親友との語らい ~引っ越し作業が終わりません~
寮生活をお送りするはずが、あれ?
皆さん、こんにちは。椿です。
編入試験を、本番の前日ギリギリまで知らされていませんでしたが、なんとか無事、合格することができました……。 試験結果は学校のウェブサイトにて翌日発表でした。速いですね。まぁ、編入だと、受験者数少ないので、点数つけるのにそう時間はかからないでしょうからね。
試験内容は……、た、大変だった……。学年末試験が終わった3月上旬の終わりごろから、一年時の復習をしておいて良かったです。日々の勉強は、私を裏切らないんだぞ!いえっふ~!
……すみません、取り乱してしまいました。実際のところ、私が以前通っていた高校より偏差値が少しどころか、かなりお高めでした。さすがは進学校と言いますか、正直、受からない可能性ありましたもん。
大体、何ですか、あの試験は!?
多数の現役合格者輩出を視野に入れているのかも知れませんが、大学入試並みの難易度って……。さすがに以前の高校の一年時で習った範囲ではありましたが。………あの難しさでもしも習ってない範囲が出ていたら、……言いたくない、言いたくないですけど、落ちてましたよ、多分。
ハハハ、オトサン、オカサン、ウラミマスゾ…
…ハッ!危なかったです。人を恨んでは良くないです。自分に跳ね返ってきますからね。ニヤリ
………………………………………………………。
スーーー、ハーーー。スーーー、ハーーー。
ふぅ~、落ち着きました。
ツバキノ ブラックメンハ フェードアウト シマスタ。
さて、親元を離れるまであと1週間、地元を離れるまであと1日。
合格発表の翌日、つまり、一昨日は友達と送別会をしに学校へ行ってきました。急なお別れに皆さん、当然、驚いていましたが、餞別にと、クラス総出で送別会を開いてくれました。
何故に学校でかと言いますと、担任の先生が、私よりも先に、両親から転校のことを聞いて、前々から少しずつ準備をしていたそうです!初耳です!?
お父さん、お母さん!何故に娘よりも先に、担任の先生に知らせとるんですか!?順番逆でしょうが!
さすがにクラスの皆は知っていませんでした。いや、知っていたらショックですけど……。
クラスの大半が小学校、中学校からの付き合いなので、送別会の終わりごろには地元を離れたくなくなっておりました。
まぁ、仕方がないですが。……うぅ、寂しいです。
友達は手紙を書いて送ってくれるそうです。ありがたいな~。
なぜ手紙かというと、 私まだ、携帯電話持ってないんですよね。必要性を感じませんでしたので。
ただ、これからは必要になると思うので、そのうち手にすることでしょう。多分。うん、多分。……。
さてと、私は感傷に浸る間もなく、昨日から引っ越し準備をしております。
いや~、お母さんに部屋の掃除を今までしてもらってたんですよね。なんてたって、お母さんは掃除のプロ、いや、片付けのエキスパートなのですよ!はい。収納術の講師として、さまざまなお宅で指導をしてるのです。
収納量の少ないとあるお宅も、めんどくさがりの出しっぱなし収納のお宅も、小さなお子さんが散らかしてしまうお宅も、お母さんの手にかかればちょちょいのちょいと、ついでにヨヨイのヨイ!
あっという間に、『あら、綺麗』、になりますのよ、奥様。オホホホホ。
おっと、閑話休題。
ということで、お母さんの手によって綺麗に片付いていた私の部屋なんですが、まぁ、物の多いこと多いこと。大きめの段ボール箱6個に入りきりません……。改めて、お母さんの収納力……恐るべし!
まぁ、大抵は本やノートなどかさばるものが多いので、どうしようもないんですが。あと、私、なかなか物を捨てられない性格なんですよね。保育園時代に使っていた物、まだ部屋にありますもん。
………………………、が、頑張って、す、……捨てますぅ…………うぅ……泣きそうです。
「さっきから、一人でぶつぶつと何を言っている?」
「わぁっ!」
「先に言っとくが、数十分前から居たからな」
「どうして、私が聞こうとしたことを先読みして答えられるんだよー!まさか、心を読め…」
「馬鹿なこと言ってないで、さっさとゴミ捨てろ」
「………」
「返事は?」
「はーい」
「はぁ…」
皆さんはどなたかご存知ないですよね?こちら、小学校高学年からの親友で、伍島椏樹ちゃんです。とーっても美人さんなのですよ!ただ、お口が少し悪いんで…
「何か言ったか?」
「いいえ?何も」
出たー!察しがいいんですよ彼女。テストの時は山勘だけで80%とって残り20%は自力で、毎回高得点を叩き出す、天才児。毎回、満点ではないらしいです。そこまで取れるなら満点とれるだろうとも思ってしまいますが。ああ、ちなみに私は…
「上の下だな」
「だから何で…」
「途中から声に出してたぞ。『毎回高得点を叩き出す、天才児。』」
「う、わぁーーーっ!」
「まぁ、当然だが、ありがとう」
「どこからそんな自信が…」
「体の内から」
「………もはや、何も言うまい…」
「うむ、そちの聡き心を褒めて進ぜよう」
「ははぁー、ありがたや、ありがたや。…っじゃ、なーーい!」
そもそもどうして、ここにいるんですか!
「引っ越し準備を、手伝おうとしたんだよ」
「!」
「やっぱやーめ…」
「神様ー!後生です!お願いいたします!」
「…どんだけだよ」
ありがたやありがたや!
ハッ!つい口調が……
「ぶっ、くっ、あんたの後生軽すぎ。くくっ、願い事がそんなアホらしいことって」
「ぶーぶー、笑わないでよ」
「ウマシカがいる」
「地味に傷付く……」
わざわざ訓読みするところからして貶されてます!
「やっと、終わった……」
「物、多すぎだろ」
「ご、ごめん。でも、本当に助かったよ、ありがとう」
本当、椏希さま、神様、仏様です。
……私の私物はほとんどゴミ行きになりましたが……
あ、大事な物はもちろん死守しましたよ!
「いいえー。にしても、喉乾いたな」
「今すぐ、用意してきます!」
「では、アイスコー」
「アイスロイヤルミルクティーお願いね」
「はいはい。……ってお母さん!椏樹ちゃんの言葉遮らないでよ!」
「え~」
実はあれから二人だけでは無理だろうということで、お母さんにも手伝ってもらいました。さすがはプロ。くどいですな、自分。
「え~、じゃないの!てか、ちゃっかり作るのめんどくさい物頼まないでください」
「…いつもどおりの光景だな」
「ええ、いつもどおりの光景よ。ふふ。」
「これもしばらく見納めか」
「もう~、椏樹ちゃん、辛気くさいこと言わないでよ…寂しくなるじゃん」
「ふむ」
「ふふ。本当に仲良いわねえ、あなた達」
「へへん、伊達に7年親友やってないよ~だ」
「だな」
「ふふふ。椏樹ちゃん、これからも椿のことよろしくお願いね」
「はい。かしこまりました」
「…な、何で椏樹ちゃん改まった言い方してるんだ?」
突然の空気の変わりように、ツバキハコンランチュウ。
「わ、私、お茶入れてくるね」
「だから、アイスコー」
「分かってるってば」
「この親にしてこの子あり」
「あー、さえぎったのはごめん」
「美味しいの待ってるわ」
「はいはい」
そう言って、私は二階の自室から一階の台所に降りていきました。
~椿の部屋にて~
「紗々さん、椿にはまだ言ってないんですか」
「うふふ、そうよ」
先ほどまで屈託なく笑っていた人と同一人物とは思えないほどに妖艶に愉しそうに笑う椿の母、西森紗々。
「あなたも人が悪い」
「あら、椏樹ちゃんほどではないと思うけど?」
「……ふっ、否定仕様がないですね」
少し翳りのある顔をして呟く椏樹。憂いさを帯びた顔は更なる美しさを露にする。
「ふふ。あと、もう少し時間掛かるのでしょう?」
「ええ」
「まぁ、頑張ってちょうだい」
「はい」
椿の「お茶だよー」と二人を呼ぶ声が二階まで聞こえきた。
つ、次こそは寮生活なはずです。




