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あったかい
「……おはよ」
目が覚めて初めに耳にしたのは、聞きなれた温かい声だった。
「おは……って、お姉ちゃん⁉︎」
「あ、ダメ。布団がめくれる」
飛び起きた私をお姉ちゃんが抱きしめてくる。
「じ、自分の部屋で寝てよ」
「だって寒くて」
こっちのほうがあったかいもん、なんていって。
安心したように、ぎゅーって。
なにそれ。そんな理由で添い寝してきたの?
昨日すぐ寝ちゃったくせに。
ちょっとイラッときて、つい、
「暖房つければいいでしょ」
って強くいったら、
「……じゃあ帰る」
なんて、冷たい声ですっとお姉ちゃんが離れかけて――。
やだ、いかないで。
思わず抱きついてから、はっとする。
「ふふっ、甘えん坊さん」
「……どっちがよ」
口ではそう強がっても、身体のほうは正直で。
だってお姉ちゃん、いい匂いがするし、柔らかいし。
それに、やっぱり温かくて。
ううん、暖房なんかより。
こっちのほうがずっと『あったかい』から。
ゆっくりと広がっていく穏やかさを感じながら、私もお姉ちゃんをぎゅーって抱きしめた。
了