の希望、カストリオティ家の才女が敵だというのだから。
「諸君、情報は力である。獅子の率いる羊の群れを襲うのは危険だが、獅子が率いていることに気付けたならば対策はとれる。」
しだいに騎士達の瞳から油断が消えた。もはや私の前にあるのはただ数が多いだけの駒ではない。
「……よろしい。我輩が人間同士の戦いの何たるかを教えてやろう。」
第2話 砂埃に、むせる
今日中に投稿します。お楽しみに!