ギルドでの一幕2
魔剣のポテンシャルが明らかに!
ワシは大作の家から不知火という物を連れて戻ると大急ぎでBランクチームの剣を扱うのに長けた者を呼ぶ。
「黄昏の翼のトライとリムは居るか?」
「ああ、ここにいるぜ?それより魔物の件はどうなった?それに、えらい別嬪さんを連れてるが、誰かの所に行ってるフリをして女の尻を追っかけてやがったのか?」
呼ぶとすぐそこにいたらしい。
魔物の件は終わったことなので、急ぐ必要もないだろう。
それに、やはりというべきか、この少女の事をワシが町で引っ掻けて連れ込んだ女と思って「やれやれ、困った爺さんだ」という感じに肩をすくめておる。
腹立たしいが、この御嬢さんの容姿を見れば誰でもそう思うじゃろうから、全く否定できん。
・・・そういえば、王城のカイルとか言うのがよくギルドに出入りしていたな。
アイツにも王城に報告に行かせる序にこの魔道具の性能を確かめさせるか。
確か剣の魔道具を扱っていた筈じゃから、試には丁度良いじゃろう。
「その件に関してはすでに解決済みなんで、冒険者の諸君には迷惑を掛けたが解散してくれて問題ないのじゃが、トライとリムは少し待ってくれ。話がある。あと、リーゼ。王城のカイルとかいうのを呼んできてくれ、今回の事情に関する事なんでその方が都合が良いじゃろ。」
「?俺らは構わんが、なんだ。」
「例の大作というのに会って事情を聴いたのじゃが、実はの・・・・」
ワシは奴に聞いた話をしたあと、例の魔道具を説明用の商品と共に冒険者連中に見せた。(勿論、お嬢さんが娼婦になろうとする物だとは伏せておいた。後でどうせばれるじゃろうが・・・・。)
すると、帰ってきた反応が・・・・。
「おいおい、こりゃー何の冗談だ。これが唯の説明用だと?これを広めるだけで一財産作れるくらい画期的な商品じゃねえか。それに、商品自体も馬鹿げた性能してやがる。これを開発した奴ァーどこの天才様だ?こんなアイデア、今まで考えたことねえぞ。」
と赤髪のトライが口元を引き攣らせながら言った。
「それに、この魔道具もだけど、仕組みが全然分かんないわ。なんで、こんな部分がこれほど簡単に開け閉めできるの?知り合いの鍛冶職人でもこんなことを出来るって言うか、やろうとする人もいないわよ。この、構造とこの記憶媒体のセットはかなりの可能性を秘めてるわよ?」
と青髪のリムも同意する。
そうなのだ。大作の処では反応は極力しなかったが、この商品の一番の画期的アイデアは柄の記憶媒体を収納する部分にある。
持ち手の部分を太くなり過ぎない様に抑えながら、記憶媒体を入れるスペース作る。
一見簡単そうじゃが、専門家でもない者がどう弄ればいいのか見当もつかん。
「言いたいことはワシも聞かんでも解るが、今度この開発者がギルドに来たときに聞いてくれ。それよりもこの性能を確かめてくれと頼まれておるのでの、どっちか試し切りしてくれ。記憶媒体と説明書はさっき見せた通りじゃ。」
そういうと、再び説明書の説明を聞いているのじゃが・・。
「おい・・・。こいつの言ってる事は本当なのか?これが事実なら、今の魔法の概念が吹き飛ぶぞ。」
「・・・ワシも、これほどの馬鹿げた説明とは思わなんだ・・・。取りあえず、少し位は解かる、この風の魔剣タイプで試にそこの岩を斬ってみてくれ。やはりそこにその岩は邪魔じゃからの。除けてくれれば助かる。」
「解かった。やってみよう。・・・まず、柄の蓋を外し、媒体を入れる。この時媒体の魔法陣が柄の内部の魔法陣に合わさるように向きを合わせる。そして、蓋を閉め、魔力を篭める。・・・おおー、マジで風が剣の周りに纏わりついてるこれなら一々その用途に合った魔剣を用意しなくても専用のこの魔剣と記憶媒体があれば一本で助かって経済的だな。・・・よし、切れ味の方を試すぜ、ちょっとそこ退いてろ!」
そして、トライが岩に向けて剣を振り下ろした瞬間、風がそれまでは剣の周りを唯纏わりついていた物が、いきなり方向性を持ち、進行方向の物を切り裂く事に特化した武器へと変わり
スパッ!
と、見事なまでに真っ二つに岩が切れおった。
その状況に周りもしばし絶句し、徐々にその凄さが伝染していった。
「ははは・・・、こいつは凄すぎじゃねえか。個人の魔力の質は一切関係なしって事だな。んじゃー、次は・・・おお!これはどんな効果か興味あるぜ。」
といい、今度は重力によって重さを変える魔剣を選ぶ。
普通は重さを変えると言えば剣自体の重さと思うが・・・・。
「?大して、どころか全然重くなってねえぞ?失敗作か?・・・・ほい!」
ドカーン!
「「「・・・・・・・・・・」」」
剣でなく、剣が与える衝撃の重さを相手だけに伝える物だとは・・・。
「・・・ねえ、あたしみたいな女性がその魔剣を使っても同じようになるの?」
「・・・試にやってみるか?」
「貸して!」
トライの返事を聞いて、引っ手繰るように魔剣を奪って魔剣に魔力を篭めるリム。
何故か目が座っておる。
「行くわよ?せーの!」
ドッカーーン!
と、先ほどのトライの何気なく振り下ろした一撃と違い、喜々として振り下ろしたリムの一撃は、残っていた岩を粉みじんに粉砕していた。
「・・・・・・」
シーーーーン・・・・
しばし、周りに沈黙が流れ、次に来たのは
「じゃーさ!じゃーさ!このカスリ傷に最適ですって言う治癒の魔剣は?剣が治癒ってのも変だけど。」
確かに・・・・。
「まー、ココまで驚かせてくれたんだ、もう何が起こっても驚かねえわ。」
まー、その通りじゃが。
嫌な予感がするんじゃよな、ワシ・・・。
「じゃー、誰か怪我してる奴いるか?居たら試してやる、説明では、これは斬るんじゃなく、翳すって言ってるから、怖くない筈だ。」
そういうと、近くを通りかかった老人がやってきて
「なら、この傷を治してくれんか?どうにもこの歳では治るのに時間が掛かってしまって、もう二日もこの傷が治らんのじゃ。」
そういって、傷口を見せる老人じゃが。
「おい・・・、これ中が見えてるじゃねえか。これはかすり傷て言うより裂傷だぞ。幾らなんでも無理じゃねえか?まー、物は試しでやってみるけどよ・・・。」
そういって、魔剣を傷口に翳すと、剣から何やら光が出て、傷口を照らすと、見る見るうちに裂傷が治って行った。
これには今までで一番驚いた。
老人も、己の元あった傷口の状態を見て
「おおーー!これは奇跡か?あー、ありがたやありがたや。」
といって、剣に頭を下げている。
それからは壮絶じゃ。
なにせ、これを作った奴を紹介しろという奴の人だかりが出来たのじゃからの。
見れば不知火の嬢ちゃんがそれを見て誇らしげに微笑んどる。
まー、自分の主が開発した物がこれだけ多くの者に受け入れられるのなら、それも分かるがの。
これから、ギルドで奴に依頼する依頼書がカウンターを埋め尽くす様になって奴の時間が削られん事を祈るかの。
そう思い、リーゼに連れられてこの騒動を見に来た、カイルに詳細を説明し、後の事を頼むと、ワシは再び領地経営の仕事に追われる毎日に戻った。
・・ん?ギルドでの仕事はどうするかじゃと?
ンな物、ギルド職員の勉強に使うにきまっておろうが。
何時までも年寄りに頼っていて貰っては後輩が育たん。少しは忙しい時の対処法を実地で学んで貰わんとな?
自分がめんどくさいのが嫌なだけなんじゃないか?
当たり前じゃろが!
ひょーほっほっほっほ
こうして、ワシは領地に戻った。
がしばらくして、また戻ることになろうとはこの時は全く予想が付かんかった。
ギルマス視点で書きました。