第五話
日曜日。
今日はダブルデートの日。
一月はいつにも増して張り切っている。
「じゃあ達也!午後7時まで、一緒に行動。その後別行動だ!いいな?」
「はいよー。」
なんか今日の一月は怖い。
「よし!待ち合わせの場所に行くか!」
「一月。」
「なんだ?」
「頑張れよ。」
「あぁ。すげーきんちょうすっけどな。」
俺らはハイタッチをして家を出た。
待ち合わせの駅にはもう二人はいた。
愛子が手を振っている。
「もー!遅いよー」
愛子がほっぺをふくらませてだだをこねた。
「ごめん、ごめん、一月が準備遅くって。許せ!」
と言って、愛子のでこをコツンと指でつついた。
「じゃー行こっか!」
明菜が張り切ってそう言った。
電車で約一時間半。ついたと同時に見える、大きなジェットコースター。
四人は遊園地の中に入っていった。
最初に乗ったのは入り口からも見えた大きなジェットコースター。俺は高所恐怖症でジェットコースターは大の苦手だ。
しかし、ここで引き下がっては男ではないと思い、勇気を出し乗りこんだ。
ジェットコースターに乗り終えると、頭がくらくらして倒れそうだった。
楽しい空気を壊してはいけないと我慢した。
お化け屋敷、バイキングと次々と乗りこなしていくうちに約束の時間になった。
一月が言う。
「では、別行動タイムでーす!二人だけの世界に入っちゃいましょうー!」
と言い。一月と明菜は夜の遊園地に消えていった。「あそこ座んない?」
愛子はベンチを指差した。
「うん。」
俺たちはベンチに座った。
長い沈黙…
何か話そうと思うのだが何にも出てこない。
しかも、心臓が飛び出そうだ!
なにかはなさきゃ。
そうだ!
と俺はひらめいた。
「いいとこ連れてってやるよ!」
そう言って俺は愛子の手をとり、走り出した。
「ちょっ、どこ行くの?」
不安な顔をする愛子。
「いーから、ついてくりゃ分かるって!」
電車に乗って○×駅で降り、山を登る。
「ねー、どこ行くの?」
ますます不安になる愛子。
「目閉じて。」
そう言って俺は愛子をそっと歩かせた。
「目あけていいって言うまであけんなよ!」
「まだ?」
「いいよー!」
愛子はパッと目を開けた。
「うわー!」
と愛子は歓声をあげた。
俺らの前には星のように輝く美しい夜景。
「これをあたしに見せたかったの!?」
満面の笑みで聞く。
「おう!」
「すっごーい!ありがとね!」
俺は自分の気持ちに素直じゃないな。俺は愛子が好き…なのかもしれない。
「星ってきれいだよね。」
愛子がボソッと言う。
「星ってあんなきれいに光ってるけど、いつかなくなっちゃうんだよね。人間も同じだよね。人間もいつか死んじゃうんだよね。」
悲しい顔をする愛子。
「違うよ。人間も星も星に還るんだ。前に本で読んだことがある。形ある物みないつかなくなる。けど死ぬわけじゃない。星に還るだけだって。だから、またどこかで逢えるんだ。」
「そっか。またいつか、逢える…か。」
また悲しい顔をする。
「どうした?さっきから変だぞ?」
「そんなことないよ!」
そっけない笑顔をみせる。
「なんか悩んでんのか?好きな人でも出来たか?」
と冷やかした。
「うん…でも…」
「でも?」
「元カレに未練があって。あたし、今なら話せる。だから、聞いてくんない?達也になら話せるんだ。誰にも話せなかった気持ち。」
俺は静かに頷いた。
「あたしね、前に二年付き合ってた彼氏がいたんだ。でも、その人下校中事故で…それ以来あたしは彼氏を作っても長続きしないの。あの人のことを思い出してしまって。忘れらんなくて…」
愛子は泣き出してしまった。俺は励ますように言った。
「別に忘れる必要なくね?その人は今も自分の胸の中、思い出の中にいるんだよ。それに、愛子の元彼は星に還っただけじゃん?だから、またどっかで逢えるって!!」
「そんなこと言われたって…グスンッ」
泣き止もうとしない。
「俺もさ、三年付き合ってた彼女がいたんだ。でも、そいつに二股かけられちゃってさ。バカな話だよな!三年も一緒だったのに全然気づかなかったんだぜ!ハハッ…」
本当は俺だって傷ついてんだ。けど、愛子ほどではない。けど、泣いてほしくないから、愛子の笑う顔が見たいから。でも、そんなこと言えるはずがない。本当は俺だって今日告白したかった。けど、そんな勇気…
俺にはなかった。