名は体となり意を求める
「ここはアカルイクライモリ。君の常識なんてついようしないんだよね」
ここじゃあ常識そっちのけってことか、今までの意味不明なこともここだからって言いたいわけだ。そういえば今更だが、アカルイクライモリって明るい暗い森か、どうかんがえても住宅街だし、そもそも明るい暗いってどっちだよ。
「アカルイクライモリっていったいなんなんだ」
「アカルイクライモリは、明るいくらい盛りだよ」
「なんじゃそりゃ、どんな盛りだよ。しかもここが盛りって意味がわかんねえよ」
場所を盛るのか、土地の叩き売りじゃあ無いんだから。土地の叩き売りなんてものを聞いたこともないが
「やっぱり、垢塁喰らい銛」
「しらねえよそんな銛。だから、この場所の話をしてんだろ。なんで盛ったり銛だったりするんだよ。どうせ適当なんだろ」
結局はアカルイクライモリなんて名前もこいつのでまかせで、大した名称はないんだろ。なんか知ったような口振りで・・・そうか、何時まで経っても出れないのはこいつが何かをしているに違いない。寧ろこんな怪しい奴を真っ先に疑わなかった自分がおかしい
思い返せば、こいつはまるでここに来ることを知っていたかのようだった。まるで予定していたように見えなくもない。話をしようと言ってきたのも向こうだ、それだけが目的とは思えないが
「別にアカルイクライモリで無くとも良いんだよね」
「もうこの場所の事はどうでもいい。変にはぐらかしやがって。ここからさっさと出せ、どうせ何か知ってんだろ」
その瞬間、そいつはニヤリと笑っていた。やっぱり知っているのか・・・
「出たいんだ出たいんだいいよいいよ出してあげるよ唯一意味を意義を付加したここから出してあげるよ放り出してあげるよ僕と同じ思いをしてくれよなにもないところにようこそようこそ」
狂ったように話を始めるそいつに唖然としてしまう。いったい何が、この外には何があると言うんだ
「ここはアカルイクライモリ。本当はこんな名前じゃなくても良いんだ。肝心なのは名前があること、無意味だけど、其処に微かな意味が産まれてくれる。じゃあ、君の名前は何かな、旅人さん」
名前・・・名前が思い出せない。何故だ、なんで思い出せない。この場所に来る前のこと・・・何も思い出せない
「一日で命を浪費した君は名前も記憶も何もかもを無くした。何もない君は無意味なアカルイクライモリよりも更に無意味。アカルイクライモリにはアカルイクライモリがあるけれど、君には君だという何かは無い。なにも無いんだ君という固有名詞は、そんな君こそ無限は相応しい、無限という無意味へようこそ」
限界は意味があって其処にある。無意味に繰り返す無限にようこそ
ただ、目の前には暗闇すら存在しない、何もないの中に漂っていた。既に、自分と言うものも無くなっているのだろう
心すらも何もないに混ざってしまうとわからなくなってしまう