竜族との出会いと竜谷の存在
今俺たちはパソコンに移っている画面を通してルードの見ている風景を見ている。
王者の波動を付けている所為か、はたまた眷属支配の所為か、すれ違う鳥類にひたすら会釈されているルードと、その様子をルード視点とビーの端末視点から同時に見て、面白いと話し合っている所だ。
「お、その下がフリートルの葉の群生区だ。そろそろ降りてくれ。」
「了承」
そして、地面に降り立つと、ルードは目的の葉を採取して闇に放り込み始めた。そして、50枚ほど集めて闇の中に収めた所でふと地面が黒くなった。そして、見上げると大きな翼を広げた竜がルードを見下ろしていた。
「ん?先客がいたか。ああ、君、構わんから作業を続けなさい。私の目的は、ここらで極たまに発見されるポールの葉だ。君の邪魔はせんよ。」
そういって、竜は普通に人型(20歳くらい)に変身し、辺りを探し始めた。
その頃、大作たちは急な竜の出現と大人しい様子に狼狽えながらも聞くことは聞いていた。
「なあ、リーゼ。ポールの葉ってどんなのでどんな効果があるんだ?」
「形はフリートルの葉より二回りほど大きく、種族を問わずどんな傷や、病気も癒す効果があります。この辺りのは既に無くなっていた筈ですが。私もあまり存在自体を知らなかったのですが、噂では遥海の向こうに竜谷と言われる竜の集落があり、数千年単位で生きているとか。そして、それだけ長く生きていると当然普通の人族が勝てるような魔力ではないので竜族を発見したら刺激だけはしない様にとの言い伝えです。そして、そんな竜族が使用する傷を癒す薬がポールの葉をすり潰して液体状にした塗り薬です。まー、こんなことを言う私も伝承でしか知らない生物ですがね。」
ほー、元の世界のアニメやゲームの魔物みたいだな、面白い。
{ルード、なぜ薬がいるか訳を聞け。そして、場合によれば作れる者もいるし、治せる者もいると教えてやれ。}
「竜、我、主、傷、治療、薬、作製、可能。更に、治療、可能、者、有。我、同行、同意?」
そういって、聞いたルードに竜は
「ふむ、実は息子が邪竜と喧嘩してな。その邪竜が悪あがきで放った毒のブレスが横で監視の為に見ていた娘に当たったのだ。ブレスの為怪我はないが、あ奴らの毒は厄介でな。普通の毒消しでは弾きよる。そこで、ポールの葉で作った薬の出番じゃ、しかし・・・・。お主の主と言うのは人か?私は基本人は信用せんのだが。気を悪くするだけかも知れんぞ?我ら竜族は毒に掛かったと言っても、その生命力の高さから、直ぐには死なん。直ぐに死ぬ奴でも100年は生きる。100年と言えば人間には長すぎる位の寿命だろう。だから、我らは気楽に探すだけだ。」
・・・基本か、でもそれなら今のルードも人型の筈だが、なんで普通に話しかけるんだ?
{ルード、お前にはなぜ話しかけるのか聞いてくれ。}
「竜、何故、我、会話、求?我、人型」
そこで竜の青年は笑い
「はっはっは!その、魔力の質で人だとは笑わせる。更にどう見ても、中身は、と言うより核たる骨は鉄の塊だ。久方ぶりに見たが、おぬしの主は物をこの世に出現させることの出来る者であろう。故に、人であるおぬしの主は会って話をしなければわからんが、物たるお主は警戒する必要など無いと思ったまでだ。」
へー、普通に魔力の質まで見えるのか。 流石古い種族だな。 よし、決めた。
{ルード、その竜にその場で待って貰ってくれ。そして、お前は戻ってきて、俺らを乗せてそこへ連れて行ってくれ。話がしたい。}
「主、竜、面会、求む。この場にて、待てるか?」
「おう、いいぞ?来るなら別にかまわん。俺も純粋な人を見るのは楽しみだ。こことは違う国で、良く混血は見るけどな。」
「では、行く」
「おう、待ってるぞ。」
場所は戻ってギルド
「って事なんで、ちょっと行ってくる。もしかしたら、あっちの集落に行くことになるから、カイルには申請と達成確認の報告だけしといてくれと言っておいてくれ。では・・・。行くぞ。」
「「おー」」
なんだかんだでジェシカもノリが良くなったのか?
「待たせたか?主」
ギルドの外で少し待っていると、小鳥程度の大きさになっているルードが俺の肩に止まり、聞いてきた。
「いや、それほどでもない。さー行くか、と言う訳にもいかんな。この街中でルードが大きくなれば、騒ぎになること間違いなしだ。取りあえずは町の外だな。」
「「了解」」
と言う訳で町の外に出てきた一行。
「では、ガウェイン。幾ら町の外とはいえ、いきなり小鳥が大鳥になっては噂が立ちかねん。幻影の結界を張り、周りから見えん様にしろ。」
「・・・・(解りました。)」
ガウェインが何か呟いた直後、辺りは景色が少し変わっていた。
会話が無いのが難点だが、使えるから良いか。
「では、ルード。俺達全員を乗せられる大きさになってくれ。ガウェインは人が見える限界の高さと距離になるまで幻影を維持。」
二人は頷いて行動した。
途端にルードは高さ3メートル横幅10メートル前後の距離10メートルの巨大すぎるフェニックスとなった。それに合わせ、結界も30メートル四方まで広がった。
・・・これは、大きすぎるぞ。限度と言う物を知らんのか!・・・言ってない俺も悪いが。
そして、俺と同じ感想を持ったのか、遥が
「ちょっと!ちょっとちょっと待ってよ!これは流石に大きすぎない?安全だろうけどさ。乗るのが一苦労じゃない。」
・・・問題はそこなのか?
「それは、心配ない。ルードに風を操らせて乗せさせればいい話だ。・・・ルード?」
「了承」
短い答えと共に俺たちの体が浮き上がり、その背に乗せた。
「行く。」
「頼む。」
そして、再び竜族とのコンタクトが始まる。
そして、現在。
目の前には普通の人にしか見えない20歳位の男性。
「おお、案外早かったな。それ程急がずとも一年位は待っていたぞ?まあ、人間と私たちの寿命の違いでせっかちなのは仕方がないが。それはそうとお主か?そこな鳥の主と言うのは。確かに珍しい魔力の質だな。しかも、私の知っている者の魔力の質とはまた違った感じだ。間違っていたら謝るが、お主、自分では魔力を外に出すことは出来ないであろう。何かの物質、たとえば人で言うところの魔道具によって無理矢理出すことでようやく魔法を行使できる。違うか?」
・・・凄いな。そこまで分かるのか。 見れば遥も俺の方を見て驚いてる。
お前は知ってる筈だろうが!
「よく解るな。それはお前ら竜族の特殊なスキルか?」
青年は首を振り
「いや、私たちの間にも出来る者と出来ない者はいる。言うなれば長く魔力に触れている古竜がそうだ。心配せんでも、お主らと同じ人族なら出来る者は居まい。高が100年や200年の研鑽で出来る者ではない。試にお主の魔法でもやってみたら面白いだろう。出来る事と出来ないことが分かるいい機会だ。」
・・・流石に長生きの種族だ。俺の他にも何人か似たような者を見たことが有るのかもしれん。
「それは、明日にでも調べるとして、まずお前の娘の罹った毒を確認せにゃならん。そのため、お前らの住処に行かねばならんが。・・・大丈夫か?」
「それに関しては気にせんでも構わん。どうせ場所を知った所で普通の使い魔や人間がおいそれと近づける所ではない。それに、我らの住む谷は魔素溜まりとなっている。故に使用者が任意に魔力を篭めるタイプの魔道具は誤作動の可能性が高い。お主の召喚物には関係無いようだがな?魔力を自動で吸収し半永久的に稼働するタイプだろう?お主の僕どもは。」
便利な目だ。そんなことまで分かるとは。それに熟練度も文字道理桁が違うだろうから、多少の知識差は問題にならん位の威力と仮定しないといけない。もし、元の世界に帰れないような場合には、この世界の征服を考えていたが、どうやら国までが限界らしいな。
「では、心配する事も無くなった所で・・・ビー。居るか?」
「はいな。」
「これから俺たちは竜谷に向かうから依頼の葉をギルドに届けて、完了の手続きは待ってもらう様にリーゼに伝言を頼む。・・・ルード。」
「了承」
そういって、ルードが光の中からフリートルの葉を出し、ビーに渡す。
「確かに。では行ってきますさかい。ご主人も気いつけてや。」
そういって、ビーはギルドに向かい飛んで行った。
「では、俺たちも行こうか。」
「「おー」」
大陸を離れ、現在東の海の上空を竜の先導で移動中。
スピードは速いがガウェインと遥のの訓練の為、ガウェインには結界の常時展開をさせ、遥には風の魔法で向かってくる風の塊を受け流す円錐型の盾を前面に張らせて風よけを作らせている。
これがまた、スピードがスピードだけに良い訓練に成ってるらしい。
しかし、竜はそんな風にもお構いなしで悠然と飛行を続けている。
曰く「我らがこの程度の風でスピードを落とすなど有り得んよ。赤子でももう少しスピードを上げて飛行できる。」
らしい。
まあ、これが、潜在的な実力差なのだろう。
そして、これだけの実力差があれば人間の国を落とすのは容易いだろうに、何故しないのか聞けば。
「それでは、逆にお主に聞くが。地べたを這い回るアリどもを征服しようなどと思うか?従わせて優越感に浸ろうなどと思うか?思わんだろう。我らも一緒だ。簡単に捻りつぶせる弱者を苛めるほど飽きるのが早く来ることは無い。偶に暇を持て余す研究者肌の一部が、人間に変化して長いことじっくりと観察と実験を繰り返すくらいだ。他の者は自分らの住みよい谷で終生穏やかに暮らすのみだ。偶に邪竜と喧嘩してな?」
「疑問に思ったが、その邪竜の目的は?」
「繁殖だ。」
「ぶっ!」
おー、遥が盛大に噴出した。・・・まー、解らんでもないが。
「何故、邪竜が繁殖で毒のブレスなんて使うんだ?自分の子を産む者に死ぬような攻撃をしてどうする。」
「それは、見解の相違だな。我ら竜族はとにかく強い者を好む。自分の最大の攻撃に耐えられる者なら喜んで繁殖をすることだろう。そして、攻撃をされた側も自分を殺せる程の攻撃を繰り出せる相手なら、伴侶に相応しいと喜んで体を許す。我ら竜種はそう言う者だ。・・・断っておくが。邪竜と言っても人間どもの考える意味と我らの考える意味では全然意味が違うからな?謂わば竜族の種類だ。我ら竜族には四種類の竜種がいる。
一つは私たち古竜。
一つは邪竜。
一つは聖竜。
一つは皇竜。
まー。一般には私たち古竜が数が多いがな?他の竜種が何処に居るか私たちにも解らん。更には竜種の上位存在となる龍種もいるしな。違いを挙げ出せば限がないし、そろそろ着くから話は今度だ。・・・とその前に客だな。小賢しい。」
と前方を見据えて吐き捨てた。
確かに、前方の空間に歪みが見える。そして、竜が「波ー」とブレスを吐くと、前方の歪みが消え黒い竜が現れる。
「いやー、お父さん。娘さんは無事ですか?私の妻にしてくれるなら解毒剤くらいは用意しますよ。出来れば自分の力で乗り切って欲しいですが。」
「ふん、確かに貴様のブレスは強力な様だが息子に勝てないようでは娘をやるのはまだ先だ。」
「それは残念ですが、仕方ないですね。出来れば死ぬまでにOKをしてくれることを願います。それでは。また。」
そういって、空間の歪に消えて行った。
・・・なんだ?あの魔法は。空間に関係する魔法か?便利そうだな。
「フウ・・・。奴は力はあまりないがブレスだけは強力だから、私たちも認めない訳ではないが。もう少し、力も付けてほしいのだ。そうすれば、娘との間の子も強力になるのだからな。」
・・・うん。まんま人間界の政略結婚と同じだな。他の種族でも同じように行われたとは意外だが。
「ま、また来るだろうから、後にして、今は娘を見てやってくれ。治してくれるのであれば後で礼は約束する。」
「そうだな。俺もどんな毒か興味が出てきた。場合によれば明日に魔法で治療薬を作ることになる。」
「それなら、今日は泊まって行け。歓迎しよう。」
「お言葉に甘えよう。」
そうして、俺たちは竜谷に足を降ろした。