16 変わってしまった港町。2
「それよりもアル…………オレたち、目立っている感じか?」
「……多分」
騒ぎを聞きつけた町の自警団に囲まれて、曖昧に答える。目立っていることに違いないが、何に対して目立っているのか。
男が一歩、前に出る。
無駄に着飾った、いかにも『貴族です』という姿はおそらく、ガルンの町長だ。
「ウチの大事な金……もとい、商船に手を出したのはチミたちかね?」
『チミ?』
声を揃えて首を傾げる。
キミと発音したつもりなのだろう。どこをどうすれば『キ』が『チ』になるのやら。
とりあえず、ツッコミ場所はそこだった。
「船に手出しはしていない。近くに外道が居たんで、ちょっと懲らしめただけだ。それがアンタの船員なら、アンタは外道を雇っていることになるが、反論は?」
挑発一つ。
嫌味を含めたわたしの笑みに、相手も負けじとニヤニヤと笑う。
「とんでもない! ウチのモットーは、あこぎな商売はしない。真っ当一番。
外道を懲らしめたなら話は別だね。まあ、感謝に値することだが、何が望みでやったんだか」
「………………その、腐った視力の回復」
治せないなら、視えなくなれ。
「何かね?」
「いや、別に。望みを聞く気があるなら、質問に答えて欲しいな。
――この町に黒紫の髪だが金髪混じりで、紫の目。背が高くて顔はイケメンで、細身の剣を携えてはいるが、パッと見は弱そうな優男が来なかった?」
「それが何かね?」
答える気はないらしい。だが、それだけで十分だった。
カインディスがこの町を訪れたという、確実な情報を得た。
あとはどこへ向かったか、だ。
「……いや、別に。そんな変な男がガルンへ向かったと前の町で聞いてさ。ふと、船に乗れるわけがない。誰も乗せてやらないだろうと思っただけ」
バカにした口調で言ってみる。
同意するか、憤慨するか。あるいは、無関心か。
ピクリ――と、町長の眉が動く。癪に障った可能性あり、だ。
「確かに、容姿にはいささか問題があるが、腕は間違いなく一級品。ワタシの町を脅かす魔人退治に、自ら名乗り出た勇者の愚弄は許し難いことだぞチミ」
心の汚い畜生なら、目の前に居るのに。