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ヒヤシンス  作者: 新々
20/22

閉じキス

「ねえ、キスしていい?」


 わたしの声に、彼女の視線が本から離れる。

「キス。ダメ?」

「ダメ……じゃないけど」

 そういって、本で顔を隠す彼女。

 はみ出た耳がうっすら赤くなる。


 つき合ってそろそろ一ヶ月。デートも何回かしたし、手もつないだし、抱き合うこともしたけど、キスはまだ一回もしてなかった。たしかに学校じゃ難しいけど。

「大丈夫、誰もいないよ」

 ここ、わたしの部屋だし。それにふたりっきりだし。

「一瞬だけ、ちゅってするだけだから」

 しばらくして、すっと本が降ろされた。わたしはそれが合図だと思って顔を近づけたのだけど。


「ぶぇっ」


 本を顔面に叩きつけられてしまった。

 思いっきり拒否されて、だいぶへこむ。

 そんなわたしをよそに、何ごともなかったように再び本を読み始める彼女。


 なにそれ。そんなに本が好きなの?

 なら、本とつき合っちゃえば?


 思わず口に出しそうになった瞬間、彼女が髪をかき上げて本にキスをした。まるでわたしに見せつけるように。

「なんでよ」

 思わず涙声になる。

「なんで本にキスして、わたしには」

「ち、違うから」

「違うってなにが」

 見てて、と急に大声を出して、ぱたりと本を閉じる。

「ほら、キス……したよ。ちゃんと」

「本にでしょ?」

 彼女が長い髪ごとぶんぶん首を振る。

「わ、私が右のページで、そっちが左のページで、こうやって閉じたから、だから、キ、キス」


 よくわからなかった。それにわたしは本にキスした憶えなんて──と、そこでさっき本を叩きつけられたことを思い出す。いや、あれはキスっていうか。


「……じゃあもう一回しよ。さっきの、なんか事故みたいだったし」

 小さく頷いて彼女が本を渡してくる。隙あり、とばかりに、わたしはその腕をぐっと引き寄せて。


 今度は静かに瞼を閉じた。 了

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