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ヒヤシンス  作者: 新々
13/22

重なる音

 ふっと彼女と目が合う。

 でも、すぐにどちらからともなく避けて。


「…………」

「…………」


 ベッドの上に並んで腰かけたまま、私たちはさっきからずっとこんな調子だった。

 仕事のない週末、ひさしぶりのデートの後で、私はそのまま彼女の家に上がり込んでいた。もちろん、初めから泊まる予定ではいたし、だからそういうことをするつもりでもいたのだけど。


 つき合って二ヶ月。

 実は彼女とは、今日が初めてだった。


 それが早いのか遅いのかはわからないけど、私にとっては何もかもが初めてだったし、だから前々から心の準備はしていたつもりだった。

 でもいざその時になると、かえって緊張してしまって――というより、なぜか少しだけ怖くて。


「そろそろ寝よっか」


 ふっと彼女の手が私の指先に触れた瞬間、覚えず身体がビクッと跳ねてしまった。

「あ、あのっ」

 心臓がバクバクとうるさく胸を打つ。

「もしかして、緊張してる?」

「あ……うん、ごめん」

「なんで謝るの」

 ちょっとだけ笑って、彼女がぎゅっと優しく抱きしめてくる。

 でも、今度は不思議と飛び上がるようなことはなくて。


「同じだよ、わたしも。わかる?」


 それは女性らしい柔らかさの向こうから、温もりと一緒に私の腕にドクドクと伝わってきて。

 脈打つ音が次第に共鳴していって。


「今日はもう、このままでいよっか」

 そっと耳もとで囁く彼女に、私は首だけをめぐらしてキスをした。


「…………」

「…………」


 不思議と怖さはもうなかった。

 もちろん、まったくというわけじゃなかったけど、でも、それ以上に溶けていくような安心感が身体中に広がって。

 その安心感が、もっと欲しくて。


 そのままベッドに転がって、お互いの髪が絡み合うほど求め合いながら、愛し合いながら。

 私たちは、初めてふたりの夜を過ごした。 了

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