恋文
『貴方がここを離れて、どれくらいたったかしら?
一日前? 三日前? ――それともひと月?
私をそんなことも分からないお馬鹿さんにしたのは貴方だわ。どうしてくれますか?
私の侍女が言ったのです。
「恋は不安苦しみ九割ですよ。お嬢様」
今、それを痛感しているわ。
貴方がいない日々がこんなに味気なく、不安で、一個一個の動きすらナマケモノのように鈍くするのよ?
こんなの慰謝料を請求するレベルの不自由だわ。
なんてことでしょう!
貴方……分かっているの?
私は魅力的な娘で、私が歩くだけで殿方が振り返るし、「かわいい」と呟かれ、目が合うと相手はハイビスカスみたいに真っ赤になるのよ。
ええ、そう。私はいつでも浮気し放題!
……だけど、浮気しないで躾の良い犬のように毎日、毎日、貴方を想っているのは貴方を愛しているからだわ。
本の挿絵を見ては貴方のほうがずっとハンサムだと呟くし、美味しい飲み物、食べ物を口にする度に今度は貴方と一緒に食べたいと思ってる。
雲を見ては貴方を思い浮かべ。
床の模様を少し貴方に似ているわと観察し……。
フランスパンを貴方の腕に見立てて抱きついて自分を慰めているの。
……実に涙ぐましいでしょう?
おかしいわ。私はこんな子じゃなかったのに!
おかしいわ。
おかしいわ。
おかしいわ。だけど嫌じゃないなんて。本当におかしいわ。
あ、今カレンダーを見たわ。
貴方がいなくなって……なるほど五日たっていた。
やっぱり……馬鹿になっているじゃない!
だけどその間にも手紙は二通来たわ。
貴方はこれできっと献身的な恋人と自分が勲章を授与されるような気持ちなんでしょうね?
いいえ、残念でした。……貴方は落第!
十通はもう届いているべきよ。ええ、そう十通よ。
つまりは、桁違いに足りていないの!
あ、貴方少し面倒くさそうな顔したわね?
そういうの、遠くにいても分かるから気をつけるべきよ。
お分かり? 女は皆、魔女なんですからね。
呪われるわよ。……怖いでしょ?
だから、この大失態を無かったことにしたいなら、早く帰ってきて。
貴方のキスで魔女もただの娘に戻るから。
お願い、この呪いは貴方だけが解けるの。他の人では絶対に駄目なの。
キスキスキス。
お帰りをお待ちしています。
ジュリエッタより』




