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ヒヤシンス  作者: 新々
7/22

甘いウソ

「相変わらず結ぶのヘタだね」


 下校中、道端で靴ひもを結ぶ私に幼馴染があきれたようにそういった。

 立ち上がって、(あず)けていた鞄を受け取りながらこう返す。


「そっちも相変わらず上手ですね。女子をたぶらかすのが」

「たぶらかすって、人聞きが悪いなあ」


 じゃあそのふくれ上がった鞄はなんなの?


 バレンタインの今日、幼馴染は今年も学校中の女の子からチョコをもらっていた。

 ベリショに整った顔立ちはたしかに男子よりもかっこいいし、同じ中学生には見えないけど、性格は男子よりも全然ガサツだし、けっこう子供っぽい部分もあったりして。

 イタズラが好きなところとか、特に。


「でも困るんだよね、あたし甘いの苦手だからさ。ねえ何個かもらってくんない?」

つつしんでお断りいたします」

「ちぇっ。まあでもせっかくだし、一個ぐらい食べようかな」


 そういって鞄から取り出したのは、なんの偶然か私があげたものだった。といっても、こっそり鞄の中に入れたから直接渡したわけじゃないけど。

 中身も普通の生チョコだし。もちろん甘さ控えめで。

 ラッピングは、まあったほうかな。



「さっきのチョコありがとね。おいしかったよ」

 別れ道で、幼馴染がふと思い出したようにそういった。

「……気づいてたの?」

「あんなリボンの結び方するなんて、あたしの知ってる限りひとりしかいないからね」


 私の足もとをちらっと見て、得意気に笑う。


「今年はもらえないのかなって思ってちょっと寂しかったからさ、なんかすごくうれしかった。でもごめん。あたし、なんにも用意してないんだ」


 その言葉がまったくのウソだと知ったのは、部屋で鞄を開けた時だった。


「……やられた」


 中には私の大好きなチョコのお菓子が、コンビニの袋ごと入っていて。

 本当にガサツで、子供っぽくて。


「私以外の誰かにあげてたら、許さないから」


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