王族との邂逅、漂う暗雲
王城に着いた俺たちは、なんとも何処かで見覚えのある城だとげんなりしていた。
「大ちゃん、この正面だけだったら、まんま一昔前のゲームのお城そっくりだね。」
「ああ、俺も思った。だが実際、城の威風を示すと言う点では効果のある外見だ。まあ、間取りまで一緒なら、住む者がいる以上抗議したくなるがな?」
そういう話を遥としながらカイルに急かされて早速とばかりに王城に入り、王家の家族がいる部屋へ案内されていた。
その途中、ランスロットが
「マスター、お気を付け下さい。何やらこの城、黒い影が至る所に住み着いています。どうやら我々が目的ではない様ですが、気を引き締めねばなりません。ジェシカも、いざとなればその体ごと使いマスターを護るように。」
「そのようなこと貴方に言われるまでもありません。とはいえ体術に適性が無い私ではもしもの時危ういので、今日の処は何も起きないことを祈るばかりです。」
「ま、いざとなったら私が大ちゃんを護るから安心してよ。訓練も順調だから着実に威力は上がってるよ?」
「そういえば、ランスロット。お前は確か、戦闘用の魔法と魔術の両方を使えるようにしていたな。理解力はどうなっている?」
「は!我らガーディアンはマスターの理解度に影響されますので、風の結界を張りながら周囲の情報収集に問題ありません。しかし、精霊術の場合は言い難いことながらそれ程のご理解はされてないご様子なので威力の方は期待できません、ご了承ください。」
言った後ランスロットが本当に申し訳なさそうに顔を伏せる。
そこへ、ジェシカも
「ランスロット!そのいい方では大作様が悪いように聞こえます。例えそのような場合でも、無事に大作様を護るのが貴方の仕事です。」
といって、弱気を叱る。
そこで俺は話を戻す。
「その事は良い。俺が聞きたいのは、今の状態で俺たちの周りに風の結界を張り、その少し外側に火と水の温度差で蜃気楼を作り敵意のある奴から見えなくすることは出来るか、という事だ。・・・どうだ?」
そこまで言うとランスロットは腰を折り頭を下げて騎士の礼をすると。
「了解しました、マイマスター。奇襲を恐れるのなら、奇襲される危険を排除せよとの考え、流石です。無論可能です。私の知識はマスターの知識、。マスターにできて私にできないとあれば、マスターの僕の価値はありません。ただいま実行に移しましょう。」
そうランスロットが言って風を操作し、周囲の空間が僅かに歪むと、今まで漂って来ていたねちっこい視線がなくなった。
そして、恐らくこの結界の向こうでは蜃気楼によって俺たちの姿が完全に消えたことだろう。
「終了しました。魔力も問題ありません。」
ランスロットが報告を終えると傍で見ていたジェイドが
「昨日見なかったガーディアンですが、いきなり見せつけてくれますね。しかも、魔力消費による疲れも微塵も見当たらない。いったいどういう原理ですか?」
「それは、大作様のガーディアンだからです。我らガーディアンは呼び出された時に主である大作様より魔力を頂きますが、常に貰うのではなく、普段は大気中の魔素を体内で魔力に変換しているので余程連続の行使をしない限り、使った分はその場で補給できるのです。更に大作様の近くに侍らせて貰う事により、外にいるビリーからも補給されているので、我々が魔力消費による疲れを見せる事はまずありません。」
「それって反則じゃねえか?疲れを見せない奴を護衛にできるとか、便利すぎだろ。召喚魔法って奴は。」
「そうは言うけど、カイル解ってる?今のランスロットの行動も、出来た魔法の選択も、今日の朝、大ちゃんが付けた能力だし、指示した行動だよ。もし、アンタが同じ立場で同じ能力を使えたとして、同じような判断が出来ると思う?」
「う・・・」
遥の指摘に唸るカイル
「まあ、話はその辺で、着きましたよ。ここで、今、王城にいる消えたゼリス以外の方が集まってます。他の者は念のため外して貰っている筈ですので、大作さん達の事も、とやかく言う者は居ません。安心してお入りください。」
そして、コンコンとノックをしてから
「ジェイドです。カイルと共に例の御仁達をお連れしました。」
そして、5秒ほどして
「いいですよ?お入りください。」
そして、王族との初邂逅を迎える
場所は変わって王都の外れにある倉庫。
そこで、二人の人物が交渉していた。
「おい、ニーナとやら。お前が仕込んだ毒がもう治療されて回復に向かっているぞ。話が違うじゃないか。」
男がニーナと呼んだ女性に文句を言うと
「それは、存じておりますが、にわかには信じられませんね。あれは、私が自ら調合した、帝国でも幾度となく要人を暗殺してきた、水銀と呼ばれる、徐々に体を蝕んでいき最後には命を奪う性質を持つ厄介な毒ですよ。何か特別な薬か、優秀な治療師にでも診てもらわない限り、確実に始末できるはずだったのですが。」
「とにかく、こうなったら俺は今から戻っても処刑されるのは目に見えているからな。約束通り帝国に連れていって貰うぞ。その前に、手土産にエレナ姉かエリス姉を帝国に拉致して来るのも面白いかな。二人とも美人だから内戦の鎮圧時に褒美として差し出せば俺も地位を確保できるだろう。」
それを聞いたニーナは露骨に見下した目を男に向け
「姉を自らの自己保身利用しようとするとは、やはり屑は屑ですね。貴方の保身は私の知ったことではないので、連れてくるのなら止めはしませんが。しかし、手も貸さないので勝手にやってください。あと二日くらいなら待ちますので、その間にお願いしますよ。これでも帝国の十人衆として色々と忙しい身なので貴方ばかりにかかずらわってられないのです。では、いい結果を祈ってますよ。それと、これを。いざと言うときは飲みなさい。身体能力を極限まで高める薬です、時間は一時間続きますので逃げ帰るのには十分でしょう。それではこれで。」
そういってニーナは闇に消えた。
「後は城に残してある部下を使って二人をどう連れ出すかだな。変化薬もあと一つ、慎重にいかんとな。待ってろよ?精々俺の役に立ってくれ。はははははは。」
場所は戻り王様の執務室。王と王妃、それとエレナとエリス、そして最後にタブラルの順で自己紹介を終えた王族は今度は大作らの事を聞いた。
「カイルから聞いているが、エリクサーとやらを作ってくれたのはどいつだ?改めて礼が言いたい。」
タブラルがそう切り出すとカイルが大作に目配せをして、頷いたのを確認すると
「そこの白い衣装を着た男性です、タブラル様。名は大原大作。エリクサーと言う霊薬は彼の珍しい魔法により作成された物です。そして、彼の傍にいる変わった服を着た見目麗しい少女と白銀の鎧を纏った若者もまた、彼の創造物にございます。」
その報告に王族側は皆一様に息をのみ
「それで漸く謎が解けました。私の知識にある霊薬と少し効果が違っていたので、少し疑問だったのです。本来の霊薬には気付け効果までは有りません、そしてあらゆる病気を治す効果があるのです。今回のように毒と確定しているのは不思議でした。」
エリスの言葉に大作は少し驚いた
「なかなかに博識だな。俺もこの城に来る前にギルドで色々と調べ物をしていて気付いたことだが、最初から知識として効能まで知る者がいたとはな。エリスと言ったか、後で色々聞きたいことが有るが良いか?」
「ええ、構いません。兄さんを助けてくれたお人です、何なりと質問して下さい。」
エリスと俺が話しているとエレナが割り込んできて
「あのー、私も少しよろしいですか?あなたの魔法は生物も作ることが可能なのですか?」
「ああ、言ってなかったな。こいつ等は完全な生命体ではない、いうなれば魔道生命体だ。詳細はまだ信頼に値するか解らんからいえんが、俺の持つある道具から作製できるとだけ言っておこう。」
俺のあからさまな「信頼されたければ努力しろ」と言う発言に王族は皆苦笑し
「確かに、会っていきなり自分の生命線たる情報を渡すような愚か者はこちらから願い下げだな。利用はするがこちらも大事な情報は無闇に渡せん。助けられた礼は言うがな。今回は本当に助かった。こちらが渡せる最大限のこの大陸に関する資料と魔法、魔法陣、魔道具の資料だ。お前らの目的のために役立ててくれ。」
ドン! と、物凄い数の資料が執務室のテーブルの上に置かれた。
「・・・これだけの資料は想像してなかったな。少しこの城に滞在して試したいことが出来たから、部屋を二つ用意してくれるか?」
というと、俺の言葉に遥が
「ちょっと大ちゃん!まだ、護衛が十分に揃ってないのに、別々になるのは危険すぎるよ。さっきの大ちゃん達が言ってた気配の事もあるし、今日は少し広い部屋で4人で一緒の方が良いよ。出してくれる料理だってジェシカに頼まないといけない可能性があるんだし。数日泊まる予定ならなにか依頼されるかも知れないんだから、部屋の追加位融通してくれるよ。」
「ということだが、大丈夫か?」
俺が遥の意見をどう扱うか聞くと
「構いませんよ。そんなに小さな城ではないですから大きい部屋もあります。直ぐに準備させますので、先に兄様の依頼を聞いてください。」
「ほう。何か面倒事でも発生したのか。受けるかどうか内容にも依るけどな。場合によれば、今日部屋を借りた所で解決できるぞ。」
「なら話すが。実は・・・」
それから数分後、話を終えたタブラルに大作は
「それなら、皆が通る入り口にエリスを隠して配置してたらどうだ?それなら疑いを持たれることなく、王家への忠誠を減らされることもないが。もしくはそういった魔道具を作るかだな。」
俺の最後の発言に発言にタブラルは驚いて目を見開き
「そんな物を直ぐに作れるのか?魔道具を作るのはかなりの研究と時間が必要だと聞いたが。」
「俺の場合はその効果によるな。唯の発見器なら直ぐに可能だが、色々と出来る事を付けていけばそれだけ俺の魔力量が付いて行かずに日数がかかる。どうする?」
タブラルは少し悩んだ末に
「よし、とりあえず唯の発見器だけでいい。今から出来るか?」
「部屋を用意してくれ、そして俺たち以外は入らない様にしてくれ。約束を破るようならこの話は無しだ。」
「解った。」
こうして、嘘発見器を作ることになった。




