王都到着
本日2つ目です
翌朝皆が起きたのを確認したジェイドは、朝食を摂りながら昨日の移動距離から逆算して、早ければ今日の夕刻には王都に着けるだろうと一行に説明した。
そして、冒険者ギルドは開いてるが、各派遣職の職業組合は朝6時からだとガーナが付け加える。
すると、大作が
「ならジェイド。お前は報告に行く前にギルドで俺たちの事を簡単に説明してくれ。その後リナリスを店まで送って依頼を完了させ、報酬の魔道具を貰えば良い。その間にカイルが大まかな事情を報告していたら時間短縮できるだろう。リナリスもギルドに連絡すると言ってたからその方が良いだろう?」
「そうですね。もし、私がオーガに殺されていることになってれば店が没収されてしまいますから、なるべく急がないと。・・・もし、最悪国に没収されてたらジェイドさんに言えば戻ってきますか?」
ジェイドはその問いに微笑みながら頷くと
「まず、ギルドに生存報告と魔物の種類、討伐結果と素材の消費を報告し、戻っている筈の冒険者の意見と食い違いのない事を確かめてください。その後、もし、没収されているのであれば、ギルドへ返却の申請と僕の名前を言っていただければ、一緒に行くのですから直接許可を出します。通常、遺体の確認が出来ない場合はひと月は国が管理することになっていますから、そのままの状態で健在の筈です。」
それを聞いたリナリスがほっとため息を吐き
「あの店は貯金をはたいてやっと手に入れた店舗ですからね。安心しました。それじゃ、早速帰りたいので移動しましょう。遠くまで採取に来ることから、食料は置いてありませんが、従業員がなかなか戻らないと心配してるかも知れません。冒険者に死亡報告を出されていたら尚更です。」
その言葉に皆、「確かに」と頷き手早く道具を片づけると、移動を開始した。
昨日と同じように昼までは何事もなく、見晴らしのいい場所で昼の休憩をしていた一行の元に、王都方角より家畜の様な小さい鳥がジェイドの肩まで飛んできて一枚の蝋で閉じられた封書を嘴で差し出した。
それを見たジェイドが納得顔で頷き、封書にサインをすると、鳥は元来た方向へ引き返していった。
それを見たカイルが
「おい、ジェイド。まさか王女様が言ったことが本当になったのか?気が狂った事による戯言かと思っていたが。」
「ん?何のことだ。王女が何か言ったのか?」
「ええ、王都から出発するときに、エリス王女に「もしかしたらタブラル兄様がゼリスに毒殺されかかるかもしれないから、できれば万能薬である「神の雫」か優秀な治療師を見つけてきて。」と言われていたのです。この件に関しては、大作さんの知識か魔法が頼みの綱かも知れませんし、遥さんの知識と水魔法の合成でいけるかも知れないと思います。仮に上手く行けば、大作さん達の功績が凄いですし、いきなり王家に招待できるかもしれません。」
その話を聞き大作が
「その話が本当ならあの鳥を呼び戻せるか?どんな毒かは知らんが、水銀を使用した遅行型の毒物用と色んな型の毒の症状を押さえる薬なら、手持ちに何個かあるから持っていかせてみろ。」
その言葉にジェイドとカイルは驚き
「そんな薬があるのですか!?待ってください、直ぐ呼び戻します。ピューーィ」
「大作は何でもアリだな。これで治ったら俺はお前を神と呼んで敬ってやろうかと思うくらいだ。・・・味方の場合は、だが。もし、敵の場合は他の何を置いても始末せんといかん位の重要人物だがな。」
「その仮定はどうでも良い。俺の疑問はお前らの姫さんが、そんな予想を出来た情報を何処から仕入れたか、ってことだ。言うまでもないが、俺でも何も情報が無いと今のような話を聞くまで薬の事など気にもしなかったし、あれば自分の役に立つ、位のつもりで持っているに過ぎん。何をするにも情報が命だ。人とは完璧な者は存在せんから人なのだ。「完璧な者」と言われるのであれば、そいつは今カイルが言ったように神と言えるだろう。」
そんなこんなで会話をしているとジェイドの元に先ほどの鳥が戻ってきて大作が「ほれ、これだ。」とジェイドに渡すと、鳥の足に括り付け、手紙に伝言をしたためて、また解き放ったいた。
それを見た大作が
「それにしても便利だな、家畜を使役する魔法でもあるのか?」
大作の質問にジェイドは
「これは、知能の低い魔物のみを使役できる召喚魔法の劣化版です。伝書鳩の様な使い方しかできませんが、指定した人の命令は聞いてくれるので重宝しますよ。本格的な召喚魔法のような大きい者まで呼び出せるような術ではありませんがね。」
「ほー。魔法も特殊な物もあるのだな。他に面白そうな魔法はないのか?」
その質問に「うーん」と呻いてから
「今のところはありませんね。と言うより、今の使役の術でも僕にしたらあって当然だけど、他の者は使えるか分からないので、いい忘れてただけですし。」
「そういうもんか」
とジェイドの答えにそう頷いた大作であった。
「それじゃ王都がどういう状態にあるか気になるし、早めにいくか。出来れば今日中に着いて確かめたくなったからな。」
「了解(わかった。)」
と出発する一行であった。
場所は変わって王都、エリスの私室。
ジェイドに伝えに行かせた使い魔が戻ってきたので何か進展はあったかと見れば、使い魔の足元に何かの包と手紙が入っている。
エリスが手紙を読む進めると顔が驚きに見開かれた。
「こ、これはホントなの!?って、使い魔に聞いても分からないか。とりあえず、父様に知らせた方が良いわね。」
そこで、エリスは筆頭メイドであり親友のレイネを呼ぶべく手を叩く
パンパン!
部屋に小気味いい音が響いたかと思うと、数秒後
「呼んだ?エリ・・じゃなくて。お呼びでしょうか、エリス様。」
その対応に苦笑すると
「普段道理で良いわよレイネ。ここには私たちしか居ないわ。それより、この薬とこの手紙を父様に渡して来て頂戴。ホンの少量なら即効性のある毒物でも治る可能性があると書いてるから、急いで頂戴。」
それを聞き、手紙を読むと、エリスと同じように驚愕するレイネだった。
「い、今すぐ持っていきます。それではこれで。失礼します。」
バン!!!
と、余りに急いでいるため王女の部屋だと言うのに物凄い音を響かせ扉を閉めて行ってしまった。
「・・・もう少し、落ち着いて行動できないのかしら。」
と、友人の行動に眉間を解すエリス王女であった。
そして、タブラル王子の寝室にて、息子を看病する母シレーナと父ゴーランの姿を隣で見守るエレナはふと、扉がノックされる音を聞き
「誰です。」
と、少し強めの口調で聞いた。
無理もない。
兄である第一王子がよりによって、末の弟である、第二王子のゼリスに毒殺されかかったのである。
弟は牢に入れ動けない様に手かせと足枷を付けさせているが、安心はできない。
姑息な手段において、弟は類稀なる才能を発揮する事は、これまでの生活で解っていることだ。
次に狙われるのは自分かも知れないと、不安になるのが普通である。
「エリス様より、配下の近衛であるジェイドが、旅の者と知り合い、色々と説明が長くなりますが、信頼できる者から薬を譲られたとのこと。そして、使い魔にエリス様に届けさせ、エリス様が拝見して直ぐにタブラル様に届けよと申され、持ってきた次第です。」
その報告を聞きエレナは驚いた。
あのエリスは普段は権力争いから逃げるために無能を演じているが、姉である自分はその智謀と知識、観察眼を高く評価している。そして、彼女特有の個人スキル鑑定眼は見ただけで物の品質が分かるばかりか、嘘を見破れるかなりのスキルだ。
そのエリスが物を見て直ぐに持って行けと言ったという事は、毒の進行を止める薬か、もしくは治療できる薬なのだろう。
エレナは直ぐに入室を許可する
「どうぞ。入りなさい。」
と入ることを許す許可を与えた。
「失礼します。」
と、静かに入り、エレナに薬と手紙を渡し部屋を出るレイネ。
「ありがとう。」
と、そのレイネに礼を言うエレナ。
そして受け取った手紙を読み、エリスが付け足したと思われる薬の詳細、そして、譲ったと思われる者の注意書きを見て、一先ずの安心と油断の許さぬ状況に気を引き締める。
そして、父に薬の事を話す
「・・・ということです。他にいい手がない以上少しでも打てる手は打ちましょう。後はその手紙にあるように、ジェイドが連れてくる者たちに賭けましょう。」
「そうだな。現状、それしか手が無いか。良し、シレーナ、とりあえずこの薬を飲ませて様子を見よう。」
そういって、息子に薬を飲ませて娘の側近が帰るのを待つしかない家族であった。
場所は戻って、漸く王都が見える所まで来た大作たちは、王子が毒殺され罹ったのに余りそれらしい事態に陥ってない王都を見て訝しげに思うが、ジェイドの
「恐らく、まだ公表していないのでしょう。報せを出せば王都中がザワついて要らない噂が広がるのは広がるのは目に見えていますから。」
とのジェイドの判断にそりゃそうか、と思う一方でそこまで統一された意識を持つ一方で失敗したとはいえ毒殺するまでの工程を用心されていたにもかかわらずやってのけたゼリスと言う奴に興味を持つ大作であった。
そして、夕暮れに近づいた頃、漸く王都の門までたどり着いた一行は、門番への説明をジェイドに任せて、門の横で休憩していたのだが。
「おい、なんだあれ?」
「みたこと無い魔物だけど、大丈夫なの?」
「城の衛兵かギルドに連絡するか?」
などなど、どの声も魔道具らしいと噂する声は聞こえてこない。
そうして待っているとジェイドが話を終えて、門番が周りに説明してやっとこさ王都内に入るころにはすでに辺りは暗くなっていた。
「じゃ、俺はここから直ぐに王城へ行き、事情を説明してくる。例の薬の事で何か進展があれば誰の持ってきた薬か聞かれる筈だから、とりあえず冒険者ギルドで待っててくれ。ジェイド後頼むな?」
「ええ、くれぐれもあまり下の方には漏らさぬよう頼みますよ?」
「任せとけ」
「では、我々は冒険者ギルドへ参りましょうか。もしかすれば、大作さんの周りが安全になるかも知れないですから。急ぎましょう。」
こうして、7人はビリーたちに乗ったまま、王都の冒険者ギルドへと向かった。




