竜谷での患者訪問と意外な大作的召喚魔法の制限予測
「おーい、帰ったぞー。リンダにロンドはいるかー?」
竜の親父に呼ばれて出てきた竜は親父とほとんど変わらない竜だった。
「なんだ、親父。ポールの葉は見つかったのか?それともいったん休憩か?」
「いや、探してる途中で面白い人族にあったんでな。連れてきた。安心しろ。少なくても話を聞かない奴らではない。しかも、場合によれば治せるらしい。」
竜の親父の言葉に驚き、俺達を見たロンドは
「お前らか?ホントに治せるのなら有難いが。まあー、期待せずに任せるよ。」
と、見るからに信用してないと言った感じだ。
「まー、実際に見てみないと何とも言えんから仕方ないか。ガウェインも一緒に鑑定眼にて検診してくれ。・・・それとジェシカも。何か必要な物があれば言ってくれ。場合によれば魔法で出す。」
「解りました。」
「ではこっちだ。」
といつの間にか人型になっている竜の親父に案内を任せ、俺たちは後に続いた。
「おー。見事に変色してるな、これは。ジェシカ、これだけ浸透した毒なら治療魔術で治すか?」
問うたのは治療の仕方。
パッと見で美しい白い竜の鱗が、一部のみ斑模様の紫に変色している。
この理由は、この毒が周囲に毒をまき散らす無味無臭透明の厄介な毒と違い、変色部分からのみ効果を及ぼし、体内に浸透するタイプからだという事。
毒を使うプロのやり方にしては、恐怖は存分に煽れるが使った自分が見れば毒の進行具合一目では解るし、恐らく手遅れになる(この場合死ぬ)一歩手前で解毒のブレスを掛ければ浄化できる、脅しに使うにはもっとも効果的なやり方だ。
俺は一目見て、皮膚から毒が浸透するタイプだと判断し、ジェシカに魔法・・・で無く魔術の方を試す方が良いか判断を任す。
違いは簡単、治療魔法は主に体の表面の異常を取り除くことに優れているが、治療魔術はその意志の強さで体の内部にまで影響を及ぼせる。
この世界(衛星からの情報により地球ではないことは確認済み)の医療事情を調べてみたが、魔法と言う便利な力があるのにも係わらず風邪や皮膚病のように内部の方から汚染される病気で無くなる者は意外と多いようだ。魔法がある所為で体の内側に目を向けられず、外見の以上だけを取り除き、腕は怪我の痕跡が無いのに肩から動かずに機能を果たせていないと言った事もあるらしい。
この点では治療魔術は最高のパフォーマンスを発揮する。なにしろこの世界で今までやったことが有るのか分からないが元の世界の様な体を解剖するとか、切り開いて中の異常を取り除き、再度閉じて体を治すと言った事を試さなくても治療できるのだから。(念のため説明すると、相手が竜であるから治療魔術であって、人間であれば大作の知識を持つジェシカならば治療魔法で大体の病気と怪我は治せる。要は血液の循環に影響を与え悪いと思われる菌や腫瘍を口から吐き出させるだけで事足りるのだから。)
「少し触診してみないと解りませんが、魔術でなくとも魔法でいけるのではないでしょうか?竜の体の構成が分からないので判断は付きにくいですが。」
・・・うーん。それなら。
「ガウェイン。熟練度を上げる序だ鑑定眼で確かめて、悪いと思われる箇所をジェシカに報告し、ルードはこの空間を治療に適した温度に常に保つようにしろ。三人での共同作業だが同じ俺の知識を持つものだからやり方は云わんでも解るだろう。俺の護衛はその間この竜の親父に頼む。脅しになるが、こちらの護衛が無い状態では治療できないのだからな。自分の娘の為だ、治療する者を殺すことは無いだろう。」
それを聞いた竜の親父は苦笑したが
「まあ、仕方ないわな。我らのために護衛を使ってくれるのだ、その間は護るくらいはしないと同族に器量が小さいと笑われてしまう。・・・という事なんで、お嬢さん、そんなに睨まんでも彼を襲うような事はせんよ。」
・・おー。なんか、遥が凄い形相で親父を睨めつけてる。親父もタジタジだw。
「まー、なんだ。取りあえず、三人ともよろしく。さっきも言ったが必要な物があれば言ってくれ。最悪、明日になれば魔力も回復して・・・て、色々ありすぎて忘れてたが。もう昼時なのに飯食ってないじゃん。幾らジェシカとガウェイン、ルードでも飯も食わずに魔力を使ってたら、そのうち魔力切れになる。・・・って事で。親父、ここらで魔素の詰まった肉は無いか?恐らく俺の魔法はそこまで異常じゃないと思うから、これはカンだが俺自身や俺の召喚した物は俺の召喚した食いものや薬草は食っても意味がないと思う。・・・と言うより、そんなことできたら普通に異常な長寿薬やら不死身薬、果ては神化の薬も作れて向かうとこ敵なしだ。アンタが俺以外にも見たことあると言ってた時もそんなに警戒した様子は無かったから、出来た奴が居なかったって事だろう。もしいたら、ノコノコと自分の里に連れてくるような馬鹿な真似はせん。俺が同じ立場なら、間違いなく種族のために殺すからな。だから、そんな能力は無いとみて間違いなかろう。どうだ。親父?」
俺の親父と言う発言に苦笑しつつ
「確かに、今まで会った中でお主の言った様な事をした者はおらんな。それに、お主も言ったように、そのような者が居たら全世界の全種族が危機感を持ち悪魔といって封印するか、塵も残さずに滅するだろう。・・・ま、その話はさておき、肉なら外の食料庫に保存しているので食って来なさい。来る時も言ったが我らは寿命が長い分気が長い。一年でも10年でも待てるから色々試してくれてもいい。私も外に出て狩をしてくるから、毒が治ったら連絡してくれ。ではな。」
竜の親父はそういうと何処かへ行った。・・・ま、任せてくれるって事か。けど一応、護衛も頼んだつもりなんだが・・・。
「まあいいか。とりあえず、飯を貰いに外に行こう。治療は食ってからだ。」
「「は!」」
今、俺たちは親父の言ってた倉庫と思われる所に来てるわけだが。
「「何この大きさ!」」
「非常識です!」
「・・・・・」
俺と遥、ジェシカ、ガウェインだが、共通するのはそのスケールの違いに圧倒されている事。
なにせ、肉が特殊な結界を張られている場所(竜も魔法を日常的に便利道具として使う)に無造作に積まれているのだが、その大きさが優に王都の倍くらいの面積があるのだ。
「・・・では、ジェシカ。調理は頼んだ。・・・そういえば包丁を渡してなかったな。今作る。」
基礎魔力7
召喚物 魔力付与型刃物 数1 1
包丁(銘大作)
計1
残り6
「よし、長さが少し短いがなるべく硬くて薄い物をイメージしてから、切れ味は大丈夫だと思うし、魔力を流した分だけ切れ味が増すからヘタな名剣より使いやすい筈だ。決定。OK。・・・ほい、ジェシカ。これで、上手い飯を頼む。と言っても肉しか見当たらんが・・・。」
「いえ、大丈夫です。大作様の口に合う、美味しい味にしてご覧にいれます。」
「・・・・そうか。楽しみにしてる。・・・聞かなくても分かるが、遥は。」
俺がニヤつきながら、流し目を送ると
「う~~。私が料理出来ないの知ってて言ってんでしょ!大ちゃんの馬鹿ーーー!」
と、顔を真っ赤にして怒り出した。クックック。狙い通りの反応をしてくれる、面白い奴だ。
それから、ジェシカの料理が出来るまで、遥の訓練の見学をしてガウェイン達にも訓練をさせた。
そして、食事も終わり、いよいよ治療に移ることになった。
次は遅れます。かなり