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カイロ
冬は嫌いだ。特に朝は――。
「うー、寒い。マジありえない」
登校中、手に息をはきかけながらそんな言葉を漏らしたら、となりを歩く友達が反応した。
「……あたしが温めてあげよっか?」
「どうやって?」
こうやって、といきなり私の手を握ってくる。でも。
「ひゃっ! 冷た……くない?」
むしろ熱いことに、ちょっと困惑する。
「さっきからずっとカイロ握ってたからね」
白く息をはきながら得意気に笑う顔が、なんだか悔しくて、
「なら、そのカイロちょうだい」
っていったら、
「やだ」
って、今度は駄々っ子みたいに、ぎゅーって。
その反応が、なんだかかわいくて。
嬉しくて、温かくて。
だから私も、ぎゅって握り返してこういった。
「……じゃあ学校着くまで手握ってて」
「……うん」
マフラーで盛り上がった髪を揺らしながら、友達がちょっとだけ嬉しそうに頷く。
まあ、冬も悪くないかな。特に朝は。
なんて。
学校までの長い長い道のりを歩きながら、そんなことを思った。
了